井上孝司の Defense Column
 〜 平和運動のあり方を考え直そう

戦争しないで済むならそれに越したことはない、というのは人類普遍の定理だが、なかなか現実はそのようには進んでいない。むしろ、冷戦終結後の方が、事態が悪化している感がなくもないのが実情だ。

それに対し、「平和運動」というものがある。だいたい、国家レベルよりも市民レベルの運動で、

といったスローガンを掲げて、デモ行進したり、基地を取り囲んだりしている。ときには、航空機の騒音を苦痛として裁判を起こしたりもしている。これも、広義の「平和運動」といえるだろう。

まあ、何を主張するのも自由だし、いいたいことをいえるのが民主主義社会のいいところだから、主張している内容が当を得たものであるかどうかは別として、運動をすること自体に目くじらを立てるつもりはない。主張の内容を批判させていただくことはあるかもしれないが。

しかしながら、そうした運動のあり方に疑念を感じてしまうことがあるのも、残念ながら事実である。特に、強烈な影響を受けた事件を紹介しよう。


話は 7 年前にさかのぼる。

当時、私は NIFTY-Serve (現 @nifty) において、とある「軍事問題を扱うフォーラム」の運営スタッフに加わっていたのだが、そのフォーラムの中の某電子会議室において、以下のような趣旨の発言をしたことがあった。

厚木基地を抱える大和市が基地の騒音問題を訴えるポスターを小田急線の駅に掲示しているが、そもそも基地があるところに後から引っ越してきておいて基地の騒音にクレームをつけるのは、筋が通っていないのではないか。

ちなみにこのポスター、小さな子供が怖そうな表情をしている背後を F-14 が飛んでいるという、なかなか作為的な内容の図柄であった。

さて。この発言の直後、フォーラムの SYSOP (運営責任者) を務める T 氏が、「『後から来てガタガタ』と批判するのは、騒音訴訟の原告に対する誹謗中傷である」と反論してきた。

いくらなんでも誹謗中傷とはいいすぎであるとして私も反論したのだが、やり取りがしばらく続いた後、フォーラムの運営にまつわるやり取りのために設けられていたスタッフ専用の会議室において、以下のような趣旨の発言が T 氏よりあった。

井上発言のせいで、私 (T 氏) は騒音訴訟原告団関係者からメール攻撃などを受け続けていて、大変な目に遭っている。このままではたまらないので、これ以上の発言は止めてもらいたい。こちらで話をまとめさせてもらう。

そして、私が合意もしていないのに、私が元の発言を行った会議室上において「一連のやり取りは、井上氏に国側の立場にたって議論を演じてもらったものである」という、事実にまったく反する内容の発言をして、勝手に決着させてしまったのである。

ただし、ここに書いたことは、あくまでスタッフ会議室における T 氏の発言を元にしているので、それがそのまま真実であるという保証はない。私はあくまで、T 氏の発言をベースにして本稿を記している。なお、当時のやり取りは、すべて拙宅のファイル サーバの中にまだ保管されているので、いつでも参照することは可能である。

T 氏の発言内容が真実であると仮定した場合、ここで問題にしたいのは、「厚木基地騒音訴訟関係者」が、自分たちに批判的な発言の存在を許さず、発言が掲載された電子会議室の運営責任者を経由して、発言を封じ込める圧力をかけたという点である。

もっとも、T 氏自体が神奈川県の反基地団体関係者とつながりの深い人物であるようなので、実は T 氏の個人的思想信条に立脚した発言撤回圧力というのが真相で、「原告団からの圧力」なる話を捏造した可能性も否定できない点を付記しておく。

どちらが真相であるにせよ、自分たちと異なる主張の存在を許さないという運動の仕方が存在しているという点に変わりはない。これは、お世辞にも民主的なものの論じ方とはいえないのではないかと思う。


もともと、(すべてがそうだとはいわないが) 市民レベルの運動の中には、物事をすべからく「上対下」の図式で捉え、そこでは常に「下が正しい」という前提でモノを論じてしまっているケースが散見される。モノを論じるのは自由だが、最初から「下が正しい」という前提で、対立意見をすべからく頭ごなしに封じてしまうというのは、一種のファッショである。

現に、この騒動があった翌年、T 氏は、自分のことを批判する某メンバーの発言を「隔離病棟」と名づけた会議室に強制移動してしまった。そして、この件も一因として、私はフォーラム運営スタッフを辞任した。この件を見る限り、T 氏はもともとこのような性向を内包していたと見るのが妥当であろう。

しかも、T 氏は私が運営スタッフとして残っているうちはダンマリを決め込み、代わりに別の人物を引っ張ってきて私を攻撃させ、私がスタッフを降りてフォーラムを退会した後になってノコノコと登場し、私のことを批判していたのである。とてもじゃないが、正々堂々たる態度とはいいがたい。

さらに、自分の正規 ID で発言するだけでは飽き足らず、久保田某という女性名で登録してあった「裏 ID」を使い、自分で自分を援護する発言をしていたのだからあきれ返る。(この件についても、ちゃんと拙宅にログが残っている)

後で物言いがつくといけないので、「事実」と「伝聞」、さらに「推測」を分けて箇条書きしておこう。

事実 :

  • 私は、「基地があるところに後から引っ越してきて騒音に苦情をいうのはおかしい」という趣旨の発言をした
  • T 氏は、この発言とその後の一連のやり取りを、私の同意を得ずに「やらせ」として決着させた
  • T 氏はその後本件に関し、公開されている電子会議室においては私に対して正面切っての対決を避け、陰口と裏 ID によるニセ発言に終始した

伝聞 :

  • 件の発言を「やらせ」として決着させた理由は、T 氏に対する「厚木基地騒音訴訟原告関係者」からの圧力に起因する

推測 :

  • T 氏の発言を元にする限り、理由は上記のものだが、T 氏の個人的思想信条が直接の動機であり、表向きの理由として「圧力」を捏造した可能性も否定はできない

さて。このような人物が旗を振る「平和運動」を、誰が信頼するだろう?
正直な話、このような人物が論じる「平和」だの「自由」だの「民主主義」だのというのは、イカサマではないかと思ってしまうのである。本当に「平和」を念じるのであれば、まず、対立意見も存在することを認めた上で、同じテーブルについて話をしてみてもいいのではないか。

それができないような人には、悪いが、「平和」も「自由」も「民主主義」も論じる資格はないと思う。個人レベルで複数の意見の調和を取ることができない人が、国家間・人種間の異なる意見の調和を取ることができるわけがない。

さて。来週は、もともとの発端になった会議室での議論において T 氏が主張した内容について触れよう。こちらの方も、問題がおおありなのだ。