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井上孝司の Defense Column
〜 国土の冗長性を増すことを考えよう (1)今回は、有珠山噴火に関する話をテーマにして、Defense Column と Transportation Column に話題を振り分けてお送りしようと思う。というわけで、まずは国土と国民生活の防衛という観点から、今回の噴火にまつわる諸事情を見てみよう。
そもそも、安全保障というと、ついつい「外敵からの国土に対する侵略」というように考えがちだ。それも確かに安全保障の一ジャンルだが、その「外敵」は、なにもどこかの国の正規軍とは限らない。東南アジアで跳梁する「海賊」も、オウム真理教 (アレフと改称) のようなテロ団体も、そして今回の有珠山の噴火のような自然災害も、みんな広い意味での「外敵」である。
どの「外敵」にしても、国民の安全な生活、そして経済活動の維持に対する障害であることに変わりはない。特に自然災害の場合、抑止とか事前の予見が困難という特質があるため、とりわけ対策が難しいといえる。
となると、自然災害はやってくるものだという前提に立って、災害でどこかに被害が生じても、それが直ちに致命的な結果をもたらさないように、組織、人員、インフラなど、各方面の冗長化ということを考えなければならないと思う。
たとえば、本州と四国を結ぶ交通路としては、橋が三ルートと海路があり、これはかなり冗長化が進んでいるといえる。九州の場合も、道路と鉄道が各二ルート、さらに海路が豊富にある。こういうのは、いい方の例だ。
もっとも、本州と四国の連絡がすべて「橋」であり、トンネルがひとつもないのには首を傾げざるを得ないのだが… また、たとえば自衛隊の指揮系統なんていうのは、冗長化が求められるものの最右翼といえる。米空軍のウォーデン大佐が提唱した「五輪」モデルを引き合いに出すまでもなく、国家や軍事の指揮中枢というのは、それをやられると全体が麻痺してしまう、非常に重要なものだ。現に、湾岸戦争のときのイラクは開戦劈頭に指揮系統を潰されて、伝令が自分でバグダッドからクウェートまで移動して、48 時間もかけて命令を伝えに行く羽目になったという。
実際に自衛隊がどういう対策をとっているのかは知らないが、ちゃんと冗長化を考えていることを願いたい。
また、人員や組織についても同じことがいえる。もし組織を構成する人員に災害その他で穴が開いた場合に、すぐにそれを埋めることができなければ問題だ。こういうのは冗長化というのは難しいと思うが、穴が開いてもすぐに埋められるバックアップ体制というのが、いざというときにモノをいうと思う。
…と書いている端から小渕総理の入院に関するニュースが飛び込んできた。だが、なんと入院してから 13 時間の間、空白状態ができてしまったのだそうだ。だいたい、総理が出席するはずだった結婚式で「有珠山噴火の関係で…」といっていたのに、実は入院していたとのこと。
これこそ悪い方の見本ではなかろうか。もし、その「空白の 13 時間」の間に何か非常事態が発生していたら、どうするつもりだったのだろう。
冗長化とかバックアップ体制というと、何も起こらなければ「無駄」に見えてしまう傾向があるのは否めない。事実、企業の安全部門とか危機管理部門というのも、何も起こらなければ「そんなに人員や予算は要らないだろう」といわれ、もし何か起これば「いったい何をやっていたのだ」と叱られる、因果な立場なのだそうだ。
しかし、そういう体制がちゃんとできているかどうかが、ホンモノの非常時の際には試される。そして、国家の危機管理体制がちゃんとしていなければ、それはすなわち国民全員の安全にかかわってくるのだから、平素から体制を整えておくのが、為政者の責任というものではなかろうか。税金をばら撒いて公共事業をやるだけが能ではない。
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