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井上孝司の Defense Column
〜古い皮袋は、所詮は古い皮袋最近、Men's Walker 誌で、「北朝鮮の MIG-21 は MIG-29 並みの性能にアップグレードされているから、防衛庁はあまり威勢のいいことは言うべきではない」という趣旨の記事が掲載されていた。しかし、この記事、非常に誤解を招く記事であると思う。まず、「MIG-29 並みの性能」の根拠だ。確かに、あちこちで MIG-21 用のアビオニクス (航空電子機器) のアップグレード改修は盛んに行われている。しかし、それでパワーアップされるのは、あくまでレーダーや火器管制システム、電子戦装置などに限定される。もちろん、これによって AA-11 アーチャーのような最新の空対空ミサイルを使えるようになれば脅威の度合いは増すが、飛行機としての飛行性能の部分は、よくて変化なし、ことによっては重量増加で飛行特性低下という可能性もある。
そもそも、アビオニクス改修機なら日本にもある。F-4EJ 改がそれで、古くなった F-4EJ のレーダーを F-16A/B が使用しているのと同じ AN/APG-66 に積み替え、さらに電子戦装備などを充実させた機体だ。だからといって、誰も F-4EJ 改のことを「F-16 並みの性能」などといったりはしない。エンジンにも、機体の空力性能にも手は入れられていないからだ。それと同じことである。
さらにいえば、この記事は現代の航空戦のあり方を完全に無視している。第一次世界大戦の頃のように、一対一で渡り合う格闘戦スタイルで外部からの介入なし、というのならまだしも、現在の空中戦のやり方は、早期警戒機 (AEW) や空中警戒管制機 (AWACS) からの支援と誘導を得るのが普通だ。北朝鮮には、そのいずれもない。だから、実戦ではかなりの不利を背負うことになるのだが、該当記事ではこのことにまったく触れていない。
もっとも、これは兵器マニアも陥りがちな落とし穴で、システム全体ではなく個々の機体の能力だけを見てしまうというのは、実はよくある話ではある。さらにいえば、北朝鮮は燃料事情が悪く、パイロットの飛行時間が極度に短いのは周知の事実だ。いかに最新兵器を揃えたとしても、それを使いこなせるように訓練できなければ最新兵器などないのと同じだというのは、湾岸戦争のイラク軍が証明している。つまり、兵器を揃えても、最終的にそれで戦うのは人間だが、その要素がこの記事では無視されている。
もちろん、不必要に相手を侮るべきではないにしても、過大評価もまた、考え物だ。センセーショナル記事で雑誌を売る役には立つかもしれないが。
もっとも、航空自衛隊の F-15J は、いまのところ撃ち放し式の空対空ミサイル (AAM) を持っていないというハンデがある。現用のスパロー AAM は目標に当たるまでレーダー照射を続けなければならない。これは、撃ち放し式の AIM-120 AMRAAM を持つ米軍のイーグルと比べると不利だ。国産の AAM-4 が開発中とはいうものの、実用化はまだ先の話。AAM-4 に加え、有事の際には AMRAAM を米軍から調達して使えるように、手持ちのイーグルを改装するというわけにはいかないのだろうか。そうすれば、米軍との相互運用性の観点からも好ましいと思うのだが。
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