井上孝司の Defense Column
 〜 在日米軍は誰のため? (前編)

1991 年のソ聯の崩壊以来、社民党や共産党のように「冷戦が終結したから在日米軍は必要ない」と主張する向きが見受けられるが、とんでもない話である。そうした主張をする人達は、単に日米安保という軸からしか在日米軍の存在を見ていないといわざるを得ない。

確かに、日米安保条約があるから、日本有事の際には在日米軍が出動するにしても、それだけのために在日米軍が存在しているわけではない。在日米軍は、西はペルシャ湾から太平洋全域までの広い範囲を受け持つ、米太平洋軍 (USPACOM : US Pacific Command) の下部組織として存在している。つまり、アメリカのアジア太平洋地域におけるプレゼンスの輪の一つとして、在日米軍は存在する。

だから、他のアジア諸国の中にシンガポールのような米軍のプレゼンスを求めている国がある以上、日本だけの思惑で在日米軍の存在を軽々しく云々することは、他国のことを考えていない、きわめて自己中心的な考えというものであろう。
(もっとも、アジア地域からアメリカのプレゼンスを除去する目的で在日米軍の存在に反対しているのなら、それはそれで納得のいく話ではあるが、賛成はいたしかねる)


そもそも、社民党にしろ共産党にしろ、日本の安全ということをどう考えているのだろうかと思わされることがしばしばある。他の国がどうなっても、日本さえ戦争に巻き込まれなければいいのだろうか? とにかく戦争にさえならなければいいのだろうか?
別に、日本本土に誰かが侵略を仕掛けなくても、間接的に日本の生存が脅かされる可能性はある。たとえば、中国が台湾を相手に一戦交えれば (中国は台湾の武力 "解放" というオプションを捨てていない点に留意すべきである)、これはすなわち日本のシーレーンの安全が脅かされることであり、結果として海外との交易に依存する日本の安全が脅かされることになる。日本を干上がらせるのに侵攻作戦はいらない。シーレーンさえ封鎖してしまえばいいのだから。

朝鮮半島有事についても同じだ。日本の近隣で戦火が起これば、日本がまったく影響をこうむらないわけがなく、そこで「平和主義」を盾に傍観を決め込めば、日本は世界的にも孤立するであろうし、韓国の対日感情が大きく悪化するのは間違いない。(もっとも、金正日元帥どのは狂喜するであろう :-)

だから、日本の安全が脅かされる場合に限れば、米軍の行動を日本が支援するというのは、理に適っている。もちろん、あらゆる米軍の行動、たとえば中東方面での作戦まで無条件で支援するべきだとは思わないが、それにしても、日本経済の維持のためには、中東地域だって重要だ。

それに、在日米軍がいなくなり、日本が自主的に強力な防衛力を整備しようとする方が、近隣諸国からすれば、よほど由々しき事態というものだ。それは結果的に大きな政治的損失を生むだろうから、それよりも米軍の世界戦略に協力することで結果的に日本固有の軍事的能力をある程度抑える方が、全体的に見て有利ではないだろうか。

もっとも、こういうことを書くと「非武装中立」を掲げて反論されそうだが、それについては次週に論じることとしたい。