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井上孝司の Defense Column
〜 兵器の「評価」を考える (PART II)先週のコラムで、「個人的にまあ評価していいかと思っているのは、酸素魚雷だけだ。能書きの割に不満足な結果しか出ていないにしても」ということを書いた。
そう書いた手前、他国の何が評価できるものなのかを書かなければ、片手落ちというものであろう。そこで、箇条書きで手当たり次第にリストアップしてみよう。
- 戦艦ビスマルク級、巡洋戦艦シャルンホルスト級 (ドイツ)
- それぞれ、主砲口径は 38cm と 28cm だから、攻撃力としてはそれほど傑出していない。しかし、これらの艦の防御力のレベルの高さは侮れないものがある。ひょっとすると、大和・武蔵を凌いでいたのではないかと思うぐらいだ。
そのポイントは、装甲板の厚さではなく、装甲防禦範囲の長さにあったのではないかと思う。大和や武蔵は、中央部こそ分厚い装甲で固めていたが、その前後の防禦が足りなかったために、結局は浸水を防ぎきれなかった。その点、広い範囲にバランスのよい防禦を施したドイツ戦艦の方が、総合的な防御力では上を行っていたと思う。なにしろ、5 トン爆弾を使わないと沈まなかったのだ。
- マーリン発動機 (イギリス)
- これは異論がないだろう。1,000 馬力そこそこの初期型を着実に改良し、二段二速過給機などの追加搭載で要求を満たせるだけのパワーアップを果たしたのは、立派なものだ。しかも、複雑精密な構造でありながら量産しつつ稼働率を高く保ったのだから、敬服するほかない。日本では、ちゃんと動く複雑精密な大馬力エンジンは、試作するのが限界だったのだから。
- レーダー、その他の電子戦装備 (アメリカ・イギリス)
- 一見ドイツの十八番かと思いきや、ドイツがとうとう追いつけなかった分野がこれ。なにしろ、ヨーロッパでは、第二次世界大戦中にすでに本格的な電子戦をやっていたのだからおそれいる。当時の日本の防空戦と比べると、二世代くらいは先を行っていたのではなかろうか。レーダーの使用や妨害だけでなく、通信の妨害から航法援助装置まで、本当に「何でもアリ」だったのだから。
- T-34 戦車 (ソ聯)
- なんだかんだといっても、T-34 が大戦中の最優秀戦車であったのは間違いない。火力と防禦力に優れ、しかも当時から大出力のディーゼル・エンジンを実用化していたのは賞賛に値する。他国では、日本以外はどこもガソリン・エンジンだったのだ。しかも、それほど重くない車体や被弾径始の考え方を取り入れた砲搭などを見るにつけ、当時のソ聯は戦車というものを分かっていたと思う。
おまけに、そんな戦車を大量に作ったのだから、これもまた立派だ。今でもマケドニアのように T-34 を使っている国があるが、それも納得できてしまう。
- VT 信管 (アメリカ)
- いわゆる近接信管。レーダーなら、艦載型でも航空機搭載型でもスペースにそれなりの余裕があるが、小さな砲弾の中に、それも発射時には 2 万 G がかかる砲弾の中に真空管を使った電子回路を詰め込んで近接信管をものにしたというのは、大したものだ。理に適った発想もさることながら、それを実用化して量産した工業技術は、まさに他国の追随できないものだったといえるだろう。
- ブローニング M2 12.7mm 機関銃 (アメリカ)
- これも凄い。なにしろ、いまだに現役なのだ。12.7mm 機銃は各国で使われていたものの、おそらく破壊力はこれが一番だろう。威力があったからこそ、アメリカの主な戦闘機はみんなこの機銃を使っていたのである。弾道の直進性がよいことと、弾がある程度重かったのが勝因か。(同じ口径でも、日本のやつは弾が軽かったので威力が減ってしまった)
日本人たるもの、ついナショナリスティックになって身びいきしてしまう気持ちも分からぬではないが、「井の中の蛙」になっては大局を見誤る。一度、他国のことにも目を向けてみた方がいいのでは? と、やたら「日本びいき」な論調を見るにつけ思うのである。
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