井上孝司の Defense Column
 〜空自は給油機よりシェルターを優先せよ

航空自衛隊が、空中給油機の取得に向けて動いている。

もちろん、社民党あたりは例によって「専守防衛に抵触する」などと騒いでいるが、それ以前に、給油機より優先度の高い案件があるのではないかと思う。

それが、戦闘機部隊の全面的な掩体 (シェルター) 運用化である。


現在、千歳や小松の一部を例外として、空自の戦闘機部隊のほとんどは、列線運用、つまり、むき出しのフライトラインに機体を並べている。しかし、これでは奇襲を受けて貴重な機体を破壊されてしまう可能性がある。
滑走路は、壊されても修理すれば元に戻る。しかし、戦闘機を一度破壊されたら、なかなか代わりは手に入らないだろう。

その点、第三次中東戦争で開戦劈頭に多くの戦闘機を地上で破壊されたアラブ諸国や、その相手のイスラエルあたりは徹底している。あちらでは、列線運用などもってのほかで、戦闘機はシェルターや地下の格納庫に収められているのが普通だ。ヨーロッパの NATO 諸国も、同じである。

ここでいうシェルターとは、「核シェルター」のようなものとは異なる。鉄筋コンクリートをアーチ型に構築した建物で、中に戦闘機が 1 機か 2 機入る。高級なものになると、前後に気密式の扉がついていたり、サウジアラビアのもののように、気密扉 + 半地下構造になっていたりする。

あいにくと、イラク空軍の各基地のシェルターは、湾岸戦争のときに米軍の BLU-109 徹甲爆弾で木っ端微塵に破壊されてしまったから、イスラエル式に地下格納庫にする方がベターだが、現行のシェルターでも、ないよりはマシである。現に、三沢の米軍機は全機がシェルター運用だ。
(もっとも、あのシェルターは、日本の「思いやり予算」で造られたものだという報道もある)

航空機による空襲だったら、早期警戒網にひっかかるから奇襲を受けることはないという見方もある。しかし、弾道ミサイル攻撃や、北朝鮮が大好きな特殊部隊のテロ攻撃に対しても、同じことがいえるものだろうか? それに、シェルターに機体を入れておいた方が、特に千歳や小松あたりでは、機体が傷まないように思えるのだが。

それとも、空襲を受けるときは全戦闘機を即座にエアボーンさせるというつもりなのだろうか? 有事の際に、そう簡単に問屋がおろすものだろうか?


本音をいえば、スウェーデン並みに道路を使った分散運用をするぐらいの気構えが欲しいところだが、予算面でも運用ノウハウの面でも、今からそれをやるのはちょっと難しいだろう。
それならそれで、せめて、手持ちの戦闘機をしっかり護るためのシェルター運用化にぐらい、もう少し予算を割いてもいいと思うのだ。いくら空中給油機を導入して戦闘機の滞空時間を延伸できても、給油する相手の戦闘機がいなくなってしまってはお話にならない。