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井上孝司の Defense Column
〜 2000 年問題の本質を忘れるな昨年の今ごろから、「2000 年問題」が世間をにぎわしている。書店に行けば、「2000 年問題関連書籍コーナー」が特設され、それなりに売れているらしい。で、そういった書籍の見出しを見たり、TV 番組の特集を見たりすると、まるで「2000 年を迎えた途端に、世界中のコンピュータが停止、あるいは暴走して、手がつけられない状態になってハルマゲドンがやってくる」とでもいいたげである。中には、「ロシアや北朝鮮のミサイルが暴発するのでは」という声もあるぐらいだ。
もちろん、「いざ 2000 年になってみないと、何が起こるかわからない」というのがこの問題のタチの悪いところではあるのだが、ここでいま一度、「2000 年問題」とはどういう問題のことなのかを冷静に確認しておきたい。
そもそも、どうしてこういう問題が発生することになったのかを復習しよう。
コンピュータの内部で日付のデータを扱う際に、使うメモリを節約したい等の事情から、年号を下 2 桁で記録するプログラムが存在する。その場合、1999 年から 2000 年に移り変わる際に、年号の下 2 桁が "99" から "00" に変化する。ここで、"00" を 2000 年のことだと認識していれば問題はない。一件落着である。
ところが、もし "00" を勘違いして "1900" 年と思い込んでしまうと、誤作動が発生する可能性が出てくる、というのが、そもそもの「2000 年問題」の本質である。
なお、「2000 年問題」は 2000 年 1 月 1 日を迎えた途端に発生すると思っている人が多いが、2000 年になる前から 2000 年以降のデータを扱うケースは多々あるのだから、2000 年 1 月 1 日を待たずとも、何か問題があれば、それが露見する公算は高い。このような事情から、日付にまったく依存していないコンピュータ システムについては、少なくともそれ単体では 2000 年問題は無縁である。また、年号を 4 桁で認識しているオペレーティング システム、あるいはソフトウェアについても、こうした問題は起こらない可能性が高い。
ただし、たとえばパソコンで、オペレーティング システムが日付を正しく認識していても、そこから受け取った日付データをどう扱うかというのは個々のアプリケーション ソフトによって異なるから、オペレーティング システムが "Y2K Ready" だからといって、その上で動作するアプリケーションも自動的に "Y2K Ready" にはならないという点には留意する必要がある。 いつだったか、フジテレビの「とくダネ!」で、司会者に「○○さんも Mac にしましょうよ、2000 年問題対応済みですよ」とわけのわからない宣伝をしていた人がいたが、こういう理由から、これは何の根拠もないプロパガンダである。2000 年問題に便乗した Mac 布教活動と見るべきだろう (笑)
というわけで、問題になるのは、日付を下 2 桁で判断していて、なおかつ、2000 年になったときにそれを 1900 年と勘違いするようなロジックで組まれたソフトウェア、あるいは組み込み機器ということになる。
ただし、もし 1900 年だと勘違いしたとしても、それだけで大災害が襲ってくると思うのは早計である。たとえば、本稿の本題である防衛問題を引き合いに出せば、北朝鮮のテポドン・ミサイルの管制システムが「1900 年 1 月 1 日にミサイル発射」という指令を受けていれば、なるほど、年が変わった途端にミサイルが暴発するだろう。しかし、まともな脳味噌の持ち主なら、過ぎ去った日付にミサイルを自動発射するなどという指令はしないものである。
「化学工場の爆発」も同じことで、管制用のコンピュータが誤作動ついでに機器の操作指令に目茶目茶なことをしない限り、そういうことは起こらないだろう。
念を押しておくが、筆者は「2000 年問題がガセだ」といいきるつもりはない。ただ、2000 年問題に便乗して危機感を煽るのを戒めたいだけである。
なるほど、総理大臣は食糧備蓄を呼びかけたが、これはあくまで「念のため」であって、「必ずおかしなことが起こります」とは一言もいっていない (もっとも、起こるとしてもいわない可能性もあるが :-)筆者としては、コンピュータの誤作動に起因する「2000 年問題」よりも、むしろそれに便乗して、世の中で何かトラブルが発生した場合に、何でも「2000 年問題」にこじつけて終末論を煽る、「便乗 2000 年問題」の方が、よほど心配だ。あるいは、ひょっとすると、「2000 年問題」便乗テロ事件だって、起こらないとはいいきれない。
なにしろ、世の終末論者はすでに、「ノストラダムス」や麻原彰晃の「予言」がハズレまくったオウム真理教も含めて、いくつもミソをつけている。今度は「2000 年問題」をダシにしてリベンジを目論んでいる人がいないとも限らない。いや、きっといるだろう。軍事評論家の野木恵一氏が、「世界の艦船」誌上で
「2000 年の 1 月 2 日になれば数多い黙示録的な Y2K 本は、1999 年 8 月以降のノストラダムス本と同じ価値しかなくなってしまうのではないか」
と書かれていた 注 1 が、筆者もまったく同感である。
(注 1 : 「世界の艦船」1999 年 12 月号 (第 561 集) P146、海の「2000 年」問題を考える)
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