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井上孝司の Defense Column
〜 再度、空中給油機後回し論先日、来年度の防衛費の装備調達から、空中給油機が除外され、先送りされることになったという報道がなされた。もともと、空中給油機の導入を希望する声はあるようだが、個人的見解としては、不要とまではいわないまでも、優先度は低いのではないかと考える。
そもそも、どうして空中給油というものが生まれたのかを考えてみよう。空中給油を始めて本格的に導入したのは、第二次世界大戦後のアメリカ空軍である。
導入の動機となったのは、当時米空軍が導入を進めていたジェット戦略爆撃機、B-47 ストラトジェットが、当時のジェット機に共通する「燃費の悪さ」という問題から、ソ聯の中枢部に突入して核攻撃をかけるには、航続能力が不足していたことにある。
そのため、米空軍では当初は B-29 や B-50 といったレシプロ爆撃機の改造、後には KC-135 ストラトタンカー (ボーイング 707 旅客機の原型である) を大量導入して、空中給油によって爆撃機の行動能力を確保する体制を整えた。つまり、空中給油機はもともと、核爆撃機のための戦力だったのである。空中給油機のほとんどが、長いこと戦略航空軍団 (SAC) に所属していたことが、このことを裏付けている。
後には、戦術機も空中給油を多用するようになったが、それは、爆弾の搭載量を優先したり気温が高いといった事情から離陸時に搭載する燃料を減らし、離陸後に空中給油することで航続距離を確保するとか、米本土の基地から海外に迅速に展開するため、といった事情がある。
また、予算や政治的な理由から海外の基地を確保しにくくなっている米空軍にとっては、米本土から直接、海外の目的地に部隊を展開させたり攻撃をかけたりできる力になる空中給油機の存在が、非常に重要なものになっている。
と、このような「攻撃的」任務に空中給油機が威力を発揮するのは自明の理だが、日本の場合、核爆撃機もなければ、戦闘機が地球の裏側に無着陸展開するような需要もない。
日本のような「専守防衛」を掲げる国家の場合、戦場は、常に自国の近隣ということになる。PKO に出動する機会がある輸送機部隊は別だが、戦闘機の場合、せいぜい派米訓練があるくらいだろう。
「専守防衛」のような場合に空中給油機を導入するメリットとしていわれるのが、戦闘機の滞空時間の延伸だが、平時ならともかく、戦時に滞空時間ばかり延ばしても仕方がない。燃料は空中給油で補えるが、弾薬は地上に降りないと補給できないし、だいたい、そんなに長く飛ばし続けたら、搭乗員が参ってしまう。
それに、「専守防衛」で戦場が自国の近隣になる可能性が高いということは、安全に空中給油ができる空域を確保するのが難しいということだ。米空軍の例を見ても、空中給油機は比較的安全な空域にとどまることが多いようだが、日本の周辺でドンパチやっているときに、安全に給油できる空域を確保するのは骨だろう。だから、戦場で傷ついた飛行機に給油しながら連れ帰ることができる、なんていうのは、実戦では絵空事だろう。
それに、戦闘機や給油機が帰る巣、つまり地上の基地の安全確保の方が重要だ。いくら滞空時間を延伸できたとしても、給油機もいつかは地上に降りなければならない。そのとき、基地の滑走路が穴だらけになっていて降りられませんでした、では洒落にならない。
むしろ、空中給油機を増やすぐらいなら、各地の民間空港に迅速に地上要員と整備機材、燃料弾薬を展開できるように「モバイル化」した支援設備を用意するという方が、実情にかなっているように思う。
幸い、「一県一空港」という愚策 (良策?) のおかげで、戦闘機が降りられる程度のローカル空港はたくさんある。スウェーデンなら高速道路を使うところだが、日本の高速道路はグネグネしていて滑走路になれないから、代わりに地方のローカル空港を使うというわけだ。各航空団ごとに、あらかじめ、展開先の空港のリストを作り、機材と人員の輸送計画を作っておけばよい。
これで、有事に戦闘機が利用できる基地の数は、平時の 5 倍以上に膨れ上がる。まさか、その全部に攻撃をかけるほどヒマな敵国もないだろう。
もっとも、こういうことをいい出すと、それだけで「革新系」の政治家の皆さんは大騒ぎするだろうが、制空権が確保できなければ自分たちの家と財産が危ないのだ。文句をいうなら、そこのところを考え直してからにしていただきたい。
まさかとは思うが、空中給油機の導入希望も「米空軍並みの一流空軍になりたい願望」の現れなのでないか、と勘繰ってしまうのである。そうでないことを切に願いたい。
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