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井上孝司の Transportation Column
〜高速フェリー ネットワークのすすめ現在、日本の物流の九割はトラック輸送によっているという。確かに、トラックは発地から着地まで積み替えなしで運べるし、高速道路が整備されたおかげで長距離でもかなり迅速に移動でき、便利であることには違いない。しかし、地球環境保護や交通渋滞緩和の観点から見て、これが正しい姿だろうか?
もちろん、端末輸送の手段としてトラックが必須であることに間違いはないが、処点間の長距離輸送には、もっと効率のよい他の手段を積極的に使うべきではないかと思う。具体的には、2 万トン級・航行速度 30kt 超の大型高速フェリーだ。日本の外周を取り巻くように高速フェリーのネットワークを構築し、処点間輸送を担当させる。
フェリーならトラックが自走して乗り降りできるので効率がよいし、無人車航送にすれば人手もかからない。ただ、海運では内陸部への輸送ができないので、鉄道との連携が必要だろう。
そして、最終的にはフェリーや鉄道から下ろしたトラックが目的地まで自走する。こうすれば、トラック輸送の走行距離を抑えられ、よりエネルギー効率の良い輸送体系ができるし、道路の渋滞も緩和され、赤字覚悟で高速道路を増設する必要もなくなるはずだ。もちろん、これには課題も多い。
まず、現行の多くのフェリーはスピードが遅すぎる。航行速度が 23kt (43km/h) 程度では、高速道路を走るほうが速いに決まっている。しかし、新日本海フェリーの <すずらん> <すいせん> 姉妹のように、航行速度が 30kt (55km/h) に迫る大型高速フェリーもあるので、フェリーの高速化が技術的に不可能というわけではない。フネの所要馬力が速度の 3 乗に比例して増大するとはいっても、トラックがバラバラに走るのと比べれば、まだエネルギー効率はいいはずだ。
<すずらん> <すいせん> は、敦賀-小樽間を 21 時間で結び、2 隻でデイリー運行を実現している。つまり、この程度の速度性能があれば、北海道から九州まで 2 日で移動が可能で、これならトラックが途中で休み休み走るのと、大して違いはないだろう。海運は天候に左右されるのが難点だが、これは程度の差はあれ道路でも同じことだし、海運の方が事故率がはるかに低い。
鉄道はというと、日本の鉄道は車輛限界が小さく、低床貨車でもトラックを載せると限界をハミ出すおそれがある。そのため、貨車にそのまま載せられるトラックは車種が限られるのが実情だ。が、まったく不可能というわけではない。むしろ、鉄道の規格に合わせたトラックを作ることを積極的に考えたいところだ。
また、鉄道と海運、とりわけフェリーとは連携があまりできていないので、この辺は改善が望まれる。
こういうことをいうと、「トラック輸送を減らせば自動車業界が不況になる」とか「道路建設を減らすと建設業界が不況になる」といった反論が出てきそうだが、それは自分のことしか考えていない意見というものだ。浮いた人手や資材、おカネを物流ネットワーク作りのためのインフラ整備に投入することで、マクロ的にはある程度の穴埋めはできると思う。自動車業界へのインパクトがある点は否定できないが。
日本の現状では、鉄道会社や海運会社よりも、道路を造る建設業界や、自動車メーカーをはじめとするトラック業界の方が発言力が大きいのが実情だから、なかなかトラック輸送を他の手段に振り替えるのは難しいとは思うが、こういうときに大局を見据えて蛮勇を発揮してこそ、政治家の本分というものではないだろうか。運輸省の官僚ならびに政治家諸氏の奮起を期待したい。
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