井上孝司の Transportation Column
 〜自動車税の "グリーン化" を考える

自動車税の "グリーン化" ということで、現在は排気量別に税額が決まっている自動車税を、燃費を勘案したものに変更するという案が出ているというのは、報道で御存知の方も多いだろう。なんでも、CO2 排出削減策の一環だそうだ。

自動車業界では、稼ぎ頭の高級車の売れ行きに響くとして反対意見が出ているそうだが、そもそも CO2 削減という観点から見ても、効果は疑わしいのではないかと思う。

まず、客観的な燃費の基準がない以上、カタログデータの 10・15 モードのデータを使わざるを得ないが、10・15 モードがないディーゼル車はどうするのだろうか?
それに、ドライバーの方ならお分かりかとは思うが、クルマの燃費というのは走行条件や乗り方によって大きく変動するから、カタログ上の燃費がいいクルマでも、荒く走れば実走行燃費はガタ落ちする。これでは当初の目的は達成できない。

実際、筆者のアルテッツァには瞬間燃費計というものが付いているのだが、これをチラチラ見ていると、気合を入れて走っているときと流しているときとでは、同じスピードでも燃料消費量が倍以上違う。それでもトータルで 11km/l ぐらいは維持しているから、筆者の場合、比較的燃費のいい運転をしているといえるだろう。

さらにいえば、たとえば 10km/l の燃費のクルマが 2,000km 走っても、5km/l の燃費のクルマが 1,000km 走っても、消費するガソリンの量は同じ。つまり、トータルで見た場合の CO2 削減効果という点では、単に燃費の悪いクルマを減らせば解決するというものでもないだろう。象徴的な意味合いはあるかもしれないが。

それよりもむしろ、先週のコラムにも書いたようにトラックに依存し過ぎの貨物輸送の構造改革をするとか、休みの一極集中 (JR グループにとっても不都合な制度だ) を是正してピーク需要の分散化を図り、ガソリンの無駄遣いの一因である渋滞を減らす工夫をするとか、そういう対策を講じた方が、よほど CO2 削減の役に立つのではないか。

また、ヨーロッパでやっているような、都市部におけるマイカーの締め出しも考えてみてよいと思う。実際、浜松市ではこの構想の実験が始められている。

どうしても燃費ベースで網をかけたいというのなら、自動車税を廃止、あるいは大幅減額し、その分をガソリンや軽油の価格に転嫁するという方法も考えられる。これなら、燃費が悪ければ燃料費がかさむということで、多少の抑止効果は上がるかもしれない。
もっとも、税金によって関連省庁が違うから、こんなことをいいだすと袋叩きに遭いそうではあるが。(そういう状況に問題があるともいう)


アメリカ陸軍が軍用トラックにハイブリッド車を導入する研究をしているという御時世だ。ポーズではなく本気で環境対策を考えるというのなら、形式的な対症療法にとどまらず、抜本的な改革をやりたいものだ。