井上孝司の Transportation Column
 〜 横田の軍民共用化に反対する

今週は、物議をかもしている石原都知事の公約「横田基地の軍民共用化」について。

結論からいえば、この案には反対だ。といっても、国政レベルがどうとか、騒音問題がどうとかという理由からではない。

私が反対する理由は、航空管制上の混乱を惹起する可能性があるからだ。


現在、横田基地がある東京西部の空域は、民間機のジェット・ルートに組み入れられていないはずだ。現に、東京から西へ向かう民間機は、木更津から大島へ抜けて、浜松や串本を通っている。東京西部の上空は、民間旅客機の空白地帯なのだ。
(調布から飛び立つ、有視界の小型機は別だが)

それもそのはず、この一帯は、横田以外にも米海軍の厚木基地がある、米軍機の巣窟だ。もし横田に民間機を下ろそうとすれば、この錯綜する米軍機の中に民間機を入れることになる。新たにジェット・ルートを開設する手間もあるし、管制をどうするのかという問題も出てくる。航法援助施設だって必要だ。

少なくとも、米軍が今そこにいる以上、米軍を管制から締め出すことはできない。かといって、米軍と民間が必要に応じて電話で連絡しながら管制するなんていうマネをすれば、きっと管制の混乱がもとで事故が発生する。そんな事態は看過できない。

だいたい、平時のことだけ考えればヒマそうに見える横田だが、アジア地域有事の際には太平洋西部の「ハブ基地」になる場所だから、それを考えると 定常的に 余裕があるとは思えない。しかも、そうなれば厚木だって忙しくなるだろうから、いよいよ東京西部や神奈川の上空は混み合ってくるはずだ。
もし有事の際に米軍のトラフィックが急増したら、民間機は欠航にしろとでもいうのだろうか。それとも、羽田にダイバートさせる? しかし、羽田が混んでいるから他の空港を、というのがそもそもの発端なのだ。


軍隊の設備というのは有事のレベルを想定して整備するものだから、平時にはヒマそうに見えるのも仕方ない。しかし、その状態だけを見て、しかも管制とかトラフィックの流し方といった問題を無視して、単に場所の問題だけで民間機が入れられそうだと考えるのは、安直に過ぎると思う。

ちなみに、社民党や共産党的発想なら「米軍を追い出せばいい」ということになるのだろうが、それが正論に見えて実は暴論なのは、過去のコラムで述べた通りである。
その後の追加情報

先日、とある現役自衛官の方からご指摘いただいたところでは、「東京の西半分から富士山の手前までの幅で、江ノ島付近から新潟の少し南あたりまでの、高度 18,000ft 以下が横田基地内にある横田進入管制区のエリアとなっていて、ここに進入する場合は横田にコンタクトを取れば進入可能、また、高度が 18,000ft を超えている場合は所沢の東京 ACC の管理下で飛行可能」とのことだった。とはいうものの、民間機と米軍機のトラフィックが交錯するという問題点は、やはりあるのではないかと思う。