Opinion : 祝・小田急高架複々線完成 (2004/11/29)
 

さる 11/21 に、小田急小田原線の梅ヶ丘-経堂間 (下り線) が緩急分離された。すでに立体化と上り線の切り替えについては作業が済んでいるので、これにて高架複々線が完成、ということになる。
今は違うが、大学にあがってから 11 年近く、小田急の沿線住民として通勤・通学の足に利用していた。それに、沿線某所に親戚があった関係で、小田急は幼少のころから馴染みが深い。その小田急が立派な高架複々線を完成させたということで、感無量。

もっとも、まだ新宿-代々木上原間と東北沢-梅ヶ丘間が複線のままなので、運行本数を増やすのは難しい。とはいえ、各停が待避線に逃げ込まないと急行が先行できなかった従来の状況と比べれば、どこでも追越ができる複々線は、ダイヤ編成の自由度という点で利点が大きいはず。次の改正で、「湘南新宿ライン」への対抗策として、下北沢から新百合ヶ丘までノンストップの「快速急行」という種別ができるが、これも複々線化で線路容量に余裕ができたからこそ実現できたのだと思われる。今までなら、停車駅を減らしても先行の電車につかえてしまうのがオチだっただろう。

乗客の立場からすると複々線の利益が大きいわけだが、沿線住民としては、高架化によって踏切が消えた効果が大きいハズだ。以前は、踏切で延々と待たされるのが常で、そのために狛江市では、小田急線の北側と南側に別々に消防署を置いていた。そうしないと、消防車が出動しても、踏切で待たされて動けなくなるからだ。

ずいぶんと前の話だが、下北沢 2 号踏切で、なかなか開かない踏切に待ちくたびれたのか、軽トラの運転手がドアを開け放ち、運転席で寝てしまっていたのを見たことがある。きっと、踏切がいつになっても開かないので、フテ寝してしまったのだと思われる。わざわざドアを開け放って寝ていたから、多分、暑い時期だったのだろう。同情する。

千歳船橋-経堂間にて

それにしても、時間がかかる事業だった。狛江市内で工事が始まったのは、自分が大学を出て会社勤めを始めたのと同時期だったから、なんと 15 年以上かかっている。予定が予定で終わってしまうのは鉄道建設の常とはいえ、まことに辛抱を要求される話だった。
そして、都心方面の会社に勤めていたときには、団子運転でノロノロ走る急行の車内でつぶされそうになりながら、沿線の「複々線化事業用地」などと書かれた看板を、「いったい、いつになったら完成するのやら」と恨めしげに見ていた記憶がある。

それでも、狛江市内の高架複々線が完成してからは、いよいよ絵空事ではなくなってきたなと思ったが、あいにくとその時点ですでに、自分は転居して小田急沿線から離れていた。だから、加算運賃を払っただけで、ほとんど恩恵に浴していない。(だからといって、「カネ返せ」なんていうつもりはないけれど)

そうなってくると、今度は「地下化」を主張する立看板や幟が、従来にも増して忌々しく見えてくるようになったのだが、これについては過去にも書いたことがあるので、いまさら細かく書かない。そもそも、説明会などの席で、最前列でデカイ声を出して威圧する「地下派」の映像を見ると、それだけで印象が非常に悪い。

「地下化の方が安い」という主張の根拠をよくよく見てみると、どうやら地下化完成後の線路用地を売却して、その利益を充てるという算段だったらしい。しかし、住宅地にするわけではなくて「緑のコリドー」とかいう気色悪い案を推していただけに、買わせるとしたら世田谷区だろう。そうなると、地下化に要する費用の一部を世田谷区民の税金で補填しろ、と主張しているも同然なわけで、さすがにそれはインチキだろうといいたい。そういう大事な案件は、やるなら住民投票で民意を問うべきだ。

笑ってしまうのは、既存の高架橋を小田急から買い取って、(それは壊さずに) 二層式の「緑のコリドー」を作れという主張。想像図を見ただけでも気色悪いが、これが現実のものになったら、ゴジラかキングコングがガーデニングに目覚めて、世田谷区内にプランターを置いて草木を生やしたような状態にならないか。ぞっとしない。

実は、高架複々線の早期実現を主張する某サイトの管理人さんとメールをやり取りしているときに、地下化推進派に対抗して、高架複々線の早期実現を求める利用者を糾合できないか、という話が出たことがある。だが、「運動の政治利用を企む輩が出てこないとも限らないから、やるとしても、注意深く動く必要があるのではないか」と、どちらかというとたしなめるようなことをいった記憶がある。この考えは今でも変わっていない。

具体的にどこの党か、なんてことは書かなくても分かりきっているが、さまざまな住民運動を、便乗して党勢拡大に利用する動きは珍しくない。党というより個人だが、小田急の一件でも世田谷区の某区議が首を突っ込んで、火にガソリンを撒いていた。

豪徳寺-梅ヶ丘間にて

もっとも、気色悪い「緑のコリドー」なんていう不幸な結末にはならず、無事に高架複々線が完成したのだから、もはやどうでもいい話ではある。地下派のよりどころである「もぐれ小田急線」にしても、昨年 12 月を最後に、一年近く更新が止まっている状況。こんなイカれた主張をしていた人もいたのだ、ということを後世に残すためにも、ぜひともこのまま放置を続けていただき、くれぐれもサイト閉鎖などということのないように願いたい。

ちょうど、来年 3 月に新型ロマンスカーがデビューすることでもあるし、どこか適当なタイミングで、小田急ウォッチングを決め込んでみるのも良さそうだ。

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