Opinion : ハッピーマンデー制度に疑問 (2007/2/12)
 

7 年ぐらい前に、「オフピーク休暇のすすめ」という記事を書いた。これはどちらかというと「休暇を取る側の意識として、ピークを外すようにしてみてはいかが」という趣旨だったけれど、いくら個人がそういう意識を持とうとしても、制度などが邪魔をしていたのでは実現が難しくなってしまう。


先日、うちで不要になった PC を放出・搬入するために妹の家までクルマを走らせた。こちらは平日でも休めるけれど、あちらが会社勤めなので、否応なしに会社が休みの週末に行くことになってしまう。となると、高速道路の渋滞が気になるところ。特にこの週末は三連休、スキー場がもっとも混雑する時期でもある。

自分は MT 車乗りだから、特に渋滞が気になる。でも、AT 車に乗っていても、渋滞が好きだなんて人はいないと思う。「ラーメンは行列して食うから美味いのだ」という人はいても、「観光地は渋滞にハマりながら行くから楽しいのだ」という人には、お目にかかれそうにない。

では、なぜ渋滞が発生するのかといえば、一義的には道路のキャパシティを通行量が上回り、流れが悪くなるから。てことは、通行量のピークを抑えることができれば、渋滞が発生する頻度も下がるはず。ところが、皆が決まった日に一斉に休みを取ると、その反対の現象に見舞われる。

ピーク需要だけが突出すると、利用する側も、それを受け入れる側も、実はあまり得にならない。それは道路に限った話ではないはず。たとえば、都市部の鉄道が通勤ラッシュ時間帯のピークに合わせて線増や車輌の増備を行っても、昼間は遊んでしまって無駄になる。

観光関連施設にしても、ピーク需要に合わせたキャパシティの設備を用意すると、それ以外の時期には遊んでしまって無駄だし、投資効果がよくない。全体に占めるピーク時期の比率が少ない分だけ、通勤電車以上に深刻かもしれない。
それに、設備だけじゃなくて人集めの問題もある。休みの日にわざわざ働こうという人を集めるには、相応に人件費をはずむ必要がありそうだし、それは結果としてコストアップ要因になる。

つまり、運輸関連でも観光関連でも、ピーク需要だけが突出して、それ以外の時季には需要がドカンと落ち込む構造では意外と儲からない、なんてことにならないだろうか。それは、ピーク時季の売上こそアップするものの、それに合わせて投資や経費が嵩んでしまうから。以前に防衛産業の件でも書いたけれど、売上と利益は必ずしも比例しない。

利用する側にしても、混雑のピークが集中すると、いろいろとネガがある。高速道路が渋滞するとか、飛行機や列車の切符を取りにくいとかいうのは簡単に思いつくし、さらに、「繁忙期料金」ということで値段が上がる。鉄道は繁忙期と閑散期の落差が少ない方だけれど、飛行機なんかは料金の弾力性がありすぎて、ピークとボトムがものすごい差になっている。

さらに違う例を引き合いに出すと、たとえばリゾートホテルの宿泊料金。空いている平日と、もっともピークが高くなりそうな年末年始なんかを比較すると、どえらい格差になっていることがある。飛行機会社が提供しているスキーツアーのパンフレットを眺めてみたときにも、時季による価格の違いに目をむいた。

だから、休めるものならピーク時季を外す方が、時間は無駄にならないしコストも下がるしで、結果として「休暇による消費促進」の役に立つんじゃないかなと思ってみた。せっかく休みを取ることができても、「繁忙期で料金が高いから止めておこう (または内容を縮小しよう)」では、無理やり三連休をでっち上げるハッピーマンデー制度の意味が怪しくなってしまうわけだし。


そもそも、ハッピーマンデー制度の狙いを有り体にいえば「三連休を増やして、その分だけ休暇で出歩く機会を増やし、おカネを使ってもらおう」というものだったはず。(もしも勘違いしてたら訂正をお願い)

確かに、日帰りでは宿泊施設におカネが落ちないし、遠出もしにくくなる。実際、私が日帰りでスキーに行く先というと近場の越後湯沢界隈ばかりだから、それはよく分かる (おい)。
となると、まとまった休暇を取れるようにするという考え方にも理はある。ただ、その「まとまった休暇」の時季が全国一斉になる点と、常に「土・日・月」の三連休を構成する点が、いろいろと付随的トバッチリを生んでいないだろうか、ということ。

全国一斉に、皆が同じ日に休みを取ることでピーク需要だけが突出することのネガについては先に書いたが、「月曜休み」ばかりがやたらと増える点についても、学校の時間割編成なんかに影響が出ているらしい。不動産屋が「水曜休み」になっているように、本来なら「月曜休み」と決まっている業界があれば、これもハッピーマンデー制度のトバッチリを受けそう。

つまり、単にカレンダーをいじって連休を作り出すのではなくて、「まとまった休みを取りやすくする」という本質に目を向けた施策が必要なんじゃないのかなあ、と。たとえば、休む時季を固定しない代わりに、年間のどこかで必ずまとまった休暇を取れるように義務付けるとか。もちろん、そういう制度にしたところで、実際には「休日出勤でつぶれましたー」という人は出てくるだろうけれど、それは現行制度でも同じこと。

あと、会社だと、「人によって休む時期がずれると、仕事の調整なんかが面倒だ」とかいうクレームが出てきそうだけれど、実際のところはどうだろう ? 仕事の内容や業態によっても、この辺の事情は変わってくるかも。

と、そんなわけで。
年末年始だけは仕方ないにしても、それ以外の時季はできるだけ、ピークを分散しつつトータルの休暇の分量を確保する方が、結果として経済効果があるんじゃないかと思ってみた。そもそも、ハッピーマンデー制度による経済効果って、目に見える形で持続しているんだろうか ?

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