Opinion : 軍艦とお国柄 (2009/8/3)
 

土曜日に、横須賀の海自・米海軍合同一般公開イベントに行ってきた。

今回に限らず、最近では海自のイベントに米艦が、米海軍のイベントに海自が、互いに艦を 1 隻派出するのがお約束の様子。今回は、USS Curtis Wilbur (DDG-54) が吉倉の桟橋にやってきて、二代目「しらせ」と目刺しになっていた。


新品の「しらせ」を見学したのに続いて、すでにベテランの域に達しつつある Curtis Wilbur に行ったせいか、全般に使い込まれた印象。といっても決してネガティブな意味ではなくて、使い込んで鍛えられた艦、という方が適切かも。

もともと、Arleigh Burke 級はそんなに余裕のある設計ではないけれども、必要になったものは仕方ないということで、両舷の上甲板に機関砲を増設して小艇対策としているほか、最近の米海軍の常で、対ミサイル デコイの Nulka も増設している。

その手の手直しは海上自衛隊でもやるけれども、全般的に、米海軍の方が見てくれに構わない感じがする。必要だから載せるのだ、文句あっか、と。塗装なんかでもそうで、米艦の方が荒っぽい感じ。
そういえば以前、USS Cowpens (CG-63) におじゃましたら、艦橋構造物の前面がモザイク模様みたいになっていて唖然とした。海自ではあり得ない。それともあれは、新手の迷彩を試していたんだろうか (ええ !?)

これが海自の艦だと、隅々まできっちり・きれいに手入れされている。新しい艦だけではなくて、退役間近の古い艦でも同じ。3 年前、観艦式の予行におじゃました際に乗せていただいた「たちかぜ」は、当時の海自では最古参の DDG だったけれども、それでもきれいにしている。その分、乗組員の方は手間をかけていて大変なんだろうなと思うけれども、これはやはり海自の美風といっていいかも。

あと、モノ・カネが潤沢にあることが前提になっている、と思わせてくれるのもアメリカの特徴で、その辺はやはり plenty の国。

たまたま日米の艦を比較すると、基本的に似た流儀で造られているので、細かいところで差が際立つのかも知れない。これがヨーロッパ諸国の艦だと、まるで思想が違う部分が少なくないから、そっちに目が行ってしまって、細かい違いまで感じ取っているヒマがない。

誤解しないでいただきたいのは、どっちがいいとか悪いとかいう話ではなくて、日米ではそういう違いがあるのだ、ということ。無理してギャップを埋める必要はさらさらないし、ちゃんと仕事をしている分には、違いがあっても問題なし。そこで「だから日本の方が優秀で、米海軍はダメだ」とかいう話に持って行くのは、酷使様のやること。


軍艦の見てくれに限らず、「必要な結果さえちゃんと得られれば、多少の見てくれは気にしない」というのは、アメリカ全般にいえることかも知れない。MRE なんか典型例で、ちゃんと必要な栄養がとれればいいではないか、というところがある。いや、MRE を持ち出さなくても、アメリカの食い物はそんな感じのものが多そう。

といっても、平均的日本人の感覚からすると「どう見てもメタボ養成にしかならないだろう」という感じの、栄養がどうとかいうレベルを超越した食い物もたくさんあるわけだけれど…

ともあれ、現場を実際に見て「ああ、アメリカ的なモノの考え方ってこうなのね」というのが分かっていると、彼の国の人と付き合ったり、仕事をしたり、喧嘩したりするのに、ちょっとは役に立つかもしれない。もちろん、アメリカに限らず、どこの国でも同じことなのだけれど。

そういえば、艦艇デザインがアメリカ風で、かつ自国で建造している国というと韓国があるけれども、その韓国の軍艦を見物してみたら、またカルチャーの違いがありそうだ。あいにくと見物の機会に恵まれていないけれども、けちくさいこといわないで晴海あたりに持ってきて一般公開してみたら、面白いと思うけれど。

そういえば、米軍の基地祭というと必ずといっていいほどいる、(日本人の感覚では) 意味不明な馬鹿騒ぎをしている人。あれもひとつのカルチャー ショックかも知れない。初めて見る人にとっては。(慣れると、「ああ、またやってるわ」という程度の反応になってしまう)

こんな調子で、軍艦やら食い物やらを通じて日米のカルチャーの違いを肌で感じられるところが、米軍基地の基地祭で、いちばん面白いところ。もっとも、こんなことを書いているから「親米・親ユダヤのプロパガンダを垂れ流す」なんていわれるわけだけれど :-)

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