Opinion : 正論・筋論だけでは説得できない話 (2010/12/13)
 

噂には聞いていたけれど、「えらいことになっているなあ」と思ったのが、中国地方の JR のローカル線。

たとえば因美線では、智頭以南になると途端に、25km/h 制限 (これは天気がいいときの数字で、雨のときは 15km/h 制限) が多発する。本則 55 とか 60 とかいうカーブでも、その手前に「25 / 雨 15」と書かれた速度制限標識が立っている。これは、落石などのトラブルに遭遇してもすぐ止まれるように、ということで減速運転を余儀なくされているらしい。

実際、線路の整備状態は良くなさそうだし、いかにも「おカネをかけていない」もとい「おカネをかけられない」という雰囲気が伝わってくる。このままいくと、赤字で二進も三進もいかなくなる前に、台風か何かで土砂崩れが発生して線路が埋められたら、それを理由にしてそのまま廃止、なんてことになりかねないのでは。

そうなると、地元の自治体、あるいは新聞・TV あたりが「地元住民の大切な足を護る公共的使命が云々」てなことをいいだすのはお約束だろうけれど、もはやそういう議論が通用する状況ではないような。
筋論・正論だけで JR 西日本が納得してくれるものかどうか。むしろ「復旧するからカネを出してくれ」とか「利用を増やすための施策を講じてくれ」と交換条件を持ち出したくなりそう。

よくよく考えると、筋論・正論だけでは相手を納得させられない類の話って、いろいろ。例の「非実在青少年」という珍語で話題になった漫画か何かの表現規制にしても、「表現の自由を侵害して云々」という大上段から振りかぶった筋論・正論だけでは、「青少年に対する悪影響が云々」という主張を押さえ込めるかというと、怪しい。

ことにアダルト系の話についていえば、何でもモロ出しにするよりも、オブラートを被せて想像力の翼をはためかせるぐらいの方が、よほどエロいと思うけれどねぇ… おっと、閑話休題。

武器輸出三原則の話もしかり。「自国を防衛するための手段は国産化できないと」「それには防衛産業基盤の維持が必要」「自国の需要だけでは基盤維持が不可能なので共同開発に乗り出す必要があり、それには三原則等の緩和が必要」という業界向けの筋論だけで、「日本が輸出した武器で人が殺されていいんですか」という煽りに対抗できるかというと、無理っぽく感じられる。たとえ、社民党が国会で法案を人質に取らなかったとしても。


「すべてを護ろうとする者は、すべてを失う」なんていうことをいうけれども、先に挙げたような話でも、これが該当しそう。そうなったときに、どう対応するのが現実的なのか。

まず、護るべき対象を「どうしても譲れないもの」と「譲らざるを得ないのであれば、失っても仕方ないもの」に峻別して、後者を切り捨ててでも前者を護る、というのがひとつの手。
たとえば、レールをまくられる事態だけはどうしても避けたいのであれば、「高速化事業」ならぬ「線路維持事業」みたいなものを立ち上げて費用負担する代わりに、路線の廃止だけは勘弁してもらう、とかいう具合に。

表現規制の問題も、そもそも「表現の自由」をタテにして「何でもあり」だと思ってしまうのが間違いの元なので、業界が自ら何らかの制限・自主規制を取り入れる代わりに規制の立法化によって行政が介入する事態だけは回避する、という形で手打ちにできれば、まだしもマシだったのかも。

もうひとつの方法は、正論・筋論を捨てて、こすっからく反則スレスレの手でも何でも使って、側面迂回戦術を採る手口。

武器輸出三原則等の話についていえば、正面突破で「緩和」ができないとなったときに、すでに BMD で使っている手を拡張して「友達の友達は、また友達」理論を持ち込み、「アメリカならびに、日本が OK を出したアメリカの同盟国 (だと幅が広すぎるので、NATO 加盟国ぐらいが妥当か) については、SM-3 ブロック IIA の輸出対象に含めてもよろしい」とするとか。

戦闘機の共同開発も同じデンで。すでに F-2 という前例があることだし、「友達の友達は、また友達」理論を持ち込んで「アメリカならびに (略) となら共同開発してよろしい」とやる。それと平行して、輸出しても良い相手を判断するためのガイドラインを明確にする作業も進めると。

もちろん、憲法九条の解釈改憲と同じで、これはこれで物言いをつける人がいるだろうけれども、正面突破を図ろうとするよりはフリクションが少なくなりそう (な気がする)。そうやって実績を積み重ねていけば、いざ正面突破を図ることになったときに、何も実績がない状態よりは容易になるだろうし。

陸自の戦車定数削減話だったら、「後で増勢の必要が生じたときにコアになる部分がないと困るので、必要最低限の数だけは死守する」とか「戦車がダメなら戦車みたいなものを定数の枠外にねじ込む」とか (←それなんて突撃砲 ?)


現実問題、日常生活でも仕事でも何でも、いろいろな考え方の持ち主がいて、いろいろな利害関係が対立するのが常だから、筋論・正論だけで物事を解決できることの方が少ないのかも知れない。自分も往々にして筋論・正論を振りかざしがちだから、もうちょっとこすっからく立ち回るやり方を身につけた方がいいのかもなあ、なんてことを考えてしまった。

「考えてしまった」のはいいけれど、実行できるの ? > 自分

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