Opinion : 不幸な事件への便乗と流言飛語 (2011/3/21)
 

計画停電の影響でいろいろと振り回されているものの、被災地のことを思えば、なんのこれしき (挨拶)
不便なことがあっても、それなりにサイクルができて順応してくれば、もうちょっと落ち着くのではないかと思うのだけれど、それはそれとして。

今回のような未曾有の災厄が発生すると、ここぞとばかりにハッスルする人がいるのではないか、と考えると忌々しい。すでに、震災情報を装ったウィルスとか、義援金詐欺とかいう事件が起きているというと、なんともはや。

某所では、「震災義援金募金」をやっている人達が、肝心の震災より大きな文字で「米軍基地反対」とやっていたらしい。いくら "Operation Tomodachi" で在日米軍の評価が跳ね上がっているのが気に入らないといっても、こんな調子では広範な支持は得られまい。「不謹慎」という不謹慎な見出しを付けた某新聞社の記事も同じだ。

これからおそらく、「私は今回の大震災を予知していた」と主張する人が出てくるだろうし、大震災をダシに使って終末論を煽る人、あるいはカルト宗教も出てくると思う。特に今回は、福島第一原発に世間の耳目が集まっているから、原子力がらみで実際以上に危険を煽る人が出るのは必然だろうし。


その福島第一原発の現場で、必死になって対策に取り組んでいる東京電力や自衛隊やレスキュー隊の皆さん (順不同) には、なんといって感謝していいか分からない。それに引き替え、先週にも書いたように、福島第一原発の件を己の主張を正当化するためのダシに使っている人がいるのは、まことに腹立たしい。

なるほど、通常より高いレベルの放射線量が検出された事例はある。でも、「その瞬間に危険が生じるレベルの放射線量」と「そのレベルの放射線量に一定の時間だけさらされると危険が生じる」の違いを無視して (または曖昧にして) 危険を煽るのは、単なるデマゴーグ、流言飛語でしかない。

しまいには、「福島第一原発の周囲は、100 年間は人が住めない死の土地になる」なんて駄法螺を吹いている人がいる。え、100 年 !?

ちょっと待て。じゃあ頭上で原子爆弾が炸裂した広島や長崎はどうなんだ。JCO が臨界事故を起こした東海村はどうなんだ。いずれもまだ 100 年も経っていないのに、普通に人が住んで、暮らしている。決してガミラス星人が住んでいる訳じゃない。

そんないい加減な駄法螺を吹いた挙げ句に「危険だから逃げろ逃げろ」と煽る。その割に、放射線と放射能の区別がついていなかったりするところが噴飯ものだけれど。こういう無責任な発言をする人が往々にして、風評被害とか、デマに起因する各種の騒ぎの際に火付け役になるんじゃないかと思う。困ったものである。

そして、この手の人に「発表されている話と違う」と突っ込むと、きっと「それは政府が真実を隠しているのだ」と陰謀論者みたいなことをいうのではなかろうか。気に入らない話はすべて「真実は隠されている」といって否定すればいいのだから、楽でいいよね。

さらにエスカレートして、「原子炉が核爆発を起こす」といわんばかりの人 (あるいはそういっちゃってる人) もいる様子。商業用原子炉で使うぐらいの低濃縮ウランでホイホイと核爆発が起きるのであれば、イランがあんなに必死こいて遠心分離器をズラリと並べて、ウラン濃縮に血道を上げているのは何のため ?

そういう「他人の不幸は蜜の味」みたいなことばかりやっていると、それこそ天罰が下っても知らないぞ。


この手の流言飛語やデマゴーグ、各種の煽りというのは基本的に、人の不安感につけこむもの。犯罪・事件・事故・災害によって不安な心理になっているところに危機感を煽り、自分の主張を広めるための道具に使う、嫌らしい心理作戦。そこで「煽りすぎだ」といわれたら「最悪の事態に備えなければならない」という大義名分が使えるのも、この手の流言飛語には好都合。

目下、首都圏で何かと騒ぎになっている買い占めにしても、「平素は安心して何も用意していない」→「未曾有の大震災が発生」→「その影響が停電という形で降りかかってきた」→「急に危機を身近に感じて買い占めに走る人が出る」→「いったん欠品の話が出ると、焦っていなかった人も煽られて買い占めに走る」という流れなのではないかと思われる。自分が見た範囲では、地震発生の直後はまだ平穏だったのに、計画停電の話が出た途端に欠品が激しくなったようだし。

ということは逆に、何か人心を不安にさせるような事態が発生したときに、その不安感にストンとはまるようなことを大声で吹聴する人がいたら、それこそ流言飛語・デマゴーグの類ではないか、と疑ってかかると、ちょうどいいのかも知れない。特に、ソースがなかったり不明瞭だったり、伝聞調だったり、「消防署の方から来ました」的な内容だったりした場合には。

と、ここまで書いて思ったけれど、次は「節電ヒステリー」が来るかも知れない。何かちょっと電気を使っていそうな人や場所を見つけては吊し上げて自己満足に浸る、とかいう形の。

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