Opinion : 意思表示の方はどうなの ? (2012/8/27)
 

先週、領有権問題の話について書いた後で総火演を見に行ったら、なんと今年のテーマは「島嶼防衛」だった。といっても、陸地の中にある演習場で完全に再現してみせるわけにはいかないから、「手続きのみ」(?) となった部分もあるわけだけれど、それはそれとして。

そうこういっていたら、今度は防衛省が水陸両用装甲車の予算要求をする、なんてニュースも出てきた。現時点で日本が入手できそうなブツといえば AAV7 しかなく、ブラジル向けの再生補修品の輸出価格を考慮すると「4 両で 30 億円」は、まあ妥当。

ともあれ、西普連の発足あたりから形をなし始めた「島嶼防衛シフト」にも、ようやく本格的なドライブがかかってきたなあと思う次第だけれども、気になるところもいろいろ。


そもそも、島嶼防衛の基本は「上げさせないこと」。いったん上陸してきたものを追い落とすのは容易なことではない。上がってきた敵兵を殲滅するよりも、敵兵がまだ揚陸艦などに乗っているうちにフネごと撃沈してしまう方が確実性が高いし、こちら側の犠牲も少なくて済む。

もちろん、「上げさせないのが基本」だといっても、上がった後の事態に備えた装備も訓練も不要というのは暴論で、それはそれでちゃんと必要。ただ、できることなら上がってくる前に撃退する方がいい、という優先順の話。

そうなると、平時からの情報収集や、侵攻の兆候があったときの迅速な防衛戦力展開がキモ。前回にも言及した「丸」の記事の中で、イギリス側について「侵攻の兆候を察知した時点で、どれだけ早く増援戦力を送り込めるかどうかが問題」と書いたのも、そういう理由。

ただ、正規軍が正面切って上陸作戦を展開しようというのであれば、まだしも対処しやすい部分がありそう。所要のハードウェアも能力も、それなりに揃いつつあるわけだから。

むしろ、先日に尖閣諸島であったみたいに、民間人 (あるいは民間人のふりをした連中) が押しかけてくる事態の方が始末が悪い。相手が正規軍による本格的な侵攻ではないのに、こちらが F-2 を飛ばして対艦ミサイルを撃ち込むわけにも行かないのだし。
すでに他所でも指摘されているように、まず民間人を送り込んできて、その次に「民間人の保護」を名目にした正規軍投入というシナリオだってあり得る。

そういう場面では、まずは警察や海上保安庁の出番だろうけれど、そうなると、どういう法律でもってどうやって取り締まるか。そして、それを通じて相手にどういう形でメッセージを送るか。それが、気になるところ・その一。

でもって、法執行機関の投入にしろ自衛隊の投入にしろ、政府が「尖閣諸島は日本のものだから、断固としてこれを保持する」という意志・コミットメントを明確にして、そのことを口先だけでなく態度で示すことが必要だろうけれど、どうやるのか。それが、気になるところ・その二。


もしもヤバい事態になったり、あるいはヤバい事態が切迫したりすれば、尖閣諸島そのものだけでなく、その近隣にも各種の部隊を展開しなければならないけれども、そこで地元が文句を言ってきて展開ができません、というのでも困る。

そんな事態にならないためには、平素から政府が意志・コミットメントを明確にした上で地元に納得してもらい、いざというときにスムーズに展開できるようにする必要があるんじゃあ… それができてこその「島嶼防衛演習」なのでは。

交戦規則や有事法制の話もそうだけれども、ハードウェア (や、それを扱う人材) を揃えるのと比べると、意思表示とか体制作りとか制度作りとかいうソフトウェア的な話の方が面倒だし、誰かが悪役にならないと話が進まない。でも、それをやらないと、肝心のハードウェアも出番をなくす。

その「断固として保持するという意思表示」も、ある種のソフト パワーといえるんではないだろうか。それに、相手が世論に揺さぶりをかけてくる事態だって考えておいた方がいいのでは ?

そもそも、日本政府が「自国の領土なんだから護るぞ」という意思や行動を明確にしなければ、(いくら日米安保の対象に含まれるといっても) アメリカだって加勢しづらい。ただ「助けてください」ではなくて「自分でやれることはやるから、必要なときは加勢して」というのが本筋だと思うけれど。

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