Opinion : さまよえる同業者と目標の確定 (2013/7/22)
 

先日、E3 系 R1 編成のラストランを撮るのに、秋田県まで遠征してきた。本来なら「普段着」のうちに撮っておきたかったのだけれど、運用の把握が難しい。そこで、確実に狙えるイベントに合わせるという、ちょっと不本意なやり方をとった次第。よくよく考えると、去年も 200 系 K47 編成で同じことをやっている。

それはともかく。おカネと時間をかけて秋田くんだりまで遠征するのだから、自分でどうにかできることは可能な限り対処したいところ。ダイヤの乱れとか天候の乱れとかいうのはどうにもならないけれど、それはそれ。

撮影場所の選定については、地形や光線や障害物を考慮に入れて、かなり気合を入れて事前に調査した。しかも前日に現地入りしてレンタカーを確保した上で、当たりをつけておいた場所のロケハンまでやった。そして当日、予定通りに場所を確保して、予定通りに撮りたいモノは全部確保した。

なんだかこれって、スプルーアンス提督が指揮する第三艦隊の作戦みたいである。事前にきっちり計画を作って、特に阻害要因がなければその通りに実行するというあたりが。それを、分かりやすい文書にして配布するところまではやらなかった… わけでもない :-)

そういえば、JR 線・民鉄線の全線乗りつぶしを企図して飛び回っていたときにも、事前にきっちり計画を立てて、後はそれをその通りに実行するという「第三艦隊方式」。幸い、ダイヤの乱れや誤乗・寝過ごしなどでスケジュール崩壊、なんて経験はほとんどなかった。と、それはそれとして。


その R1 編成ラストランの当日、自分らが占位していた現場の近辺で、クルマでウロウロしている同業者を何人か見かけた。後になってやってきて「先客がいる」といって諦めては、また別の場所を探すことを繰り返していた模様。しまいには、鉄道用地内に入り込んだり、踏切ではない場所で線路を横断したりした人がいた、との目撃談も。

その「さまよえる同業者」を見て思ったのは、「事前にターゲットとなるポイントをひとつ決めて、そこを早いうちに確保すればいいものを…」ということ。そりゃ、いろいろな場所からいろいろ撮りたいという気持ちは分かるし、真夏の好天のおかげでクソ暑かった (失礼) から、同じ場所で長時間にわたって待つのがしんどいのも分かる。

でも、他にもたくさんの人が集まるのが分かっている場面で、後からやってきて「いい場所がない」はないんじゃないの、と。なにも鉄道写真撮影に限らず、その他の各種イベントにも共通する話で、「あれもこれも」と欲張ったら虻蜂取らずになりました、というパターン。

逆にいえば、自分以外に誰も来ていないような場面や場所であれば、状況に合わせて出たとこ勝負に出ても、あまり問題にならない。実際、自分もそういう経験はある。

その虻蜂取らずを防ぐには、「目標の確定」と「リソースの集中」が必要。全部を得ることはできなくても、狙った最重要ターゲットだけは確実に獲る。そのために手持ちのリソースを集中して、他は捨てても仕方ない、と。

そういう決断が求められる場面って、趣味でも人生でも、意外と多いと思う。軍事作戦ならなおのこと。「目標の確定」と「兵力の集中」は基本だし、事前の情報収集・分析を怠った挙句に場当たり式の行動に出るのは、失敗への第一歩。

もちろん、すべてがこちらの思惑通りに進むわけではないから、臨機応変な対応が必要になることもある。でも、「臨機応変」と「場当たり式」は似て非なるもの。それに、臨機応変だといっても、事前に情報収集をするに越したことはない。事前にいろいろとシナリオを書いておけば、状況に合わせてシナリオを選択するだけで済むし。


なんていうことを、「さまよえる同業者」を見ていて感じた次第。なんだか、発端の話と比べると、ずいぶんと話がデカくなってしまったかも知れないけれど、そこは御勘弁いただきたく。

そこからさらに話をデカくすると「情報は事前に与えられるものだという前提でものを考えてしまい、自ら情報を収集・分析する努力が足りなかった某国陸海軍」なんてところまで飛躍しそうではある。おっと。

それは冗談としても、データを集めて自分なりに検討・評価した上で、それを行動指針や判断材料にするのは、なにも軍人や国家指揮権限者の専売特許ではないはず。そして、「目標の確定」と「リソースの集中」も、軍人に限った話ではないはず。

すべてを得ようとする者は往々にしてすべてを失うし、場当たり式の行動は後々に禍根を残す。そういうものではないのかなあ ?

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