Opinion : Invisible Evolution (2015/3/30)
 

先日、E235 系の報道公開に行って、現車をいろいろ観察するとともに、担当者からもお話を伺うことができた。

新聞や TV のニュースだと「紙の吊広告をやめる代わりに車内に液晶ディスプレイを設置して、デジタル サイネージ化する」という話のオンパレード。誰でもパッと分かる外見的な変化はそこだから、そういう話になってしまうのは致し方ない。

これが趣味誌的な視点になると、「E231 系から転用した T 車だけ、こんなところの造作が違う」とかいう話に注目が集まりそう。細かい話を始めると、ずいぶんいろいろと違いがあるのだけれど、その辺の話は、追って出てくる新車紹介記事を見ていただくことにして。

ただ、E233 系から E235 系になって何が最大の進化点といえるのか、といえば、これは間違いなくINTEROS (INtegrated Train communication networks for Evolvable Railway Operation System) である。

ところが、INTEROS の何がどう進化したのか、という話をするには、まずその前の TIMS (Train Information Management System) の話から始めないといけない。すると今度は「TIMS ってモニター装置じゃないの ?」とかいうことをいいだす人が現れてワヤワヤに… なんていう成り行きは、おおいにありそう。


といったところでふと思ったのは、「E235 系と F-35 は似たところがあるんじゃないか」という話。

多分、報道公開に集まった関係者の中で、こんなことを考えたのは自分だけだと思う。さらに書けば、INTEROS と聞いていちばんハッスルしていたのも自分だったと思う (苦笑)。

それは、ヴィークルの内部、あるいはヴィークル内部のシステムと外部のシステムを組み合わせて構成するシステム アーキテクチャの部分で大きな変化があり、それは単にヴィークルそのものだけでなく、それを運用・維持・管理する部分にまで変化をもたらす可能性があるから。

そしてさらに、そういう内部アーキテクチャの部分に関する説明は (たぶん)「難解だから」という理由であまり表に出てこない一方で、パッと見で分かる部分の変化にばかりフォーカスした報道がなされるところも似ている。

それが、E235 系であれば「デジタル サイネージと吊り広告の廃止」や「車椅子やベビーカーに配慮したフリースペースの設置」だし、F-35 であれば「ステルス化」「タッチスクリーン化したグラスコックピット」といったあたりになる。でも、その辺の話にばかりフォーカスしていると、変化の本質を見誤る。

あと、運用・維持・管理の部分にまで変化をもたらそうとしているということは、変化した新しい仕組みを円滑に機能させるために、システムの熟成やノウハウおよびデータの蓄積が大事になる、という話に通じる。そこのところも E235 系と F-35 は似ている。物理的にモノができあがって、不具合なく機能できればそれで完成… とはならない。

「専門家とフツーの人の間を取り持つ通訳」を標榜する身としては、そういう内部的な変化まで踏み込んで本領を発揮しないと鼎の軽重を問われる。だから、内部アーキテクチャの変化や進化がいかなるもので、いかなる影響を及ぼそうとしているのか、という話をしっかり書いていかなければならないと思っている。


たまたま、目下のホットな話題ということで二つの「お題」を肴にしたけれども、これらに限らず、「見た目の変化は大したことがないけど、内部的な変化は著しい」とか「見た目の変化に気をとられていると、内部的な変化を見逃す」とかいう類の話、案外といろいろな分野で転がっていそう。

それを見逃さずに取り上げていくことも、自分の仕事のうちなのだろうなと思ってみたり。

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