Opinion : スキャンダル系サイバー攻撃 ? (2015/9/7)
 

2020 年東京五輪 (年を書かないと 1964 年と紛らわしいので、こう書く) の公式エンブレムをめぐる騒動に、大して興味はなかったけれど、それに関連して勃発した「ネット私刑」とでもいうべき状況については、ちと気になった。

「ネット私刑」とか「炎上」なら頻繁に起きている。それが、明らかに反社会的な行為・社会正義に反する行為に起因するものなら、特段に同情する理由はないし、しない。「衛生第一の食い物屋で、わざわざ冷蔵庫の中に入って写真を撮る」なんていう事案に至っては、もう問題外。

そういう、明確に「これはダメだろう」といえる事案ならまだしも、そうではない事案だったらどうするか。といったところで、お題は「パクリ」。


パクリといえば中国… かどうかはともかく、外国から輸入したり、あるいは技術移転を受けて国内生産したりした製品について、後から「国産品である」「国内開発した」と言い張る事例がいろいろあるのは事実。

Su-27SK しかり、Su-33 (のプロトタイプ) しかり。Goalkeeper のそっくりさんや RIM-116 RAM (Rolling Airframe Missile) のそっくりさんもある。武器の世界に限った話でもない。

ただ、本当にパクリかどうかという議論になると、どうしても「見た目の印象」に立脚してしまうので、何をもってパクリ認定するか、というところで争う羽目になるのは間違いなさそう。

バラして中身を調べれば証拠をつかめる (かもしれない) 工業製品でもモメるのだから、他の分野になると、さらに「パクリの定義」「白黒認定」でモメる可能性が高くなる。「デザインが似ている」とか「文面が似ている」なんていうのは典型例。

どれとはいわないけれど、日本でも国産の乗用車が「海外メーカーのあれと似ている」といわれた、なんていう類の話はいくつかあった。他の業界でも、似たような話がないわけではない。(しかし、「外見が似たクルマ」で明確にクロ認定されたケースはなかったと思う)

ともあれ、言い張り方や話の持ち出し方などに工夫をすることで、「パクリ認定」というムードを作り出すことも、ひょっとすると可能なんじゃないだろうか。その際、事実かどうかは問題じゃなくて、皆がそういう方向で騒ぐかどうかが問題。


ここから先は妄想劇場。

サイバー攻撃というと一般的には、「LAN に不正侵入する」とか「標的型攻撃で RAT (ネズミ、ではなくて遠隔操作ツール。Remote Access Trojan) を送り込んでデータを窃取する」とか「DDoS 攻撃でサーバを落とす」とかいう類のものを想像することが多い。

しかし拙著でも書いているように、サイバースペースで行われていれば、それはみんな広義のサイバー攻撃、あるいはサイバー戦に属する。ISIL (Islamic State of Iraq and the Levant) が得意とする (?) 宣伝戦だってそのひとつだ。

日本に限らず、他国でも「ネット私刑」みたいな事案が頻繁に発生していた場合、これを攻撃に応用できる可能性はないだろうか、ということを考えてみた。

つまり、自分とこの国家ないしは組織に対して敵対的な立ち位置をとっている誰かさんを陥れようとして、ネット私刑につながりそうな騒ぎをでっち上げる。ついでに、誰か手の者を使って騒ぎに火を点ければよろしい。それで炎上騒ぎが起これば「こっちのもの」である。

困ったことに、真偽の程に関係なく、それらしく見えればたちまち拡散してしまうのがこの世界。でっち上げでも、それらしく見えれば勝算はある。写真が「真」実を「写」しているとは限らない昨今なのだし。

おまけに、ネット上で炎上騒ぎが起こった場合、鎮火した後はトットと忘れられて、別の獲物を求めて去っていく。その後には草木も生えない。だから、後になって真実が露見しても、もう遅い。悪貨は良貨を駆逐する。

ただし、この手法には決定的な欠点がある。どこまで "燃やせる" かは攻撃を仕掛ける側次第なので、結果が読めない。それに、ネット世論とリアル世論がどこまでリンクするか、という問題もある。そうなると不発弾に終わる可能性も低くないわけで、ここぞというところで使う決定的なツールにはなり得ない。

それでも、駄目元で仕掛けるぐらいなら、それはアリかも知れない。大して費用がかかるわけではないのだし。

ま〜、だからといって何でも「工作員認定」するのも、どうかと思うけど。

Contents
HOME
Works
Diary
Defence News
Opinion
About

| 記事一覧に戻る | HOME に戻る |