Opinion : 安全は新製品に優先する (2016/8/8)
 

自分はやっていないけれども (興味があるとかないとかいう以前に、プレイできるメカが手元にない)、周囲ではポケモン GO が流行っている様子。それは別に構わない。

そのポケモン GO に対して批判的な言説が出てくると、熱中している人が反論する。それは理解できる部分もあるけれど、「ちょっと待て」と思う部分もある (その話はまた後で)。

ただ、駅構内などでの規制について「新しいものが登場すると、すぐ規制しにかかる。だから日本はダメなんだ」的なことをいう人がいるのを見ると、これはなんだかモヤモヤしたものを感じる。

どこかで聞いたような話だと思ったら、あれだ。「ドローン」と同じパターンである。新しい製品・サービスが颯爽とデビューして、それを煽る向きが登場する一方で、いろいろ問題が起きてコンフリクトするという。


いくら「教えてくれる機能があるのだから、画面を見続けなくても大丈夫」(つまり規制するには及ばない) と擁護派が主張しても、その機能を活用するかどうかは使い手次第。使い手が使う気にならなければ、その機能はないも同然。

ポケモン GO が登場する前から、駅構内での「歩きスマホ」は問題になっていて、止めるように呼びかけるキャンペーンをやっていた。そんな調子だから、「画面を見続けなくても大丈夫」といっても、どこまで実効性があるか。止めてくれといっても見る奴は見る。

なんていうと、「ポケモン GO を安全にプレイできるように、全駅にホームドアを設置すべし」なんて極論を主張する人が出てきそう。ポケモン GO とは関係なく「あった方がいいもの」ではあるけれども、設置にべらぼうな費用と手間がかかることを忘れてはいけない。

鉄道業界にしろ航空業界にしろ、まず「安全」が第一。いくら理屈をこねても、現に安全を阻害しかねない因子があるのであれば、なにかしらの手を打たなければならないと考えるのは当然のこと。

いわゆるドローン規制は、その典型例。道路交通と違い、空の上は基本的に「プロの世界」というか、しかるべき訓練と資格認定を得た者だけの世界である。そこに、シロウトが操縦する、風に煽られてどこかに行ってしまうかもしれない飛行物体がフラフラと迷い込んできたらまずい、と考えるのは当然のこと。

「新しい産業の邪魔をするのは怪しからん」というけれども、その新しい産業や製品やサービスが事故や事件の引き金を引いて、「あれは危険である」という認識が定着してしまうことの方が、よほど発展を阻害するとは思わないのか。

ちょうど最近になって 3D プリンタがそういう目に遭っているように、いわゆるドローンについてもそのうち「ドローン市場失速」「期待された市場規模はどこへ」みたいな叩き記事が出てくると予想される。煽って記事を売り、叩いて記事を売る、いつものビジネスモデル (?) である。


「新しい技術や製品やサービスが出てくれば、既存の社会や秩序との間でコンフリクトを起こすことがある」「落としどころを見つけるために、双方で折り合いをつけたり、段階を踏んでいったりする必要がある」というのは自分の以前からの持論だし、自著でも書いた。

そういえば先日に、テスラの自動運転車が事故を起こした。これもそうしたコンフリクトのひとつで、妥協や対策を進めていくきっかけといえそう。正直な話、条件があまりにも幅広い道路交通で自動運転を実現するのはハードルが高い話で、「できるところから段階的に」とならざるを得ない。そして、そうやらないと必ず揺り戻しが来る。

うちのクルマに付いている EyeSight 3.0 だって、とてもよくできたシステムだと思うけれども、状況次第では使えなくなったり車線を把握できなくなったりする。だから「EyeSight だけに頼った運転はしないでください」との但し書き付き。当然である。

自分が熱中しているもの、入れ上げているものに対するネガティブな反応が気に入らないという心境は分からんでもないけれど、「まず安全第一」という視点を忘れると、却って悪い結果になるんじゃなかろうか。

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