Opinion : 旅行会社の新たな商機 ? (2016/8/15)
 

先日、「若い男性のひとり旅が増えているのだが、それに対処する術を持たない旅行会社がフリーズしている」という話を Twitter で流したら、意外と反響があった。というか、拡散された。

いわく。「流行に敏感な女性層を主なターゲットにして商売してきていたら、そこから外れた層が増えていることに気付いた。でも、どう対処していいか分からない」「そういう層は自分で旅程を組んで自分で手配をしてしまうから、旅行会社の出る幕がない」のだそうだ。さもありなん。


自分はもう若くはないけれども、鉄道だろうが飛行機だろうがクルマだろうが、ひとりでホイッと出かけてしまうのは日常的。「行ってし魔王」「行かない後悔より行く後悔」なんてぬかしているぐらいである。

そしてクルマの場合にはいうに及ばず、それ以外でも旅行会社の厄介になることは確かに多くない。例外は、ちょうどニーズに合っていて、かつ割安なパッケージ商品がある場合。

四国方面の乗りつぶしで JAL のフリープランを使ったことがあるし、北海道でも使ったことがあったような。出張取材で、費用対効果を重視してパック商品の厄介になることもある。1 月に熊本に「青蛙追撃」に行ったときにも、JAL のパック商品を活用した。

「宿も足もネットで手配できるんだから、旅行会社って要らないんじゃない ?」という声もあるけれど、それはいささか極論ではないかと思う。「例外は〜」と、旅行会社の厄介にならないのが既定値である、みたいなことを書いた舌の根 (?) も乾かないうちに、なんだけど。

ネット通販が広まっているからといって、電気屋でも書店でもリアル店舗の有用性が皆無になることはない。やはり現物を見て、手に取ってみないと分からないことはいろいろある。

たとえば、ノート PC のキーボードのタッチの良さは現物を触らないと分からない。本を買うのに、書店でフッと見かけてパラパラとめくってみて「!」となって即買い、ということもある。

となると、リアル店舗の強みは「品揃え」「商品知識」といったあたりになりそう。安さだけを売りにして、商品知識が足りない店員をたくさん並べていても、ネット通販に打ち負かされる。

これはモノを売る場合の話だけど、では旅行会社はどうか。冒頭で取り上げた話を敷衍すると、「流行に敏感な若い女性向けに商売してきたメソッドが、若い男性のひとり旅には通用しない」という話だけど、それならメソッドを変えられないものか。

たぶん、「流行の場所やモノやイベント」を主軸に据えるやり方では上手くいかない。皆が同じ場所にワーッと押しかけるのではなく、「やりたいこと」「行きたい場所」が人によってバラバラという傾向がありそうだから。となると、足と宿を割安に確保して、現地ではフリーにして放り出す」という方が好まれるのではないか。

それが旅行会社として旨みがあるかどうかは分からないけれど、何もしなければゼロである。多少なりともパイを得られる方がいい。後は売り出し方の問題である。


「若い男性のひとり旅をターゲットにして新たに商品を開発する」では大変だし、コストもかかる。それなら、「フリープラン」「出張パック」の類はすでにいろいろあるのだから、それをアレンジするなり、売り方に工夫をするなり、できないものか。

前に JAL で北海道に飛んだとき、JR のフリー乗車券をセットにできるというので活用したことがある。なんのことはない、乗りつぶし派には好適である。このフリー乗車券、通常は単品売りしていなくて、ツアー利用者向けに出しているもの。この辺は旅行会社の強みである。

さすがに「乗りつぶし派」はパイが小さいかも知れないけれど、なんだったら航空会社と JR グループがつるんで「乗りつぶしのキャンペーン」と「そのための商品」を売り出したっていいじゃないかと思った。

あるいは、お盆休みの時期と年末に、「各地から首都圏に向かう足と宿と宅配便をワンセット」なんていう売り方をしてみては。確保できる宿の場所と価格設定次第では (実はこれが問題か) なにがしかの需要をつかめるかも知れない。

ただ、この手のプランは 1 人用の設定がなかったり、あっても割高だったりする傾向はある。これはどうにかしないといけないと思われる。

と、ここで書いたことはひとつの思いつきに過ぎないけれども、これまでの「勝利の公式」を忘れて新たな商品あるいは売り方を考えないと、商機も勝機もないんじゃないかと思った。

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