Opinion : 優先度と代替策 (2016/12/19)
 

しばらく前に Twitter で、何かと話題の (?) コンパクト護衛艦こと 30DX について「"ゆき" クラスをステルス化したようなイメージ」なんてことを書いた。そこで書いたのは確か、こんな内容。

  • 砲熕兵装は Mk.45 mod.4
  • 個艦防禦兵装は Mk.15 CIWS と SeaRAM
  • 対潜戦 (ASW : Anti Submarine Warfare) はヘリ任せ

もちろん個人的な思いつき & 妄想であるわけだけれど、一応、自分なりに考えてはいる。


たとえば砲熕兵装。退役した "ゆき" クラスから転用する OTO メララ 76mm で済ませれば安上がりだけど、それでは火力支援手段として頼りない。5in クラスは欲しいし、できれば誘導砲弾を撃ちたい。で、Mk.45 mod.4。これは「譲りたくない」ポイント。

個艦防禦兵装の顔ぶれは「ファランクスのブロック 1B があれば対水上射撃にも使える」「SAM も皆無では心許ないので SeaRAM で」という考え (Mk.38 では、小艇対処はできても対艦ミサイルに対処できない)。"ゆき" クラスにおける RIM-7 シースパローに相当する存在がいないけれど、SeaRAM で我慢。これは「妥協する」ポイント。

肝心なのは「ヘリ任せ」。もちろん、天気が悪かったり海が荒れたりして、ヘリが使えない場面が発生する可能性は存在する。でも、ヘリがあれば、ASW に加えて ASuW にも救難にも哨戒にも臨検にも使える。いろいろ使えて便利な資産。これは「譲りたくない」ポイント。その代わり、ASROC に相当するものは諦める。対潜魚雷発射管は「余裕があれば積みたい」ぐらいか。

フネをコンパクトに、安価にまとめようとすれば、なにか切り捨てざるを得ない。しかも "ゆき" クラスを建造した時代と比べると、ことに C4ISR 関連は高度に、高価になってきている。でも、そっちは切り捨てられない。生存性のことを考えると、ステルス化も切り捨てられない。

そこで前動続行して「前にあったものは、今回もないとダメ」といっていたら、なにも降ろせなくなる。フネが小さいのに搭載するモノが減らなければ、友鶴事件の再来になりかねない。拡大改良型を作るならともかく、ガラッと変えて新しい概念のものをつくるときには、いったんゼロ ベースで考え直してリセットしないと。


つまり、ここまで書いてきたことの根底にあるのは「譲れるところと譲れないところの峻別 (明確な優先順位付け)」と「代替手段があれば捨ててもよいという割り切り」。実のところ、軍艦に限った話ではなくて、日常生活でも何でも同じじゃないか、というのが本題。

最近はひと段落したものの、しばらく前には「あれも要らない、これも要らない」といって不要品処分をやっていた。そのときに持ち出したのが、以前に書いた「万が一の可能性の過大評価」。

もちろん、その「万が一の可能性」を切り捨てないとモノは減らない。すると、「本当に必要なものは何か」「代替品で対処できるものは何か」と考えざるを得なくなる。なんだか戦時設計の機関車みたいだけれど。

よくよく考えたら、これらは、クルマの買い換えにもいえる話。プラットフォームが別物に変わるわけだから、大きな変化は不可避。

自分の場合、過去に乗り継いできたクルマを見渡して「乗り換えに際して失うものがあってはならない」といいだすと、現実にはあり得ないクルマを求めることになってしまう。

なにしろ、「直列 6 気筒」「レギュラーガスで走る」「6 速 MT」「AWD」「ワゴンないしはハッチバックの車体でスキーの車内積みが可能」「EyeSight みたいな衝突安全メカ」「スタッドレスが安くあがる 15in クラスのタイヤサイズ」といった具合になってしまうから。それは無理筋もいいところだし、中には両立しがたいものもある。

それで、譲れるところは譲り、譲れないところは譲らず、今のチョイスに落ち着いた。半年足らずで FMC してしまったけれど、それは織り込み済みだから後悔はしていない。ほんと。

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