Opinion : F-35B が空中給油をやったという誤報 (2017/7/10)
 

だいぶ昔に「英語で書いてあるということは秘密裏にやっていて云々」というお笑いネタがあり、その際に「外国語はその国のことを知るための入口で」みたいなことを書いた記憶がある。

でも、先入観や思い込みやその他いろいろの阻害要因により、とんだ勘違いをしてしまうこともある。自分も常に、勘違いをやらかす可能性は抱えているので気をつけないといけないのだけど、そんな事例をひとつ。


で。「岩国所属のステルス戦闘機 F35、沖縄で空中給油 嘉手納所属機と訓練」という沖縄タイムスの記事である。(ログを見ると、当サイトにもときどきお越しになっているらしい沖縄タイムスである)

実は仕事の関係上、この記事の元ネタらしき記事を先に見ていたのだが、それが米太平洋軍 (USPACOM : US Pacific Command) Web サイトの「Bringing Lightning to the Fight」である。

さて。元ネタと思われる記事を見ても、空中給油を行っている場面の写真は載っていない。それどころか、文章の方にも "air-to-air refueling" の字句はない。ただし、"forward area refueling point exercise" とは書いてある。

FARP (Forward Area Refueling Point) とは何か。記事を下の方に読み進めていくと分かる。要するに、353rd SOG (353rd Special Operations Group) の MC-130 が陸上で、海兵隊の F-35B に給油したのである。元記事にはこうある。

“During the exercise the MC-130 was able to transfer 8,000lbs (about 1250 gallons) of fuel to the F-35 which would have allowed the F-35 to continue to fly for about 1.5 hours.

つまりこうだ。「MC-130 は F-35 に 8,000lb の燃料を補給した。これは F-35B を 1.5 時間ほど飛ばすことができる量である」。

それがなぜか、沖縄タイムスの記事ではこうなった。

「約 8 千ポンド(約 1250 ガロン)の給油に成功し、F35 は約 1 時間半にわたり飛行を続けた」

えー。さらに、元記事はこう続く。

In addition, the MC-130 would have had enough fuel remaining to takeoff and return to staging base hours away.”

つまりこうだ。「給油後の MC-130J は、離陸して、基地に戻る数時間の航程に足りるだけの燃料を残していた」。地上で給油したから、「離陸して基地に戻れるだけの (to takeoff and return)」という記述になる。空中給油したのなら、もともと飛んでいるのだから「離陸して」は要らない。

でも、一般論として空中給油の必要性について質せば、沖縄タイムスの記事にある、以下のような回答が返ってくることに不自然さはない。

複数の米国防総省筋は沖縄タイムスの取材に対し、空中給油は長距離飛行を伴う作戦に不可欠だが、F35 は空中給油を頻繁に要するなどの指摘がなされており、訓練の必要性が重視されているという。


PACOM の記事を下の方まで読めば、「FARP を使えば、給油トラックがなくても戦闘機に対する燃料補給が可能で、特に遠征先の前線基地では有用。C-130 と 3,000ft の着陸帯があればよい」と書いてある。空中給油なら、こんな文脈の話は出てこないはずである。

とどのつまり、FARP の存在を知らなくて「給油といえば空中給油」と早とちりしてしまったのだろうか。それとも、「F-35B が沖縄で空中給油をやった = 在沖米空軍が関わった」という実績が欲しかったのだろうか。はたまた、関わった部隊に 18th WG (18th Wing) が含まれていたので、同航空団麾下の給油機が何かしたと思っちゃったのだろうか。

その辺の内輪の事情は知らないけれども、これは明らかに誤報。PACOM の記事にある 1 枚目の写真を見れば、地上で機体にホースをつないだ写真に対して「給油中」と書いてあるのだし。

こういうことを重ねると、記者個人も媒体も信頼をなくして、いざというときに相手にされなくなりはしないかと。そんな心配をしてしまった。

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