Opinion : ニュースの尺度 (2018/1/22)
 

少し前には BMD 関連の原稿をやたらと書いていた。「DPRK の関係で、BMD 関連の記事をいっぱい書いてます」と Lockheed Martin の副社長氏に話して、大笑いされたこともあった。

とかいってたら、今度はちょっとした AGM-158 バブルっぽい (また、えらく局地的な話を…)。いうまでもなく、AGM-158B JASSM-ER と AGM-158C LRASM のこと。さらに JSM も加えて三点セット。

この駄文を書くために検索して確認してみたら、F-35 に JSM を載せる話について報じた NHK ニュースは「能力上は相手の基地を狙ういわゆる『敵基地攻撃』の武器にもなりうるため、今後の運用にあたっては専守防衛との整合性がより重要になります」といって締めている。

ま た か。


海自の DDH に F-35B を載せる話が取り沙汰されたときもそうだったけれど、何かあると「敵基地攻撃」「専守防衛」といったキーワードに当てはめて是非を決めようとする報道が目に付く。早い話が、またぞろ報道の内容がテンプレ化している。

つまり「敵基地攻撃能力は持つべきではない」「専守防衛を厳守しなければならない」「攻撃型空母は持つべきではない」という類のテンプレが先にあって、それに照らしてよろしくない、という論調に落とし込むことしかできない。

実のところ、AGM-158 については搭載するプラットフォームをどうするんだという問題があるし、3 機種に共通して「射程が伸びたら、ターゲティングをどうするんだ」という問題も出てくる。それ以外にも問題というか、課題はいろいろあるだろう。

「そんな七面倒くさい話は、読者や視聴者が (求めていない | 理解できない)」という了見なのか、はたまた「そんな七面倒くさい話は、自分らが理解できないから知らん」なのか。

しかし、それをいうなら「専守防衛」や「敵基地攻撃」にしても、実のところはかなりややこしい問題であるぞ ? 「攻撃型空母」なんて、用語の定義から見直さないといけない。

なんにしても、結果として「いつもと同じテンプレに当てはめて締めることしかできない」ということに変わりはない。自分らが信奉する「教典」、過去に活用してきた「勝利の公式」から動けない。

そんな調子で「権力の監視」ができるんだろうかと。そこのところが疑問に思えてくる。ニュースだけでなく野党にもいえることだけど。


実のところ、上で書いた「プラットフォーム」とか「ターゲティング」とかいうのは、どちらかというと専門誌向けの話題。だから、それをそのままニュース番組で取り上げるのが良いかといえば、疑問はある。

ただ、「目の前で起きていることに対して、最適な尺度を考えて評価する」ではなくて「目の前に起きていることに対して、いつも使っている尺度に押し込めて評価する」になってはいませんか、という指摘はしたい。

煎じ詰めると、「ニュース報道のテンプレ化」って、そういうことなんじゃないだろうか。目の前で起きている出来事を、既知の、あるいは既存の「ニュースの公式」に代入して一丁上がり、という。

何でもかんでも「対中牽制」「北朝鮮情勢への対応」にしてしまうのも、最近ではすっかりおなじみのワンパターンのひとつ。すると根っこはおんなじ… かと思ったけれど、こちらは違いそう。(脅威 | 恐怖感) を感じる相手が目の前にいるから、何でも援軍に見えてくる、という図式か。

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