Opinion : 井の中の蛙、海外事情を知らず (2019/04/08)
 

先日、「韓国向けの F-35 はプラモデル、日本向けの F-35 とは別物」とかいう、程度の低い infographic のようなものが出回っているのを知ってしまった。

あほか。そんな、いちいち仕向地ごとに作り分けるほど当事者はヒマじゃない。

かと思えば、こんどは「日本の F-15J は魔改造品なので云々」という話まで流れてきて、またもや頭痛が痛くなった。

ホンマに世界最強だったら、再度の能力向上改修話なんて出てこない。能力的に不足があるから、能力向上改修をするんだろうに。だいたい、近代化改修機でも未だにメカニカル スキャンのレーダー積んでるぐらいだというのに。

もしも、「日本向けの F-35 は優秀、韓国向けの F-35 はポンコツ」なんて言説を唱えたり、信じ込んだりする人が、同じ口で「アメリカ製の戦闘機を輸入すると日本はモンキーモデルを買わされるから、国内開発するべき」なんて主張していたら、極めつけの笑いどころ。


この手の「日本スゴイ」的な言説は、もちろんそれを喜んで信じ込む層がいるわけだけれども、それだけではないハズ。

つまり一方には、そういう層がいることを想定して「こういう言説を垂れ流せば、喜んで受け入れる層がいて商売になるだろうフハハハハ」なんてことを考えている、ガセネタ発信側の人間もいる。

そういう人が、冒頭で触れたような、インチキで程度の低い infographic のようなものを作って拡散すれば、それが琴線に触れて信じ込んでしまう人、さらには拡散してしまう人が現れる。

そういう話に反射的に乗ってしまう人は、「魔改造」と「真っ赤な嘘」の区別をつけられない。「自分が贔屓している○○は常に、最高、最強、無謬でなければならぬ」って、要するに「アイドルはう○こをしない」理論と同じなんだけれど。

実のところ、これはおそらく日本に限った話ではなくて、他国にもいると思う。「我が国の装備は最強、我が国の軍は最強、仮想敵国の競合装備はポンコツ」みたいな言説を垂れ流して商売している人。

でも。これはかなりの部分まで断言してしまっていいんじゃないかと思うけれど、そういう言説を垂れ流したり信じ込んだりしている人って、海外事情を見ていないんじゃないの、とはいってみたい。他国のケースについては材料がないから措いておくとして、、少なくとも日本では。

たとえば冒頭で触れた話についていうと、韓国企業も F-35 のコンポーネント整備担当に名を連ねてるわけ。でも、冒頭で触れたような話を真に受ける人って、そんな話は知らなくても不思議はなさそう。(F-35 について語るのであれば、「Jwings」の「月刊 F-35」をちゃんと読んでよ、と宣伝してみる)

実のところ、その気になれば、海外の業界事情、業界動向を知る手段はいろいろある。昔と違って、今は海外の情報にアクセスするためのハードルは低い。(おカネはかかるけど) IDR でも JDW でもいいけど、業界の専門誌を取り寄せることだってできる。

海外の業界動向、業界事情を知っていれば、無邪気に「日本最強論」に与してなんぞいられないハズなんだけど。でも、心地よく感じられることばかり書いている日本語ソースしか知らないと、ねえ。

さらに気合が入れば、実際に自分で海外に出て行って、現物を見ることだってできる。戦闘機のデモフライトはあくまでデモフライトだから、それだけ見て分かったような気になってもいけない。でも、何も見ないよりは現場・現物を見る方がいいのは事実。そこには、自分が見たことがない世界、知らなかった世界があるのだから。

Avalon で C-2 のデモフライトがあったけれど、それに対して現地の人がどんな反応をしていたかを見る、なんていうのもひとつの情報になり得る。そういうことが結果として、「井の中の蛙」にならずに、視野を広げる役に立つわけ。

ついでに嫌みを書けば、「我が国の○○が最強」と書く人のうちどれだけが、具体的に何をどういう基準でどう比較した結果として最強なのか、と問い詰められて、答えられるんだろうか。


たまたまネタが転がっていたので戦闘機の話を引き合いに出したけれど、他の分野も同じなんだろうなあと思う。戦車でも艦艇でも鉄道でも何でも。

同じように「我が国のこれは優れている」というのでも、他国のそれを知り、相対化した上で評価するのと、それをやらずに根拠なき絶対評価をするのと、どっちかアテになるのかといえば、それはもう書くまでもない。

もっとも、一方では「海外スゴイ、日本ダメ」「海外スゴイ、バスに乗り遅れるな」という言説ばかり展開する人もいて、それはそれで商売になっているのだから、面倒くさいもんだと思う。

そういえば、カメラクラスタでもいるな。自分が贔屓しているメーカーの製品は完全無欠・無謬で、かつ売上一等賞でなければならぬ、という人…

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