Opinion : 大声だけでは受け入れられない (2019/7/22)
 

ここ何年か、国政選挙がある度に「民主主義が何回死んでるんだよ」と思う。007 だって二度しか死んでないのに (←お約束のネタ)。あと、有権者に八つ当たりする人が出てくるのも毎度のこと。

これが、企業が手掛ける商品やサービスだったらどうなるだろう。乾坤一擲、力を入れて売り出した新商品や新サービスが、みんな大当たりするとは限らない。小当たりすればまだマシで、ときには大誤算の大空振りということもある。

そこで企業側の関係者が「これを買わない消費者はアホだ」なんていう趣旨の発言をすれば、大炎上間違いなしである。

当事者ではなくて、周囲にいるファンや信者 (あえて分けて書く) が似たような発言をすることもあるかも知れないけれど、それだって「痛い人だ」と思われるんじゃないだろうか。

とどのつまり、人やモノやサービスや組織をいかにして不特定多数に向けて売り込むか、というところでは、商売も選挙も似たところがあると思うのだけど。そこでなぜか、選挙に限って、うまく行かなかったときに有権者 (商売でいえば買い手にあたる) に八つ当たりする声が目立つのは面白い傾向。

いっちゃなんだけど、物事が思い通りに進まなかったときにどんな態度を示すかって、すごく人間性が出ると思う。気をつけないと。


といったところで話はいきなり変わって。

不特定多数に向けて売り込まれるモノのひとつに、新しい技術や、新しいカテゴリーの製品・サービスがある。ことに、とある分野の関係者に顕著な現象だと思っているのだけど、「新技術・新製品バンザイ、これまで使ってきた古いモノは捨ててしまえ」と極端に走る人を見かけることがある。

また、そういう人に限って声がデカかったり、妙に押しつけがましかったりするのだけど。でも、それでは結果として余計な摩擦を引き起こして、うまくいきそうなものもうまくいかない、なんて事態になりはしないかなぁと。

選挙に負けた野党や野党の支持者にも共通する話だけど、大声をあげて連呼し続けるだけではダメなんである。声を上げるにしても、適切な場とタイミングってものがあるだろうに。

特に組織の中にいる人だと、組織を動かさないと目的を達成できない。そこで大声をあげるだけでは、ウザがられて閑職に回されるか、相手にされなくなるのが関の山。組織の中に、とりわけ上層部に味方を作っていかなければならない。それもやり方を工夫して。

米軍を例にとると、Red Flag 演習を立ち上げたときとか、対テロ特殊作戦部隊を立ち上げたときとか。LWF 計画もそれに含めていいだろうか。従来にない、新しい仕組みや組織や装備を持ち込もうとすれば、頭を使って味方を増やさなければならない。

米軍だと、議会を味方に付けることも大事になる。なぜかといえば、最終的にどこの分野にどれだけ予算を付けるかを決めるのは議会だから。そういう「組織が動く仕組み」を知り、どこをつつけばうまく行くかを考えることだって大事。


ゲームチェンジャーになり得るような新技術・新製品は往々にして、10 人のうち 2 人ぐらいしか賛同しないものであるわけだけれど、そこで妙な選民意識が頭をもたげて、賛同してくれない、他の 8 人を見下すようなことになれば、それこそ話は壊れてしまう。

少し前にも書いた話だけれど、ときにはじっと頭を下げてタイミングを伺い、「ここぞ」というところで一気に仕掛けるようなことだって必要になる。それができずに、明けても暮れても大声を上げ続けるだけでは、却って味方が減る。まわりの人を見下せば、さらに味方が減る。

「自分が正しい」という信念や自信を持つことは大事だけれども、それが選民意識に変質すれば、味方を増やさなければならないときに味方を減らしてしまう。「敵の敵は味方」ならまだしも、「敵の味方も敵」「敵を敵視しない奴も敵」と、どんどん敵を増やしても得るものなし。

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