Opinion : 立場が変わると見えてくるもの (2019/9/2)
 

日本に生まれ住んでいて、「これが当たり前だ」と思っていると、特に意識することなくフツーにできてしまうこと。それが、外から見ると「すっごくハードルの高いこと」だったりする場面がある。

たとえば列車に乗るのに、自分だったらサクッと切符の手配を済ませてしまうし、駅でオタオタすることもないけれど、普段はクルマでばかり移動している人だと、どうだろう。

「乗車券」と「特急券」が必要だとか、在来線と新幹線の乗り換え・乗り継ぎだとか、号車の並びや見分け方だとか。実は、「知らない人にとっては意外とハードルが高い話」かも知れない。

しばらく前に JAL の A350-900 について書いたとき、個人用画面の席番表示をすごく褒めた。この、飛行機の席番だって、乗り慣れない人にとっては謎である。実際、自分の席がどこの列にあるか分からなくて、ウロウロしてしまっている人を見かけたこともある。

列車なら、列のナンバリングは A/B/C/D/E と決まっているけれど、飛行機はそうじゃない。「6 列しかないのに K 席って何 ?」となった人、絶対にいないとは断言できない。

おっと、昔の小田急ロマンスカーは席番の振り方が違ってたっけか。


立場をひっくり返して、自分が外国で列車やバスに乗る場面を考えてみればいい。今だったら、どこの事業者も Web サイトで情報提供している分だけ、昔よりもマシになったと思うけれど。それでも分からないこと、ハッキリしないことはいろいろある。

紙の切符を買って乗る方法しかなければ、ある意味分かりやすい。でも、IC カードになったり、スマートフォンで決済までやれるようになったり、割引制度がいろいろできたりすると、たちまち複雑怪奇になる。

細かいところだと、自動改札機の通り方が分からなかったり (ワシントン DC で実際に経験した。車椅子対応ゲートだったので、投入口の位置が違っていた)、少額の購入だと高額紙幣を受け付けなかったり、なんてことも起きる。

そんなもん、実際に現場に行ってみないと分かりませんがな。

もっと細かいところだと、自分が乗るべき列車を見つける方法が「行先」だけだったり、「発車時刻 + 行先」だったり、「列車名 or 列車番号 + 行先」だったりという違い。そもそも、駅の構内で発車標を見つけるという課題もある。

でも、そういう経験をすると逆に、「では、日本の公共交通システムを外国人から見たら、どうなるんだろ ?」という、違う視点から見るベースができる。

それでも、大都市圏で電車に乗る分には、「とりあえず交通系 IC カードを買ってチャージしとけば OK」といえるようになった分だけ、まだしもマシ。その昔、「パスネット」で JR に乗ろうとして、自動改札機で弾かれている外国人に会ったことがあったと記憶しているけれど、今はそんなことは起こらない。

それよりも、バスはハードルが高いかも知れない。均一制だったり従量制だったり、前乗りだったり後乗りだったり、先払いだったり後払いだったり。日本で生まれ育った人でも、知らない土地に行くと苦労する。

最近は、交通系 IC カードで済むバスが増えてきてはいる。でも、「乗るときと降りるときの両方にタッチしないといけない」だったり「乗るときだけタッチすれば良い」だったりする。運賃制度との絡みがあるから仕方ないにしても、これはこれでややこしい。

もっとも、某国のように「乗ってカードをタッチする際に、目的地を指定せよ」というやり方は、日本では時間がかかりすぎて無理そう。それなら乗車時と降車時にそれぞれタッチする方がマシ。かように「お家の事情」も影響する。


別に、いわゆる「出羽守」になる必要はないのだけど、「現状墨守・唯我独尊」になるのも問題はある。現状の何が良くて何が良くないのかを知るのに、他所のやり方を見ることは、無駄ではないと思う。それに、自分が他所の国に行って苦労してみると、相手の立場になって物事を考える訓練になるし。

なにも公共交通の話に限ったことではなくて、他の分野にもいえること。違う世界があることを知って、自分の中の引き出しを増やすことは、知らず知らずのうちに役に立つと思うから。

なんでまたぞろ、こんなことを書いたのかといえば、先週にスウェーデンに行ったとき、まさに自分が「外国人」の立場に置かれて、いろいろバタバタしたから。

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