Opinion : ネット予約考 (2020/2/17)
 

世間が大騒ぎしているとき、安易にそれに乗っかると自分が壊れそうな気がしたので、まるで違う話をひとつ。この話は前に書いてたかなあと思ったけれど、「ネット予約」で過去の記事を grep したら出てこなかった。意外。

自動改札機への QR コード導入 (この話は以前、EX-IC やスマート EX の関連で「新幹線 EX」で記事を書いたとき、JR 東海さんでいろいろ伺ってきたことがある) に絡んで出てくるのが、いわゆるインバウンド対応の話。ただ、単に自動改札機の話だけしても始まらなくて、その前段階の話から必要でしょ。というのが今回のお題。


磁気券の場合、予約を入れただけでは乗れなくて、とにかく磁気券を発行しないといけない。だから駅の自動券売機で、予約番号を入力するとか、予約時に指定したクレジットカードを読み取らせるとかいった話になる。自動券売機とかマルスの端末機とかいった、専用の機械がないと発券できないから、そういう話にならざるを得ない。

ところが QR コードの場合、事情が違ってくる。国内線の飛行機で使う e-チケットの控えなんかもそうだけど、データだけ受け取っておいて、手元のプリンタで印刷したものを使える。

旅行会社でツアーの発券をすると、最初から控えの印刷もワンセットになって出てくるけれど、そうでない場合でも公式 Web サイトの予約確認画面から印刷できる。あと、近年だとスマホの専用アプリでもって画面に QR コードを表示させる手もある。

搭乗ゲートで QR コードの読み取りに手間取って、エラーが出て渋滞を引き起こすケースをしばしば見かける。それを見ていると「全面 QR 化は無理だな」と思うけれど、これはまた別の問題。

と、ここまでは前置き (長い前置きだ)。

昨年、スウェーデンに行ったとき、基本的には事前にネット予約でチケットを買って行った。一部、駅の券売機やスマホを使ったケースもあったけれど。このうちネット購入のものだと、QR コード付きで出てくる。駅に改札口はないけれど、検察に来た乗務員が端末で読み取ることがある。

実は、スウェーデンの鉄道では e-チケット化されてるんだそうな。これが効くのは遅延補償請求のときなんだけど、それは措いておくとして。

そのネット予約で感心したのは、「会員登録」が要らないこと。そう、インバウンドをいうなら QR コードだけでは不足で、そこまでワンセットにしないと意味がない。継続的に長く繰り返し利用するのならともかく、短期訪問で、いちいち会員登録なんてやってられっか。

会員登録した挙句、そのアカウントを使わずに放置していれば、それこそ不正利用の原因になりかねない。そこで会員登録の代わりに、クレジットカード会社の本人認証サービスを使う。

スマホを使う場合も含めて、ネット予約でチケットを買うときには、カード会社の本人認証サービス用パスワードを入力する。それによって、他人が名前を騙って不正購入する事態を防ぐ。これで、覚えるべきパスワードがひとつ減ることになる。


日本の場合、改札を通らないとホームに出られないから、物理的な認証手段が要る。磁気券だと発券の手間がかかるし、IC カードだといちいち買ってもらわないといけない。データを送って印刷すれば済む QR コードがいちばん楽。

ただし、不正に繰り返し利用されたらたまんないから、QR コードにユニーク ID を埋め込んでおいて、一度改札を通過した ID は、次からハネる必要があるだろうけれど。

そこに、いちいち会員登録しなくても使える仕掛けが加わって初めて、「訪日外国人向きのネット予約システム」が完成するんじゃなかろうか。もちろん、継続利用してポイント サービスの恩恵にあずかりたいなら会員登録する必要があって、それはスウェーデンでもそうなってる。でも、短期訪問の外国人にはそんなの関係ない。

何かキャッチーなアイテムが出てきたときに、とりあえずそれに乗っかることばかり考えて、総合的な問題解決を忘れる。そういう事態は避けたいもの。

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