Opinion : 素直に復興を喜べない人達 (2020/3/23)
 

三連休の間はもっぱら仕事をして、週明けに石巻貨物の撮影と常磐線の乗り直しをワンセットで片付けてきた。こんな真似ができるのはフリーランスのありがたいところだけど、祝日に疎くなるという問題もある。

それはそれとして。原ノ町までは数年前に乗り直しているので、常磐線の北の方を訪れるのは、二度目。しかし現在でも、車窓に更地が広がっていたり、新しい建物ばかりが整然と並んでいたりするのを見ると、胸がつぶれる思いはある。

4 年半前に常磐道を走っているけれど、あれは常磐線より内陸部を走っているので、被災エリアの状況はよく分からなかった。

前から書いていることで、「がんばろう○○」は止めようよ、頑張る前に、まずくじけないようにするだけで大変なんだから、というのがある。その思いは今も同じ。とはいえ、少しずつでも元の暮らしを取り戻そうとして再建を進めている様子を見ると、人間の力ってすごいと思う。


そういえば先日。この常磐線の全線再開を報じた新聞社の記事に、立入禁止か何かの看板を手前に持ってきた E531 の写真を使ったものがあって、物議を醸していた。さらに撮った御本人が「ちゃんと電車にピントが合っている」と、ピントの外れた釈明をしたものだから、「そこじゃないだろ」と却ってムッときてしまった。あの釈明は逆効果だったんじゃなかろうか。

再建を進めよう、暮らしを元に戻そう、としている横で、行先に「品川」と書かれた列車が走り出すことの心理的な効果についても、ちょっとは考えたらどうよ ? と、その「品川行き」の特急に乗りながら思った。

原発事故があって、それがまだ後片付けの最中で、立ち入りに制限がついているエリアが残っているのは、紛れもない事実。でも、できるところから少しずつでも元に戻そうとする努力が行われている横で、「まだ駄目なところがあるじゃないか」といいたてるだけの人を見ると、ただ単に足を引っ張っているようにしか見えない。

そりゃまあ、「世の中には良くないことがあって、それを暴いて書き立てて世論を動かすのが自分らの仕事」と思っている (らしい) 社会部マインドからすれば、「まだ良くないことが残っている」といいたてる絶好のチャンスに映ったのかも知れない。

でも、ものには言い方、やり方ってものがあるでしょ。理想論ばかり振りかざして「理想通りではないから駄目だ」と否定的なことばかりいう。これは、できるところから少しずつでも立て直そうとしている人から見たら、単に足を引っ張るだけの人にしか見えないのと違う ?

「原発が危険な存在だと言い立てるためには、原発事故に見舞われた福島県が復興して、元の、普通に人が暮らせる状態になってくれては困る。人が住めなくなった不毛の大地でいてくれないと困る」なんて手合になると、もう論外。そこに住んでる人のことなんて考えちゃいないんだから。

これはもう、原発の是非論とは別次元の問題。反対運動をするのに道を踏み外して、新たな犠牲を生み出すようなことばかりしてどうするの、という話にほかならない。

現在進行中の COVID-19 騒動もそうだけれど、事件や事故や災害や疫病みたいな各種の災厄って、それぞれの人の人間性や本性を露わにするよね、という認識を新たにしている。COVID-19 だって、あれを単に「嫌いな誰かを叩く道具」ぐらいにしか思っていない人はチョイチョイいる。


と、つい肩に力が入ってしまったけれど、その話はここまでとして。

常磐線のいわき以北の区間に乗ると、単線だし、ロングレール化されていないからジョイント音が規則正しく響くし、スピードもそんなに出ていない。乗っているのはピカピカの E657 だけど、雰囲気は昔の鉄道旅行みたいだった。

これが E531 や E721 の普通列車だったら、ますます昔の鉄道旅行っぽくなるかも知れない。折を見て試してみようかしらん。今回は、泊まりのつもりだった日程を強引に日帰りに圧縮したせいで、特急で通り過ぎてしまったけれど。

しかしよくよく考えてみたら、自分が乗った 26M は今回の運行再開区間、とりわけ浪江から広野にかけて、各駅ではないものの、それに近いぐらいマメに停車していた。

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