Opinion : 米大統領選という名の代理ネットバトル (2020/11/9)
 

またぞろ "The Florida recount" の再来になるかどうか知らないけれど (20 年前に渡米したとき、これの真っ最中でニュース番組が大騒ぎだった)、先日に米大統領選挙があった。

そして「他国の大統領選挙で、なんで日本でこんな大騒ぎになってるんだ」との声。確かに、重要な結びつきがある上に同盟関係にもあるから、その国のトップが誰になるかは重大関心事ではある。ただ、日本の市井… というよりネット住人が騒いでいたのは、たぶん別の理由じゃなかろうか。


それはつまり、「大統領選は一種の代理戦争じゃないか」ということ。一般的傾向として、左右でそれぞれ「バイデン支持」「トランプ支持」に分かれる傾向があるみたいだけれど、要するにこれは、対立候補を支持する勢力を叩くための代理戦争だろうと。

つまり、「やーい、トランプ負けたじゃないかネトウヨざまぁ」あるいは「やーい、バイデン負けたじゃないかブサヨざまぁ」といいたかっただけじゃないかと。

つまりは代理戦争だから、代理戦争が成立しないと、こんなに熱くならない。同じように日本の政治・経済・安全保障に大きく影響する国のトップ選びでも、たとえば中国の場合に、こんな熱くなった人がいたっけか ?

しかし、ニュースで頻出した各地の州名。それぞれの州がどこにあるか、どんな場所か、まで分かってて熱くなってた人、どんだけいるのかなぁ。なんてことを思ってしまった。あと、米大統領選を構成する、ちょっと複雑な仕組みまで分かった上で熱くなってたのかなぁと。かなり疑問だと思う。

実のところ、問題なのは勝ち負けという結果であって、過程には大して興味ないのかも知れないけれど。

ついでに書けば、代理戦争としての勝ち負けが最大の関心事だから、その結果としてどういうことになるかについては、あまり関心はないんじゃないの。と思わなくもない。たぶん、多くは「民主党なら平和的だろ」ぐらいの了見ではないかと。

でも、これはアメリカに限ったことではないけれど、「○○党だからこうだ」なんて単純に決められる話でもなかろうに。「敵の敵は味方」理論に囚われていると、そんなことまでいちいち考えていないのかも知れなくて、単に「敵の敵だから良い」なんだろうか。

たまたま今回は「アメリカ大統領選挙」という大ネタだったけれど、それ以外でもあちこちに、似たような「代理戦争」の事例はありそう。極端な話、「○国と△国の物理的な戦争」だって、日本のネット界隈における代理戦争のネタにされるやも知れず。


「敵の敵は味方」理論でバイデンを担ぐのは個人の自由だけれど、勝手に期待という名の妄想を膨らませておいて、後になって「裏切られた !」って騒ぐ人、きっと出てくるんじゃなかろうか。

だいたい、アメリカの大統領が強大な権力を持っているといっても、議会を味方につけないことには、どうにもならない。なにせ、大統領が「要らない」といった原子力空母の建造予算を、議会が国防歳出権限法にねじ込んだことまである国である。

最近のネタだと、UAE 向けの F-35 輸出。大統領は前向きだけれど、議会には「待った」をかける声もある。アメリカの武器輸出管理プロセスを見ればお分かりの通り、国務省に加えて議会がウンといわないとオーケーは出ない。

なんだけれども、勝手に期待という名の妄想を膨らませる人に限って、そんな話は考えもしなくて、「大統領の一存で物事が進む」なんて思っていそう。

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