Opinion : こだわりすぎが没落の原因に ? (2020/11/16)
 

ニコンが赤字転落、「カメラ不振」で迎える難所 (東洋経済オンライン)

この記事からちょっと引用。

>社内では世界を席巻した一眼レフ志向が根強く

あー。これは、自著で書いた「成功体験が次のゲームチェンジの邪魔をする」というやつではないだろうか。社内のことは部外者ゆえ、真相はよく分からないから「もしかして」という但し書き付きで。

ただしニコンの場合、内輪だけでなくユーザーにも、ある種の「伝統墨守」的なこだわりが強いように思える。「ニコ爺」なんて言葉があるけれども、いかにも頑固で変化を嫌がりそうな雰囲気を持つ言葉ではある。もちろん、全員が全員、そうだなんていわないけれど。

その昔の、「日産スカイラインは丸目テールランプとサーフラインがなければ許さん」みたいなこだわりと、似たものがありそうだなぁ。という、外から野次馬的に眺めたときの勝手な偏見。でなきゃ Df みたいな商品の企画は出てこないでしょ。


以前に、熱狂的でうるさいユーザーがいると、却ってメーカーや製品を滅ぼす原因を作ってるような気がする」という趣旨のことをどこかで書いたような気がする。

一見したところでは、熱狂的なユーザーがいれば買い支えてくれそうなものだけど、絶対数としてはそれほど多くならない。そして実際のところ、変化を拒むことが多くなり、却って足を引っ張る場面が多くなりそうでもある。

変化に対する抵抗といえば、身近なところにひとつ事例があった。Microsoft Excel のメニュー体系は、Ver.5 と Excel 2007 と、二度の大変化を経ている。よくよく考えれば、そのリボン UI が世に出てから、もう十数年も経つのか。

Ver.5 でメニュー構成がごっそり変わったときも、リボン UI が出てきたときも、「あのアイテムはどこに行ってしまったんだ」と迷子になったユーザーが出てきたであろうことは、想像に難くない。でも結局は時間が解決してくれて、なんとなく馴染んでくる。

ただし、Ver.5 では設定変更で旧メニューに変えることができたし (ただし後日にやめた)、リボン UI になった後も Ver.5 メニューのアクセス キーは生きている (これは今も同様)。

つまりこれは、「変化を促すけれども激変緩和措置は講じる」ということで、理に適ったアプローチ。慣れたユーザーほど変化に抵抗するものだから、こういう仕掛けが必要になってしまう。もっとも、カメラの UI や設定メニューで同じことをするのは、非現実的であろうけれど…

Microsoft は Apple みたいな宗教団体と違うので、「昨日までのこれはレガシーだから捨ててください。今日からはこれです」といってもユーザーがついて来ない。


で。この「過去の成功へのこだわり」とか「○○とはかくあるべし」みたいなこだわりが、結果として阻害要因になりはしないかと真剣に心配しているのが、空自の次期戦闘機。その種のこだわりは、こちらから新たなゲームのルールを仕掛ける邪魔になる。

そして結局、「和製ラプターができました、めでたしめでたし」なんてことになりはせんだろうな、と。本当にそんな調子になってしまったのでは、空の護りが危ういと思う。

この「格闘戦至上主義」もなんだか、ひとつの宗教になりかかってるように思えて、個人的には不安がある。

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