Opinion : 保存保存と簡単にいうけれど (2021/3/22)
 

JR グループでダイヤ改正があると、それに合わせて新たに戦列に加わる車両がいれば、運用離脱する車両もいる。首都圏では 185 系の定期運用が終了するというので大騒ぎだったみたいだけど、個人的にはソッポを向いていたところがある。もちろん、これは「個人の好みの問題」ではあるのだけど。

ただ、斜めストライプに戻した車両が 1 編成現れたときには大騒ぎになったのに、みんな斜めストライプに戻ったら再度見向きもされなくなり、そして引退だとなったらまた大騒ぎ、という様を見ていると、なんか釈然としない。

あまり話題にはならなかったけど、九州では 783 系が大挙して運用離脱したようで、定期運用が残っているのは「みどり/ハウステンボス」用だけになってしまった模様。昨年に何回か乗ったけれど、確かにええ加減、古さが目立ってきていたからなぁ…

で。783 が運用離脱と聞いて「去年のうちに、撮ったり乗ったりしておいて助かった」と思ったのはホント。


これらに限らず、たとえば F-4 ファントムでも何でも、引退するというと「保存して欲しい」という声があがるのはお約束。でも、「保存して欲しい」とはいうけれど、そのために自分が何か手を動かそうという人はあまりいない様子。

乗用車ぐらいならまだしも、鉄道車両や飛行機みたいなデカブツになると、まず置く場所を確保するだけでひと騒動。首尾よく場所を確保できても、そこまで運ぶのがまたひと騒動。そして、終の棲家を見つけて保存できたとしても、その後に良好な状態を維持するのはもっと大変。

いっちゃなんだけど、ローカル線廃止問題と似たところがあって、いったん「残った」となるとそれで安心してしまい、やがて関心が薄れてしまう傾向があるように思う。それでボロボロになった姿をさらし続けるのと、きれいな状態でバラされて記憶に残るのと、どっちが幸せなことなんだろう。

だいぶ前にどこかで書いた記憶があるけれど、首チョンパされてしまった東急 5000 系青ガエルみたいな、悲惨な事例もある。正直いって、車体を途中で切られて台車をもがれた状態で駅頭に晒され、適当な使い方をされるぐらいなら、解体した方がマシだったんじゃないのかなぁ、あれ。

国の機関でも民間企業でも、何かを保存すると決めて、費用をかけて終の棲家を用意して維持し続けるのは、それがなにがしかのメリットをもたらしてくれる、という目算があったときじゃないだろうか。

近く、小田急が「ロマンスカーミュージアム」を開設する。これは「小田急といえばロマンスカー」というイメージがとても強く定着していて、保存・展示することにメリットを見出せたから、という一面もあるんじゃないだろうか。

うまいことやったと思ったのが、セントレアの「FLIGHT OF DREAMS」。単に 787 の初号機を保存するというだけでなく、物販や飲食などの店舗を同居させて、しかも LCC ターミナル向けの飲食施設を兼ねさせたところ。

COVID-19 のせいで LCC 需要が吹っ飛んでしまったのは大誤算だろうけれど、それはまた別の話。

逆にいえば、そうやって需要を成り立たせる工夫ができると踏んだからこそ、ああいう施設が成り立つという目算ができたのでは。787 の初号機を保存しますというだけでは、たぶん、経営的に成り立たない。


それで何をいいたいのかといえば、単に「保存して」というだけではなくて、保存が実現した後の継続、維持管理、費用と人手の確保。そこまで視野に入れないと、きっとどこかで破綻するんじゃないのかなということ。

保存の実現はゴールじゃなくて始まり。その先まで見据えて動くのでなければ、安易に「保存保存」というのはいかがなものかと思ってしまう次第。

だから自分は、保存を求めるよりもむしろ、推しが引退する前に可能な限り、乗ったり撮ったりして記憶に留める。そして撮るなら、推しがいちばん輝いて見える場面を追求する。そういう主義。

Contents
HOME
Works
Diary
Defence News
Opinion
About

| 記事一覧に戻る | HOME に戻る |