Opinion : 見えないもののコスト (2021/9/27)
 

昨日、「かっぱ寿司」で 1 日限りの半額キャンペーンをやったら、人が集中して、どえらい待ち時間になったとのこと。ウェイティング リストに名前を入れていったん離脱、携帯電話か何かで呼び出しをかけてくれるのならともかく、現場で延々と待っていたのでは、時間のロスもいいところ。

それも 20 分や 30 分ならともかく、何時間も待つ羽目になったら、その時間のロスの方が、お寿司の半額よりも高くつくのではなかろうかと。そんなことを思ってしまった。

つまり、「回転寿司のお値段」という目に見えるコストには意識が行くけれど、「待ち時間」という見えないコストには意識が行かない。そういう話ではないかと。「時間をおカネで買う」という考え方があるけれど、それの反対。


しかしよくよく考えると、見えないコストに意識が行かないのは、なにもこの件に限った話ではなさそう。前に某所で仕事がらみの話をしていたときにも、「眼に見えるハードウェアにはおカネを出すのに、眼に見えないソフトウェアにはおカネを出し渋る」という話が出たことがある。

「コンピュータ、ソフトなければただの箱」なんだけれども、眼に見えるコンピュータと違い、眼に見えないソフトウェアの価値がなかなか認められない。最近のウェポン システムもまた「ソフトなければただの箱」だけれど、各国の軍当局は、そっちの方のおカネを出し渋っていないだろうか。

そういえば、さまざまな分野におけるサービス業務の類も、形がない価値のひとつ。この場合のサービスとは、「タダでつけときますよ」という意味のサービスではなくて、接客対応などの業務という意味。これだってひとつの価値だけれど、形がない。

アメリカに行くとチップの習慣があって、なじみがない日本人にとっては勝手が分からないことおびただしい。「えーと、この場面ではどれぐらいのチップを置いておけばいいんだろうか (?_?)」といって悩んでしまう。でも、「サービスに対価を払う」という意味では筋が通った習慣、という見方もできる。

あと、自分みたいに一人で社長と総務と経理と営業と現場実務をかけ持ってるような立場だと、ことに事務系のお仕事を合理化・迅速化するのは重要課題。「同じことを 3 回繰り返したら自動化を考える」なんていっているけれど、ホントに 3 回かどうかは別として…

とはいえ、マクロでもなんでも、使えるものを駆使して手間を省くとともに、間違いも減らす。それをやらないと時間ばかりかかってしまい、見えないコストが増える。毎日格闘している DoD Contracts なんか、(相手がかなりの部分、定型文だからできることではあるのだけど) 秀丸のマクロを駆使して前処理しているから、データ整理が楽になっている部分はある。

いつもやっているわけではないけれど、納品する原稿の整形にマクロを駆使したこともある。本の内容によっては、原稿をまるごと Access データベースにぶち込んで、Word の VBA マクロでデータベースを叩いて所要のテキストだけ抽出・ソートして本文中に貼り付け、なんてやったこともある。

この方法のいいところは、レコードごとにステータスをつけておくことで、「載せる項目」「載せない項目」の区別を容易にできること。しかもクエリを叩いた時点でソートするから、後から項目が増えても出力時の並び順は狂わない。

この辺の工夫って、つまりは時間という見えないコストを抑制するということ。それで浮いた時間は、他の仕事にも余暇にも家事にも使える。


そういえば。職場における業務効率化のために Excel なんかで VBA マクロを駆使した人がいたら、なぜか顰蹙を買ったり禁止令が出たり、といった類の話をときどき聞く。「苦労自慢」の風土からすると、手間暇かけるのが正義で、ツールを駆使して迅速に片付けてしまうのは悪に見えるということなんだろうか。だとすれば、そんなマインド セットは組織の競争力を下げるだけである。

ただ、人が変わっても仕事を止めない、は組織として重要なことでもある。だから、業務効率化のためにマクロを書くなら、コードの中に適切なコメントを入れるとか、申し継ぎができるようなドキュメントを用意しておくとかいう配慮も必要じゃないかとも思う。

F-35 用のソフトウェア開発者向けガイドラインでも、コメントを入れることの重要性や、トリッキーなコードを書かないことの重要性が指摘されていた。これもまた、後任者に「時間という見えないコスト」をかけさせないための配慮。

だいたい、下手すると書いた本人がコードの中身の詳しいところを忘れてしまうこともあるのだから (!)

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