Opinion : 人の動きが戻ってきた (2021/11/15)
 

土曜、日曜と四国方面にお出かけしてきた。行きも帰りも、新幹線は満タンとまでは行かないものの、(自分が乗ったハコは) 七・八割ぐらいの乗りではあったし、「自由席で立席が出ているから、席に荷物を置かないで」なんて放送、久方ぶりに聞いた気がする。

それなりに乗っていたのは、四国も同じ。今回は切符の関係もあり、四国で乗った特急はすべて自由席で済ませたけれど、そろそろ「自由席でも余裕余裕」なんていっていられなくなってきている感があった。

まあ、空いている方がありがたい場面がないわけではないにしても (こら)、やはり交通機関は賑わっていてナンボである。昨年、「北斗」の自由席に乗ったら、自由席車 1 両に数名しか乗っていなくて「げげっ」となったものだけど。


さて。最近はどうだか知らないけれど、ひところ「これからはみんなテレワークになって、人の移動なんて少なくなるのだから、リニアは要らねぇ」みたいな主張を展開している人が垣間見られた。

身も蓋もないことを書いてしまえば、この手の人はおそらく「リニア反対といいたいがために、都合の良さそうな話をつまみ食いしている」か「流行りのテレワークを推す、時代に対する感度が高い自分」をアピールしたいのか、そのどちらかが大半を占めるのではないか。

なにも COVID-19 がらみに限らず、一般的な傾向として、「今の状況や傾向は、今後もずっと続く」と考えてしまいがち。以前にも何かで書いたような気がするけれど、景気が下り坂になれば、「今後も下降線をたどるだろう、もうおしまいだー」となる人がいるし、逆もまたしかり。いま勢いがある企業や組織や国や個人については、今後もその勢いがずっと続くと思ってしまうし、逆もまたしかり。

でも、実際にはたいていの場合、そんなことにはならない。上がったり下がったりするのが世の習い。COVID-19 の感染者数の数字なんか、その典型じゃないだろうか。

それだけに、新規感染者の絶対数が一時と比べて激減した現状を見て「今後もこのまま進むに違いない」と思ってしまう人がいそう。そういう人ほど、ちょっとしたリバウンドでも大騒ぎしてパニクると思われる。たぶん、感染者が多かった時期には「もっと増えるんじゃないか」といって不安がってたんだろうし、ほっとけ。

ともあれ現実には、「人と会いたい」「自分の眼で見たい」という欲求は止めようがないから、動けるとなれば、お出かけする人は増える。リモートで見て、それで満足できるかといえばそんなことはない。代案はあくまで代案。だから人の流れが戻ってきて、新幹線の駅や車内が混み合うようになってきたと。そういう話じゃないのかしらん ?

個人的に仕事に関わる部分でいうと、オンライン記者会見というやつ。話をする側からすれば、ライブだろうがオンラインだろうが差は少ないと思うかも知れない。でも、オーディエンスの反応をダイレクトに感じられるというライブの利点は、オンラインでは再現できない。話を聴く側からすると、どうも、オンラインではツッコミを入れにくいという難点があると感じる。

ライブで記者説明会やインタビューをこなしてきた経験が、そういわせるのかも知れないけれど、やはり「ライブの方が仕事をしやすい」とは思った。

ただ、人の動きが完全に元通りになるかといえば別の問題で、中には「必ずしも現場に出向かないといけないわけではない、と分かった」という話もあるはず。すると、COVID-19 の影響が皆無ということはないわけで。それだからこそ、この騒動をひとつのトリガーにして、事業のシステム チェンジを加速しようとしている鉄道事業者もある。それは正しい認識だと思う。

「人の動きがなくなる」も、「人の動きが完全に元に戻る」も、「いちゼロ」で物事を考えている点は同じ。例によって例のごとく、この件も落としどころは中間に来るんじゃなかろうか。


といっても、「パンデミックの最中にどんな反応をしていたか、忘れちゃいないからね」というのもまた、当然の反応ではあろう。

立場上、県民を護らなければならないからといって、他の都道府県の住民をエンガチョ扱いするような言動をした知事がいる土地には、ちょっとおカネを落としたくないなあ… と思う人がいても、それは無理からぬ話。案外とそんなところで、今後の地域別の人気・不人気に影響が出るやも知れず。

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