Opinion : ここ何年かの変化を振り返ってみて (2021/12/27)
 

年末になると、さまざまな分野で「今年一年を振り返る」みたいなことをやり始めるのはお約束。それじゃあ、うちでもやってみようか。と、珍しく横並び意識を発揮しかけたけれど。しかしそれよりも、スパンを長くとって「最近の変化を振り返る」の方が良さそう。

フリーの物書き業に転じたのは 1999 年の春。それからしばらくは IT 系の物書きとしてやっていたけれど、状況とタイミングと御縁に恵まれて、2000 年代の末期あたりから、軍事・航空・鉄道方面に方向転換して現在に至る。ただ、技術解説を初めとする「専門家とフツーの人の間の通訳」という基本理念は、変わっていないつもり。

ところが最近、少し仕事の方向性が変わってきているようにも思える。技術解説系の話を完全に放り出してしまったわけではなくて、それは依然として重要な柱。ただしそれと平行して、「技術・製品・サービスをどう使うか」みたいな理念の話であるとか、それを実現したり具体化したりするための組織やマネージメントの話であるとか。そんな話が増えてきているような。


そのきっかけがどの辺にあったか。自覚しているのは、日経 BP の「ゲームチェンジングテクノロジー」関連のお仕事がトリガーになっている、ということ。幸いにもお声がけいただいて、この仕事に関わって書いたり喋ったりしているうちに、以前から自分の中でモヤモヤしていた問題意識が明確な形になってきた。と、そんな話なんじゃないかと思っている。

それより前から、「部分最適よりも全体最適」ということはいっていた。そして今年、インタビュー取材の席で「部分の最適化は全体の悪夢」という言葉にも接した。ただ、全体最適化というだけなら簡単だけど、「具体的にどうやって ?」という疑問は出てくる。

そこにひとつ筋が通ったのが、ここ数年ほどの話なのかなと。それは「最初に、目指すべき方向性、ビジョン、大目標」を明確に掲げることが重要である、という話。

会社の組織改革に際して、たとえばカンパニー制みたいな形で複数の独立採算組織に分割する、という手法がある。組織を小さくして小回りが効きやすい形にするとともに、意思決定を迅速化したり、独立採算とすることで経営の意識を高めたりという話になる。と理解している。

ただしそこで、個々のカンパニーが部分最適化の隘路に入り込んで全体最適を忘れると、複数のカンパニーを束ねる会社全体としては、バラバラな形になってしまう。だから、個別のカンパニーとしての業績アップを考えると同時に、「複数のカンパニーを束ねる会社全体としてどうか」という視点も忘れないようにしないと、収拾がつかなくなる。これは会社としての全体最適化。

大きな方向性、ビジョン、大目標を高いところに掲げた上で、足元の課題解決をしっかりやっていく。ただしそこで、「方向性、ビジョン、大目標」というベースラインを常に意識していかないと、視野狭窄になってドツボにはまる。「どの部分に寄せて全体最適化を図るか」が分からなくなるから。

もっとも、遠くばかり見ていても、それはそれで自分の足に蹴躓くようなことになりかねないのだけど。


思えば、過去 9-10 年のサイクルで、仕事に変化の波が来ていたことになる。単に「9-10 年経ったから方向性を変えましょう」なんていうのはアホの極みだけれども、たまたま、従来はそういうスパンで方向性を変えるきっかけが来ている、ということなんだと思う。結果論。

そして、お仕事などを通じて見聞きする話に依拠すると、ことに日本の安全保障や防衛力整備がらみのあれこれについて、どうも「部分の最適化は全体の悪夢」的な話を耳にする機会が多い。よりによって、日本を取り巻く安全保障情勢がヤバくなってきている、この時期に。

ただ、自分の仕事はあくまで物書きだから、著述を通じて「これはまずいよ、おかしいよ」といっていくのが本分 (無論、SNS なんかでそれをやるのはお門違い)。この辺が、今後のお仕事に置ける、ひとつの柱になっていくのかも知れない。すべてということはないだろうけれど。

もちろん、それに対しては異論・反論もあろうけれど、一方で、分かってくださる方もいらっしゃると信じている。

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