Opinion : easy to use という性能 (2022/3/14)
 

基本的に、ウクライナにおける「戦況」の話は静観を決め込むことにしている。もともと、この地域に関して詳しい知見を持っているわけではないし、戦争と災害の第一報は錯綜するものだから、うかつに拡散すると大火傷する、という理由で。

幸い、自分のところに解説を求めてくるような物好きはいないし、何か間違いが起きて依頼が来てもお断り申し上げるところ。そんなことにはならないだろうけれど。

ただ、静観とスルーは違う。見てはいる。そこで「やっぱりこれは大事だ」と思った話が、今回のお題。


ウクライナがらみで名前が出てきたウェポンのひとつが、FGM-148 Javelin 対戦車ミサイル。話を聞くと、使い方を覚えるのはかなり容易であるらしい。それであれば、ブツを渡して使い方を説明すれば、すぐに使える。といっても実際には、対戦車ミサイルを有効に活用するための戦術という話も出てくるだろうけれど、それはまた別の話。

もうひとつ、名前が挙がったウェポンが FIM-92 Stinger 地対空ミサイル。いわゆる MANPADS (Man-Portable Air-Defense System) の中でも、もっとも広く知られている製品だと思う。これもまた、ウクライナがらみで名前が出てきている。

若い方はもう忘れてしまっているかも知れないけれど、かつてソ聯軍がアフガニスタンに侵攻したときに、アメリカがムジャヒディンに FIM-92 を渡した。多少のレクチャーはしたのだろうけれど、それで実際に猛威を振るったのだから、使い方を覚えるのはそんなに難しくなかったのだろう。というぐらいの推察はできる。

もっとも、簡単に使えるからこそ、テロに悪用される心配をしなければならなくなったし、2001 年に OEF (Operation Enduring Freedom) が始まったときには、かつてムジャヒディンに渡した FIM-92 を撃ってくるんじゃないかという心配もされた。ただし、電池が期限切れになっていて使えないんじゃないの、という見方もあったし、実際、杞憂に終わったわけだけれど。

目的の是非は措いておくとして、誰かに「支援物資」として武器を渡すのであれば、すぐに使い方を覚えられる、簡単に使える、ということもひとつの重要な性能。使い方を覚えるのに手間がかからなければ、早く実戦に出られるだけでなく、他の分野の教育・訓練に時間を回せる利点もある。

ぶっちゃけ、「使い方が難しくても、それをモノにしてこそ一流」なんていうのは自己満足の極みであって、迅速に使えるようになるのなら、その方が良いに決まっている。ことに我が国、そういう視点が欠けているように思えてならない。なにも武器に限らず、他の分野でも。

よくよく考えれば、Web サイトのデザインにも通じる話であるかも知れない。うちのサイトは未だに大昔基準の HTML で記述していて、見栄え重視も何もあったモノではないので、そんな迷子になるようなことは起きていないと思うけれど。


ここまでは「単品」レベルの話だけれど、同じメーカーが複数の製品を出している場合には、その製品の間で HMI (Human Machine Interface) に一貫性を持たせることも大事じゃなかろうか。そうすれば、新しい製品、あるいは上位の製品に乗り換えたときにスッと馴染める。

そういう意味では、民航機におけるコックピットの共通化は必然だし、新幹線電車でも、運転台の基本的なつくりや機器配置をできるだけ揃えるようにする事例が増えているのは納得がいく。

実のところ、まるっきり HMI が違うのも問題だけれど、似ているようでいて似ていないのも大問題。実のところ、前者よりも後者の方が却って混乱の基になり、始末が悪いかも知れない。どこのカメラメーカーのことだとはいわないけれど。

そういえば。同一カテゴリーでさまざまな製品があって、かつ HMI がバラバラなのが、カーナビ。レンタカーを借り出すとき、真っ先にやるのは「地図表示をノースアップに直す」と「たいていオンになっているラジオを止める」なんだけど、ことに後者はやり方が分かりにくいことおびただしい。

各メーカーとも、HMI や地図のデザインについては過去のモデルから継承している部分があるのだろうから、コロリと変えるわけにも行かないだろうけれど。それにしても、なんとかならぬかこれは。(すみません愚痴でした)

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