Opinion : 次期戦闘機がらみのニュースに接して (2022/8/15)
 

先日に讀賣が「空自の次期戦闘機、イギリスと共通機体で開発…輸出視野に防衛装備移転 3 原則の改定検討」という記事を載せた。真偽の程は、ここでは問わない。むしろ着目するべきは、このニュースに対してどういう反応があったか、誰がどう反応したか、ではないかと思われる。


けっこうありそうかなと思ったのは、「我が国独自の戦闘機開発は (どこに行ったんだ | どうなってしまうんだ)」と悲憤慷慨する類の反応。これ以外にもいろいろ考えられるけれど、いちいち例を想定して列挙するのもくたびれる話なので、それはやらないことにして。

大別すると、冒頭で言及したニュースが自分の考えに「合っている」となるか「裏切られた」となるか、そのいずれかに分類されそう。そうした反応の内容がなんであれ、各々の個人が持っていた考えや願望が、その反応に投影されているはず。

どういう考えや願望を持つかは「思想の自由」の領域に属する問題だから、それこそ個人の自由。好きにしていいんですよ ? ただ、「個人の好み」と「国の護り」をごっちゃにするのは勘弁して欲しい。ひらたくいえば「国の護りのためには自分が好きな○○でなければ」と眦を吊り上げる、そういうのはちょっと勘弁してと。

たぶん、「国の護りのために考えた結果だ」って強弁されそうだけどね…

他所の趣味の分野にもいえることではあるけれど、「趣味的好み」と「実際の必要性」「現実的に実現しうるもの」が、必ずしも合致するとは限らない。

そういうギャップが存在することを認識して、踏まえた上で「自分の好みや希望はこうだけど、現実に必要とされているのはこれだよね、現実に実現できるのはこれだよね」といったところに落ち着く。それが落としどころではないか。とはいいたい。


それはそれとして。まだデモンストレーターをこれから作って飛ばしますといっているのに、2030 年代半ばに実戦配備って大丈夫なん ? というのが個人的な心配事。

なにも戦闘機に限ったことではなくて。往々にして、現物ができると「これでもう完成。明日にも実運用が可能」と勘違いする向きがいる。しかし実際のところ、大変なのは現物ができた後。

民航機なら、飛行試験を繰り返しながら不具合をいぶり出してつぶすとともに、型式証明取得に向けたプロセスを走らせないといけない。軍用機なら、開発試験を走らせて、その次に運用評価試験を走らせないといけない。どちらにしても、けっこうな手間と時間と人手を要する。手近な例だと、F-35 の IOT&E に、どんだけ時間がかかってるのか見てよと。

なんだけれども、それは当事者でもない限り気付かない種類の話。三菱 MRJ の初飛行 (当時) があったときの、新聞・テレビの浮かれようを見よ。あのタイミングで「本当の勝負はこの後」と釘を刺した人がどれだけいたか。

讀賣が報じた通りに話が進んで、次に (予定通りに行けば) 数年後にイギリスでデモンストレーターが進空したら、それでもう「次期戦闘機ができたー」と浮かれてしまう報道が、きっと出てくるんじゃないだろうか。げっ。

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