Opinion : 活動家の業界ってさあ… (2023/9/11)
 

1F の処理水放出、1 回目が完了したとのニュースをチラリと見かけた。

公式には「処理水」というところを「汚染水」と呼ぶ人もいて、まぁそれは本人の立ち位置を明確に示したものであるなあ、という話になる。「自分は中立的なんだもんね」という顔をしている人よりも、むしろ分かりやすくてありがたいともいう。

他の「○○反対」でもそうだけれども、多くの場合には、反対しても結局のところ、粛々と実行されていくし、いずれニュース種にもならなくなる。

若い頃にさんざん見ていて、強く印象に残っている話だから何度でも蒸し返すけれど、分かりやすいところで海上自衛隊の RIMPAC 参加がある。最初はもう出航の際に大騒ぎしていたのに、今ではニュース種にもならない。専門誌は別として。そういえば、自衛隊の海外派遣だって、最初は「海外派兵反対」と連呼する人がいたけれど、今では、ねえ。


以前は、この手の「○○反対」の人達を見て、「あんなやり方をしていても支持は広がらないだろうし、目指す方向に世の中を動かすなんて、どだい無理じゃないの」と首をひねっていた。

しかし、何かを達成するために反対するのではなくて、反対運動をするために反対するのだと考えれば、辻褄が合ってしまう。今は「処理水」で熱くなっている人達も、そのうち、別の、もっとトレンディでホットなネタが出て来れば、そちらに移動していくのではないだろうか。

重要なのは「トレンディでホットなネタ」であること。世間の耳目を引きつけられそうな目立つネタで反対運動をしないと、反対運動をやっても話題にしてもらえない。「これをやっても数字にならない」と思われれば番組のネタにならないのと同様に、「これをやっても注目されない」と思われれば、反対運動も盛り上がらない。要はそういう話なんだろうなと。

だから、F-35 とか V-22 とか、多くの人が名前ぐらいは知ってる馴染み深い存在だと、ネタにされやすくなる。かつて「日本国内への核持ち込み」で槍玉に挙げられた経緯があって名前が知られているから、*GM-109 も同じか。

なにもこの辺、「反権力系活動家」に限った話ではなくて。しばらく前に、全教が集会を開いたら、現場最寄りの王子駅前に右翼団体の街宣車がドヤドヤ押しかけてきて、えらい騒ぎになったという。そうなれば警察も出てくるし、道路の通行を規制することにもなるし、騒々しいし。地元住民にしてみればとんだ迷惑となる。

だいたい街宣右翼といえば、かつては「北方領土奪還」と「日教組粉砕」がお約束だったと記憶している。けれども、こちらの業界もトレンドには敏感 (?) みたいで、最近は北京の悪口をいうことも多いようだ。日常的には、なぜか新橋駅前でよく見かけるのだけど、そこでがなり立てているのを横目に見ていると、そんな印象。

実のところ、向いてる方向は違っていても、「活動することが目的の活動家になっているんじゃないの」というところで、根っこのマインド セットは似てるなあと思うわけである。


これを書いていたら、ちょうど知人が「糾弾者・正義の味方・自分だけ真実を知る者になりたいっていう欲求に人の心が弱いってバグ」と書いていて。なるほどなあと思った。これはすごく腑に落ちる表現。実際、「ネット de 真実」な人ってチョイチョイいるわけで。

上下左右に関係なく、「○○反対」「△△粉砕」「私だけが知ってる隠された真実」とかいって盛り上がり。それで仲間や支持者が見つかれば、なにかしらの連帯感のようなものも味わえる。もしもそこで外部から叩かれれば、むしろそれは内輪の結束を高める方に機能する。

ただし、そこでまかり間違って (仲間内限定の) スターダムに祭り上げられる人が出ると、これは当人が道を踏み外すきっかけにもなり得るのが怖いところ。

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