Opinion : 煽りに釣られないということ (2023/10/30)
 

ふと気付いたら、「自動運転」を喧伝する人を、あまり見かけなくなったような気がする。皆無になったわけではないにしても、相対的な比較の問題として。以前は、公共交通機関の代わりに自動運転車を走らせて云々、みたいなことを大真面目に語る人が、そこここにいたような気がするのだけれど。

そこでさらに蒸し返すと、「ドローンでほげほげ億円の経済効果」とか「ドローン宅配」の話はどうなったんだっけか、という話もある。そろそろ EV の化けの皮も剥がれつつあるような感もある。


以前に自著で書いたように、「目新しい技術や製品が出てくると、すかさずそれに飛びついて煽り立てる」種類のは人は、いつも存在する。ところが、この手の人達は往々にして、「もっと目新しい別の何かが出てくると、そちらに鞍替えしてしまう」という展開になる。

そもそも論として、いつもいっているように、技術や製品があるだけではダメ。それをどのように問題解決につなげるか、という思想や視点が欠落していたのでは、話にならない。

新兵器の開発にしてもそう。「困難な新技術の開発に成功しました」。それはひとつの成果です。わかります。でも、武器技術として開発しているのであれば、その新技術をどのように活用して、どのように勝利につなげて、国の護りに役立てるのか。そういう思想と道筋が明確にならないと、「開発はしたけれど」状態になってしまう。

もちろん、最初から思想や道筋があるとは限らない。海の物とも山の物ともつかないうちから CONOPS を考えろといわれても、それは難しい。でも、どこかで考えないといけない。「以前に開発した技術や製品が、ひょんなことから日の目を見る」にしても、釣り上げるためのきっかけがあるはずで、そこではやはり思想や道筋が要る。

「他所の国が持っていない、画期的な新技術をモノにしました」ということの技術的・学術的な意味と、戦術的・戦略的な意味は違うから。どんな画期的な新技術でも、それが戦術的有用性を欠いていたり、戦術的・戦略的優位につなげるための道筋付けを欠いていたりすれば、結果につながらない。

「技術的な面で、他国に置いてけぼりを食っていません」という一面は達成できるにしても、それは手段の話で結果の話ではない。


ところが煽り屋さんがやってることときたら、自分が飛びついた技術や製品を煽ることが最初に来てしまう。だから、それを既存の、あるいはたまたまトレンドになった課題に対して強引に押し込もうとする。んなもん、うまく行くはずがない。

最低なのは、この手の煽り屋さんと政治家が悪魔合体して、政治家が「新技術・新製品の○○で問題解決 !!11!!」と舞い上がってしまう展開。煽り屋さんは、煽るだけ煽っておいて、ブームが冷めたり旗色が悪くなったりしたら、あっさりトンズラする。すると後には、ハシゴを外された政治家が取り残される。

正直、物書きの端くれとしては、いかにしてこの手の「煽り案件」に釣られないようにするかが重要だと思っていて。流行り物に乗っかって、煽るだけ煽ってトンズラする方が商売としては美味しいのかも知れないけれど、それはやりたくない。

UAV についてはいろいろ書いてきているけれども、「飛行の安全が最優先」「プロが飛ばすもの」「UAV を使うメリットがあるなら使えばいい」という線は崩していないつもり。ここで、煽り屋さんだと「とにかく何でも UAV を使うのがナウい」となるところであろうけれど。

では、地雷を踏まないようにするためにはどうすればいいかというと… やはり自分なりの判断基準というか何というか、そういうものを持ってないと、ダメなんだろうなと。

といっても実際のところ、これは「嗅覚」の問題。「これはどう見ても地雷案件ではないか」というものを見たときにピンとくるかどうか。これまでのところ、的中率はけっこう高い。なんでだろ。

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