Opinion : 角突き合わせてる場合ではないと思う話 (2023/11/20)
 

しばらく前に、「路線バスはヨソ者には敷居が高い」という話を書いた記憶がある。とかなんとかいっている割には、日本国内の他所の土地どころか外国に行って、当地の路線バスに乗っているのだから何をか況んや。

ただしスウェーデンの場合、バス会社のスマホ用アプリがなかなか良くできている。スマホの機能をうまく使っているなと思うのは、発地にバス停の名前を指定するだけではなくて、位置情報機能を使って「現在地から」とやれること。すると自動的に最寄りのバス停を拾ってきて、そこからの時刻を出してくれる。こうでなくては。

あと、スウェーデンの交通事情でひとつ感心していることがあって。全般的傾向として、Web サイトのデザインが比較的シンプルで、かつ、山盛りになっていない。経路検索の機能を最初にバンと出してくるので、さほど迷わずに済む。これは日本の交通事業者各社も見習って欲しいところ。どこの某社とはいわないけどさあ…


ただし日本の場合、スマホがどうとかいう以前の問題があるようにも思える。ことに路線バス業界の場合。

ひとつのエリアに複数の事業者があるのはいいとして、互いに自己完結してしまっていることがある。すると「他社の情報は分からない」。さらに、バス停がバラバラ、バスターミナルがバラバラとなれば目も当てられない。ところが実際に、そんな事例もあるのだから。うーん。

単独の事業者でもヨソ者には敷居が高いのが実情なのに、複数社でさらに敷居を高くしてどうするんだろう。「A 地点から B 地点に行きたい」という利用者のシンプルな目的を蔑ろにしてやしないか。バス停って、ヘタすると存在に気付かないことすらあるというのに、分かりやすくする努力をしないでどうするんだと。

先日、津田沼駅でららぽーとに行くバスの乗り場が見つからなくて、「この辺のはずだが」といって歩道を行ったり来たりした経験をしたばかりだったりする。

ところで。ことに COVID-19 以降、以前ならライバル同士と目されていた業界同士が手を組む事例が出てきている。JAL と JRTT が組んで、北海道新幹線関連の見学ツアーを組んでいるのなんかは典型例。

あと、北海道や四国で、並行する鉄道とバスを組み合わせて連携させる事例が出てきた、なんて話があると聞いている。もはや「鉄道ガー」「バスガー」じゃないってことなんだろうなと。

どういう動機・きっかけで、この手の企画が出てきたのかは知らないけれども、「まずコロ助が共通の敵」「公共交通機関同士の連携」みたいな気運が強まってきたのであれば、それは良いことだと思う。

だいたい、ライバル (と目されがちな企業あるいは業界) 同士で角突き合っているうちに総倒れ、なんてことになったらつまらないし、誰も幸せにならない。競争関係があるのは別にいいけれども、協力できるところは協力しないと。それができないのであれば、利用者の方を見ていないといわれても、しゃあない。


「複数の交通モードを組み合わせて云々」というと、すぐ MaaS がどうとかいうことをいう人が出てくると思われる。MaaS が無意味でどうでもいいものだ、なんていうつもりはないけれども、それだけでさまざまな問題を雲散霧消させる銀の弾丸になる、というわけでもないし。

ことに、まず路線・系統を知るという入口の部分。そこのバリアをどうにかしないと、それだけで機会損失を作るように思う。「A 地点から B 地点に行きたいけど、どこで何行きに乗ればいいのかサッパリ分からん」では、MaaS 以前の問題。MaaS の有無に関係なく、分かりやすい仕組みを作るのは不可欠のはず。でないとデジタルデバイドができる。

あと、理想論をいえば「重複を廃した路線網の再編成」とかいう話も出てくるだろうけれど、これは難しい。乗務員不足がいわれている昨今、従前と同じ路線網を維持できるかというと怪しいのは事実なれど。なにせ、赤字路線を引き受けたがる事業者はいないだろうから。利用が多そうな路線と少なそうな路線の抱き合わせ ? うーん。

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