Opinion : ボスと組織 (2024/4/1)
 

今回は、なんとなく先週の話の続きを。

先週の記事を書いた後で、ふと「ホンダ神話」で出てきた話を思い出した。「アメリカの企業文化では、現場の従業員が社長と直接接する機会はほとんどない。にもかかわらず、現場の従業員の間では、『今度のボスはどんな人だろう』という関心が強い」という趣旨。

たぶん、会社に限った話ではなくて、たとえば「次の艦長はどんな人だろう」「次の隊長はどんな人だろう」みたいな話があるのだろうなと。もっとも、これは組織の規模による部分もあって、潜水艦の艦長や陸軍の中隊長ぐらいなら、一人一人の部下と直接、接することもあるのが普通だろうけれど。

そういえば、「空母ミッドウェイ」で「たまに艦長が科員食堂にやってきて、乗組員との間で無礼講で話の花が咲く」というくだりがあったけれど、これは今も同じなんだろうか。空母ぐらいの規模になると、意識的にやらなければ、艦長が下っ端の水兵と接する機会はなかなかできないだろうし。


で。

ボスが交代することになって、「今度のボスはどんな人なんだろう」という関心が集まる場面。特に、組織が危機に直面していたり、苦境にあったりする場面では、「新しいボスの第一声」がすごく大事なんじゃないか。と思った。

そこでボスがフラフラしたり、不安丸出しだったりすれば、たぶんそれは部下にも伝染する。逆に、第一声でボスが部下を味方につけて、進むべき方向やゴール、美人もといビジョン [面白いミスタイプだったのでそのまま残す] を明確に示せれば、組織が反転攻勢に出る一歩になり得るかも知れない。

その一例だろうと思ったのが、ミッドウェイ海戦の前に空母機動部隊 TF16 の指揮官に着任したレイモンド スプルーアンスの、幕僚を前にした一言。そこで「部下の諸君に対して何も不安は持っていない」と明言したからこそ、部下もちゃんとついてきてくれたんじゃないかと。

あと、サマール沖で沈没した空母ガンビアベイでも、前任の艦長が特に搭乗員の間で不人気だったのに対して、後任としてやってきた艦長が初っ端から搭乗員の人気をつかんだという話があったらしい。

同じ第二次世界大戦の話だと、南太平洋方面の指揮官をゴームレーからハルゼーにすげ替えたのは、士気のアップに効いたと思われる事例のひとつ。指揮官が弱気だと部下にも伝染するけれど、闘志丸出しの指揮官が乗り込んでくれば、さて ?

ただ、ボスが部下を鼓舞するのに、あまりにも浮世離れしたゴールを掲げたら、「そんなの、できっこない」とクサって、却って逆効果になりかねない。部下が「頑張ればやれるぞ」とその気になるには… はるか遠くではなくて、一歩か数歩ぐらい先を照らす程度がいいんだろうか。

もちろん、意思があっても、実現のためのリソースが伴わなければただの空論。でも逆に、リソースだけあっても駄目で、それを適切に使って勝つんだという理念と自信と確信がなければ勝てない。それを吹き込むことが統率ってもんじゃないのかと。


では。現場が荒れて製品の品質が低下したり、サービスの質が低下したりした会社を建て直す場面はどうだろう。そこで財務諸表や株価のことしか知らない or 気にしないボスが来たら。たぶん、もっと悲惨なことになりそう。そこで真っ先に必要なのは、現場のモチベーションを取り戻すことなのだから。

製品や現場のことを理解している、現場の味方になれる、そういう姿勢を見せて、実践できる。そんなボスが求められるのではないかなあと。そんなことを考えていた。

もともと御社にはそういう経営幹部がいたのではなかったのかぁ !?

ボスが製品に対する思い入れや愛着を大して持ってないことが現場に伝わったら、ますます現場の士気が下がるのと違う ? いい製品を作ってもボスに理解してもらえないんじゃないか、って思われない ?

Contents
HOME
Works
Diary
Defence News
Opinion
About

| 記事一覧に戻る | HOME に戻る |