Opinion : 勝ち負けの結果だけ見ていると墓穴を掘る (2025/7/21)
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なんだって三連休の中日に、と思ったけれども、投票率はけっこう上がってきたらしい、今回の参院選。ひと晩経ってから落ち着いて考えてみると、「従来型政党の従来型の戦術が負けた選挙」といえるような気がしていて。
その話は最後にまとめるとして、まずは長い前置きを。
ビジネスでも選挙でも戦争でも、勝負事であり、誰もが勝とうとしているのだから、勝つこともあれば負けることもある。
問題は、勝ったときに「勝った勝った」と浮かれてしまい、「なぜ勝てたのか」「もっと上手くやれたことはなかったのか」「ヤバいところはなかったか」という反省を忘れること。そういうところをしっかり見ておかないと、後で足元をすくわれる。
たとえば太平洋戦争の分かりやすい例で、マレー沖海戦。確かに、結果を見れば「陸攻が敵の戦艦を撃沈して大勝利」ではある。しかし、その結果だけ見て浮かれて、英艦隊に戦闘機のエアカバーがついていなかった話を、きれいさっぱり忘れ去ってなかったか ?
そしてどうなったかといえば、半年ちょっと経った頃に、ソロモン方面で酷いことになった。戦闘機の護衛をつけて送り出しても損害を食い止められなかったのだから、なにをか況んや。
インド洋作戦でも同様に、英艦を何隻も撃沈して浮かれてしまった。でも、その裏で兵装転換のドタバタや索敵不十分の問題があったのを見過ごしてしまっていなかったか。そして、ミッドウェイで酷いことになった。
逆に、負けたときにも同じことがいえて。「なぜ負けたのか」「もっと上手くやれなかったのか」「次はどうしたらいいのか、何を目指したらいいのか」を考えられないと、反転攻勢も何もあったもんじゃない。
そこで、責任のなすり合いに終始したり、指揮官の首をすげ替えて一件落着としたりするだけでは、その後のリカバリーなんてとてもとても。もちろん、いざというときに責任を取るのもトップの仕事のうちだけれど、トップの首だけ挿げ替えれば問題解決というわけでもなくてね。
太平洋戦争の話ついでに真珠湾攻撃の話を持ち出すと、責任をとらされる形で太平洋艦隊司令官のキンメルの首が飛んだ。ただ、司令官をクビにするだけでなく、後任に誰を持ってきて、どうやって体勢を立て直して勝者になるか。そこまで考えないと、人選を間違えたり、同じ失敗を繰り返したりすることになる。
と考えると、キンメルの後任にニミッツが出てきたのは、なんとも卓抜な人事であったと思う。ガダルカナルで悪戦苦闘しているときに、ゴームレーを切ってハルゼーを引っ張り出したのもそうだけれど。
ただ、物事はえてして理想論通りに動かないもの。戦争に限った話ではなくて、たとえば会社が倒産の危機に瀕するようなことがあっても、皆が一丸となって立て直しに尽力する… とは限らない。逆に、体制立て直しをそっちのけにして、派閥争い・首取り合戦・内部抗争に血道を上げた会社も実在するだから笑えない。
そうなったらもう、「なぜ苦境に至ったのか」の分析も対策もあったもんじゃない。
日本だけでなく欧米でも同じじゃないかと思うのだけど。
「選挙で勝つ」際に、昔ながらの政党の、昔ながらのやり方が通用しなくなってきているんじゃないかという気がしていて。言葉を変えるならば「ポリコレの敗北」といえるんじゃないかしらと。
「自分ひとり救えない人に、世界が救えるはずがない」は自分の口癖だけれど。政治の世界でも、目の前にいる国民を救えないのに「政治的正しさ」ばかり前面に出している… というか、そういう印象を定着させてしまったことが、なにかしらの影響を及ぼしたのではないかしら ? と。
そこで「ポピュリズムは怪しからん」あるいは従来の「ポリコレの棒」で叩くだけで元の流れに引き戻せるかというと、たぶん難しい。「政治的正しさの下で自分達が犠牲ばかり払わされてきた、虐げられてきた」と思っている人が、「ポピュリズム反対」についてくると思う ?
たぶん、ここで新しい「政治のやり方」「選挙戦のやり方」を考え出さないと、それこそトンでもないことになる可能性があると思うよ。
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