Opinion : 個人的な趣味や好き嫌いと、お仕事と (2025/7/28)
 

どんな業界でも、「個人的な趣味や好みを仕事に持ち込むな」は同じ。たまたま運やタイミングや状況に恵まれて、仕事と趣味の境界が曖昧 (そうに見える) ポジションに身を置いているけれども、それだからこそ、このことを意識しておかないと面倒なことになる。

あと、なにかしらの「公的な存在」を趣味の対象にしている場合、個人的な趣味や好みと相容れない動きに直面することがある。分かりやすいところで、お気に入りの車両や機材が退役に追い込まれるような場面がそれ。

老朽化で退役するなら、まだ諦めがつく。ところが、ときには「周囲の状況の変化により、仕方なく早期退役」なんていうこともあるわけで、そうなると「納得いかない」の度が増すことになるやも知れず。


そういう意味で扱いが難しいなぁと思うのは A-10 という飛行機。御存じの通り、人気がある。外見にも構造にも武装にも特徴があって「唯一無二の存在」なのも大きい。有り難いことに日本の近所にも配備されていて、オープンハウスなんかで目にする機会が多いから、それがまたファンを増やすことになっていそうではある。

だから、A-10 が退役するなんて話になると「えー」と思うのも無理はない。無理はないのだけど、あくまで国防のためのツールなのだから、"Great Power Competition" の御時世に戦場で生き残って有用性を発揮できる機体なんですか、というところにも思いを馳せて欲しいなあ、とも思う。

でも、「えー」の部分が先行すると、A-10 の退役を先延ばししようとする動きが出てきたときに、後先考えずに… かどうかは知らないけれども、(退役を先延ばししようとする動きを) 歓迎してしまうようなことも起こり得る。

その「退役の先延ばし」にしても、どういう理由でそんな話が出てきたのか、そんな話を持ち出してきたのは誰なのか。そこまで調べに行くと、これはこれでひとつの勉強になる。それが、アメリカにおける国防予算策定のプロセスを知ることにもつながる。

このプロセスが日米で異なるせいで、米国メーカーの関係者が日本の状況を見て「国会に予算案を提出したのなら、ここから先が大変じゃないか」と心配することがあるという。いや、アメリカの制度だとそうなんだけど、日本で大変なのは「国会に出す前」なのだ。

かつて米上院に、Kelly Ayotte 氏というセネターがいた (今は地元・ニューハンプシャーの知事)。氏が A-10 の退役に待ったをかける議案を出したのは事実だけれども、これも「代替機となる F-35 が十分に揃うまで A-10 の退役は待て」であって、何が何でも退役させるな、でなかった点は留意すべき。

話を元に戻して。「個人的な趣味や感情を仕事に持ち込まない」という話になると、先日に記事を書いた中国海軍のフネの話。日本にとってどういう存在のフネか、は先刻承知であるけれども。

だからといって、艦の (見た目の) 仕上がりやその他のあれこれについて書くのに、感情の部分を持ち込むのはよくない。なるべく客観性を崩さないように、何も足さずに、何も引かずに書くように努力したつもり。ただ、それがどう受け止められたかは、ちょっと気になる。


もっとも、世の中には「個人的な思想信条や好み」をそのまま (?) めしのたねにできる場合もあって、その一例になりそうなのが「活動家」という稼業。これはもう、「個人的な思想信条や好み」を一方的にまくし立てていれば済みそうではある。それが結果につながるかどうかは別として。

でも、「政治家」はそうじゃない。立場の違いや利害の対立は常に存在するのだから、その間で落としどころを探りつつ、世の中を動かしていくのが政治家という稼業じゃないのかと。一方の言い分だけ聞いていたら話が壊れるけれども、ときにはベクトルを変えなければならないこともある。そこで出てくる不満を抑えるのも政治の仕事。

一方的に主張をまくし立てて、ゴリ押しするだけでは、政治家は務まらない。活動家あるいは活動家みたいなマインドの持ち主が、何かの間違いで要職に就いてしまうと、いろいろとマズいことが起きる。そんな実例が妙に目につく昨今ではある。

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