Opinion : 正義と急進派の掛け合わせは怖い (2025/9/8)
 

今日、とあるニュースを見た結果として。まず、いきなり結論。

「温室効果ガス排出削減」とか「世界平和」みたいな「わかりやすい正義」は、ときとして人の心を惑わせて、世の中をおかしな方向に走らせてしまうから、まことに取り扱いが難しい。

これだけで終わりにしてしまったのでは、手抜きもいいところなので、もうちょっと真面目に書くことにして。


「わかりやすい正義」が面倒なのは、まず、正面切ってそれに反論する… そこまでいかなくても、「待て待て」とブレーキをかけるようなことをいいにくくなる点。

どこの誰とはいわないけれども、それをルールチェンジに利用しようとして失敗した人達が、どこかにいましたな。

「最終的に目指すところはわかったから、まずは現実的に可能なところから、漸進的に話を進めようではないか」といっても、「正義」に酔った急進派が大きな声をあげれば、堅実論はかき消されてしまいがち。

さらに面倒なことに。その「わかりやすい正義」に乗るにしても、ちゃんと話が分かっていることが関係者にいれば、ちゃんと現実的に話を進められるように例外や留保条件を付けたりするもの。

ところが、マスコミ関係者は往々にしてキャッチーなところだけ見て飛びつくから、いちばんキャッチーなところだけつまみ食いして見出しを書く。すると、見出しに書いたことが「留保条件抜き・例外なしの既成事実」として独り歩きを始める事態が懸念されるところ。

もともと、見出しというのは記事本文に読み手を引き込むためのトリガーだから、「おっ」と目を引くものであることが求められるけれども、ものには程度問題というのがあってですね。

ことにネット上のニュース記事では、大量に並ぶ見出しの中から読み手の目を引き付けようとして、「キャッチーな見出し合戦」が際限なく進んでいる感が。エロと一緒で、最初は刺激的と思われたものが、やがて刺激的でもなんでもなくなり、さらなる刺激を求めてエスカレートする。

そういう状況と「わかりやすい正義」と「それを振りかざす急進派」の合わせ技で何が起きるか。それが冒頭で書いた話。

急進派というのは、「この正義を今すぐ実現しない奴等は悪である」という論法に走りがちであるから、極端から極端に振れる可能性が上がる。そして、そこに待ったをかけて堅実に進めようとする人が、異端審問 or 魔女狩りの被害に遭うような事態だって懸念される。

特に昨今、その異端審問 or 魔女狩りに格好のプラットフォームが広く使われていて、これがまた異端審問 or 魔女狩りを煽りがちだから困りもの。


あと、これは前にも似たようなことを書いたかもしれないけれども、「わかりやすい正義」は往々にして「わかりやすい正義を象徴するカタチ」へのこだわりに変質する。つまり、「形をつくることにばかりこだわっていたら、本来目指すべきゴールからは、却って遠ざかっていた」という種類の話が起こり得る。

筋論からいえば、常に「この路線で、最終的なゴールに向かっているのか ?」を問い、必要に応じて軌道修正しないといけない。でも、形にばかりこだわると、それができなくなる。早い話が手段の目的化だけども、手段の話って分かりやすいから飛びつく人が多い。

あーあ (超嘆息)

(なお、次回は休載するかもです)

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