Opinion : 小さな世界や小さな成果を大切に (2025/12/1)
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あれこれ考えてしまったけれど、結局、先週の話の続きみたいな内容で。
先週に書いた「ひとかどの人物になりたい願望」。これは少なからぬ人が潜在的に持っているものであろうし、そのことを否定してはいけないと思っていて。
ただ、昔なら自分とその周囲の、比較的狭い世界の中で張り合っていれば済んだ。でも現在は、いきなり全国ないしは全世界を相手に張り合う… そんな鉄火場に放り込まれてしまう。これはキツい。
しかも通信回線の向こう側には、高収入や資産をひけらかす人、生活の充実ぶりをひけらかす人、キラキラぶりをひけらかす人などの刺激がてんこ盛り。自分はもう相応に年を食ってきているし、ありがたいことにお仕事の方も充実しているから、そういうトンチキ連中に釣られることはないけれども。
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そもそも論として、いつも Twitter で書いているように、本当に賢い人ならおカネを持ってても黙っているものであろう。というのが我が持論。まあ、逆説的に「近寄ってはいけないアカウント」を知る格好の材料になるんだけれど。
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いきなり、そういう環境に放り込まれて、自分がどうしようもなく小さくて無力な存在に思えてしまったら。そこで、SNS を初めとするネット空間でスターになったからナンボのもんじゃい、と突っ撥ねられる人は、相当に強い人だと思うよ。
そこで突っ撥ねることができず、一発大逆転を狙ったり、自分も同じステージに上がってやろう、と思ったりしたら ? 現実問題として、ネット上での人気者にあやかって、同じ芸風で後を追おうとした人っているわけでしょ。今では名前を聞かなくなったけれども。
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そもそもどうして、二番煎じで同じステージに上がって持続できると思ったのか。
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自分はいわゆる「お出かけヤクザ」の一族だと思っているけれども、これとて人それぞれ。毎週のようにおでかけしている人もいれば、ときどきお出かけしている人もいる。国内をあちこち回っている人もいれば、地球の裏側まで出張る人もいる。
自分ができる範囲でやりたいようにやる分には、なんだっていいはずである。「お出かけヤクザならこうしなければならない」そんな公式はない。
なんだけれども、普通の人はまぁやらないような、変わったおでかけ、高頻度のお出かけで脚光を浴びている人を見たときに、自分も同じことをしなければいけないんだ ! って思い詰めたら壊れるよ。
人は人、自分は自分。小さなことであっても、自分ができること、自分が満足すること、自分が納得できることを積み重ねる。それが重要なんじゃないのかと。
そもそも論として (しつこい)、地味な仕事や小さな偉業の積み重ねで世の中が回っているのだから、そういうのが正当に評価されない社会は、おかしな方向に行ってしまうんじゃないか。
会社でも軍事組織でも、目立つのは "tip of the spear" な花形部門だけど、それだけで組織が回っているわけではなくてね。それが分かっているから、英空軍はヘンドンの空軍博物館で、「空軍は多様な職種でもっている」という趣旨の展示をしているんだと思うよ。
この「自分は自分」「小さな成果を大切に」は、ことに SNS (という名の、個人が世界にあてられる鉄火場) との向き合い方において重要なんじゃないか、と書いておきたくて。運営サイドの思惑や都合により、次々に投げつけられてくる「目立つ誰かさん」の事例に振り回されて、あてられ続けたら、壊れてしまうよ ?
そこで手っ取り早くスターダムにのし上がろう、インプレを稼いで人気者になろうと考えて、挙句に過激な反○○や陰謀論やナラティブばかりふれて回るようになったら、それこそもう「役に立つ馬鹿」への道を一直線だよ ? それはまったくあなたのためにならないことだよ ?
サイバースペースにおいても、あるいはミートスペースにおいても、小さな成果を軽んじて「大物になりたい願望」みたいなのに突き動かされる人が増えることになれば、それは知らず知らずのうちに社会を蝕むことになりはしないかと。そんな心配をしている。サイバースペースの向こう側にいるのは生身の人間で、ミートスペースともつながっているのだから、両者が相互に無関係ということはない。
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