私は GOA に救われた
 

「ゴォォォォォォォォ」
「ゴォォォォォォォォ」
いつになく多数のトラックが、まだ降り続く雨の中を爆走する。
東名高速が通行止めのせいで迂回してきたトラックドライバーは、今日は不慣れな道路と悪天候に顔を引きつらせながら、荷主の要請に間に合わせるべく、濡れた路面にかまわず突き進んでいく。
左側の走行車線に横たわるのは、シルバーメタリックのアルテッツァ。
人命を預かるキャビンは潰さないように、ボンネットとトランクは潰れて衝撃を吸収するように、ボディを設計するのが GOA のたしなみ。
もちろん、中身を漏らして炎上するなどといった、はしたない燃料タンクなど存在していようはずもない。

2000 年 9 月 12 日、午前 4 時 47 分。
1998 年 11 月に納車されたこのクルマは、車台番号 3800 ちょうどという若さ。伝統ある 1G-FE エンジンを搭載するアスリートセダンである。
山梨県内、中央自動車道西宮線 137km ポスト付近、八ヶ岳連峰の麓に広がる緑の多いこの地区で、幸運に見守られ、居眠り運転のトラックによる追突から乗り手を無事に守りきり、それと引き換えに我が身を捧げて全損した殊勲のクルマ。
時代は移り変わり、デビューから 7 年が経過して登録台数もめっきり少なくなり、二代目レクサス IS にバトンを渡そうとしている平成 17 年の今日でさえ、高速道路のパーキングなどで熱心に見つめる視線を感じられることもあるという、貴重な名車である。


2000 年 9 月 12 日の未明に、中央道の上り線、長坂-須玉間 137km ポスト付近で、私が運転するアルテッツァはトラックに追突され、全損と相成ってしまいました。

ところが、奇跡的にも私自身は軽いむち打ちと右肩挫傷で済みました。その代わり、クルマは惨憺たる様相を呈していますが、衝突安全ボディの真髄を発揮して、キャビンの前後がうまく潰れてくれたのと、横転したり火災になったりしなかったのが幸いして、私は救われたというわけです。

そうそう誰でも経験できるシチュエーションではないので (したいとも思わないけど)、事故で破壊されたボディの写真を公開することにしました。いずれも、22 日に残骸が保管されているレッカー会社の敷地内で撮影したものです。
涙が出そうな映像ではありますが、クルマが犠牲になってくれたおかげで自分が救われたことを思えば、腹も立ちません。(自分に過失がついてないから、というのもあるけど)



これが全体像。前後の部分がぐしゃぐしゃになった代わりに、キャビンはほとんど変形していないのが分かります。ただし、外板の変形の関係上、左前のドアは開かなくなっていました。


ノーズ部分のクローズアップ。タイヤよりも前の部分が壊滅していることが分かります。ただし、このクルマはもともとフロントのオーバーハングが極めて少ないので、この程度のクラッシャブル ゾーンで衝撃を受け止めたというのは、なかなか驚異的。
また、バンパーがすっ飛んでしまい、フロントのクロスメンバーが露出しているのが分かります。ラジエーターは後ろに押し込まれていましたが、エンジンがキャビンに押し出してくるということはなかったようです。


こちらはトランク部分のクローズアップ。もともと短いトランクがほとんどなくなり、トランクの蓋が前方に食い込んだ結果として、後ろの窓ガラスは完全に四散しました。
また、こんな調子なのでトランクに入っていた荷物は外に放り出されてしまい、そのときの衝撃が原因か、それともその後の通過車に踏まれたのか、とにかく荷物は大半が壊滅しました。生き残った荷物も、ほとんどは雨でぐちゃぐちゃです。


後ろから見た状態。スピンした挙句、右後ろから路肩のガードロープに突っ込んで停止したので、右後輪が完全に外れています。マフラーの左側に見えるのはリアのクロスメンバーと思われ、これもモロに衝撃を受けたようです。もちろん、バンパーはすっ飛んでしまっています。


正面から見た状態。衝撃を受け止めた代償として、バンパーはすっ飛び、構造材はぐちゃぐちゃ。左回りにスピンしたので、最初に路肩のガードロープ支柱にヒットした左前の方が、右前よりも破壊の程度が大きいのは明白。


なんにしても、全損したクルマは保険でもなんでも使って原状回復できますけど、乗っている自分自身が全損してしまったら回復不可能なわけで、実に見事に犠牲になってくれたものだと感心します。事故の処理に当たった山梨県警高速隊の人も、「GOA は凄いなぁ」と驚いていたとのこと。
このボディを設計・製作したメーカーの皆さんに、感謝。

ちなみに、事故前後の顛末はこちら →

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