井上孝司の国税ウォッチ 2003
 

元国税局長の節税指南、遺産隠し 10 億円と国税局指摘」(asahi.com, 2003/12/29)
節税指南の内容の是非については論じないが、問題は、これが元・熊本国税局長だった国税 OB 税理士の指南によるものだったということ。それを現役組がひっくり返して追徴課税した結果、OB の顔を潰したわけだ。納税者にとっては、いい迷惑。
もっとも、こういう事態が続いて「OB 税理士は使えない」という風評が広まれば、それはそれで、税務行政正常化の一助になるかもしれない。正常化の成果が出て OB 税理士を納税者が忌避するようになると、却って当局は OB 税理士に対する顧問先の組織的斡旋に躍起になってしまい、結果的に事態を悪化させる可能性もあるが。

OB 税理士を特別待遇「私を税務調査けしからん」国税一斉調査」「東京国税局 OB 税理士調査 十数人申告漏れ 数人異例の廃業」(産経新聞, 2003/12/28)
最初にこの記事を読んだときには「産経もこんな記事を載せて大丈夫かな、OB 税理士を雇って "自衛" した方が…」と思ったが、後でよくよく考えると、「聖域に手をつけてまで綱紀粛正に努めてます」という国税のイメージアップ宣伝のようにも思えてきた。
ともあれ、「課税の公平負担」とかなんとか、偉そうなお題目を並べてみても、それはあくまで納税者向けのレトリックだったのは事実。内輪は例外扱いだったわけで、「大半の OB はまじめにやっている」というお約束のコメントも白々しく聞こえる。以前、「税務訴訟になった時点で信頼をなくしている」と書いたけれど、実は訴訟以前に、最初から信頼などする価値がないのかもしれない。
そもそも、在勤中も他の国家公務員よりいい給料をもらっておいて、さらに退職後も顧問先を斡旋してもらった上に、調査も受けずに荒稼ぎとは、いい根性してると思う。

企業交際費が 6 年連続減少 国税庁調べ」(asahi.com, 2003/12/23)
で、この数字って、税務調査に入って「交際費と認定」する前の話か、それとも認定した後の話か、どっち ?
今年は、あちこちの会社で「交際費と認定されて追徴課税」というリークが吹き荒れた年だけれども、それでもなお、交際費の総額が減少しているのだとすると、企業が経費節減のために、交際費を手控える傾向は本物ということか。自分のように、もともと交際費が少ない人間にとっては、あまり関係ない話ではあるけれど。

課税の矛盾 ? 理美容師試験センター申告漏れ 4 億余」(讀賣新聞, 2003/12/18)
自分が見た範囲では、讀賣だけがまともに取材した記事を載せていた (つまり、他所は国税リークの垂れ流しという意味)。例によって例のごとく、「課税の公平負担」というお題目とは裏腹に、国家試験の種類によって、課税していたり、いなかったりという体たらくだそうだ。
この件も過去には非課税でやっていたのを、美容師試験の受験者が増えてきたもんだから、いきなり「儲かってるな」と見て闇討ちで解釈を変えて、過去に遡って追徴したという、まさにストックオプションと同じパターン。つまり、解釈ひとつでお土産を持って帰ろうとして、ものの見事に馬脚をあらわした様子が伺える。
国家試験の件に関して、政府税調は「原則課税」の方向で話を進めているとのことだが、それならそれでスッキリする。それに、同じ内容の事業でも民間企業だと課税、公益法人だと非課税という「逆差別」も生じているそうなので、そんな馬鹿みたいな官業優遇を潰す観点から見ても、原則課税という動きは正しい。
しかし、国家試験というと各省庁の思惑や利害関係が絡むから、これまで非課税だったものを原則課税の方向に変えようとすると、またひと揉めあるんじゃないか、これは。

豊田合成に 17 億円申告漏れ・国税局指摘」(NIKKEI NET, 2003/11/27)
ふーむ。ここ数ヶ月の間、自動車関連業界が集中的にリーク被害に遭っているところを見ると、今年は自動車関連業界を狙い撃ちにする年だったということか。不景気だなんだといわれている中では、比較的状況のいい業界だから、利益が出ていると思われて狙われたな。管内に自動車関連企業を多く抱える名古屋国税局は、さぞかし勤務評定の数字が上がってウハウハに違いない。

広島国税局職員、自分の給与の差し押さえ命令を窃盗」(讀賣新聞, 2003/11/26)
全員が全員、こういう職員だなどとは思いたくないが、こと税務に携わる人間には、通常のレベルを超えた高潔さを求めたいところ。現状が、そうした理想論からは地球とアンドロメダ星雲の距離ぐらい乖離しているのは承知の上なれど。
この記事で面白いのは、署長から審判所に異動した職員がいたこと (その際に関連業者から贈答品を受け取って、懲戒処分を食らったのだそうだ)。審判所というと次期署長の溜まり場で、その後は「署長 → 退職後は顧問先の斡旋を受けて税理士を開業」というのが基本パターンかと思ったら、違うパターンもあるらしい。

課税訴訟、国の敗訴増える」(NIKKEI NET, 2003/11/24)
昨年の、東京地裁における「敗訴率」が 40% に達したとのこと。それって、あまたのストックオプション税務訴訟のせいじゃないのか (笑)
国税庁がおおいに勘違いしているのは、敗訴率が上がると納税者の信頼を失うと思っているところ。そうじゃなくて、信頼を失うのは訴訟が提起された時点だ。国税不服審判所が (自称しているのとは裏腹に) 事実上は当局のイヌで、しかも国税通則法 99 条のおまけつき。さらに、裁判所にも国税の職員が「調査官」として送り込まれている。そういう、圧倒的な「納税者不利」の状況をおして訴訟しようと納税者が考えるのは、よほどの事情があってのこと。そうまでして訴訟を起こされるのは、国税がそれだけ筋の通らないことをしているからだ、という自覚が足りないんじゃないのか。

17 歳が国税庁サイト侵入も… 韓国でハッカー集団摘発」(産経新聞, 2003/11/19)
「侵入されたことに気付いていなかった」というのが致命的。こんな調子で、電子申告なんか始めて大丈夫なんだろうか。もちろん Web サイトと電子申告とではシステムが違うだろうけど、システムがどうのこうのというよりも、それを運用管理する人間の意識の方が心配になる。税務調査の際に、納税者のプライバシーに侵入するのは平気なのにねえ… (ぉ
ちなみに、国税庁の Web サイトは Linux と Apache の組み合わせで動いているらしい。Linux にしていれば安全なんじゃなかったんですかね ? > 経済産業省

地方独自税、納税者に事前説明義務付けへ」(NIKKEI NET, 2003/11/10)
国税の話題ではないが、いい傾向だと思ったので、取り上げてみた。
今の税務行政における最大の問題点は、当局が手前勝手な振る舞いを当たり前のように行なっており、かつ、それを納税者に強引に押し付けている点にある。だから、解釈が変われば過去の方針はすべて忘れて、さも当たり前のように修正申告を迫り、彼等はそれをダシにして勤務成績をアップさせて昇進する。何かおかしい。
この方針が打ち出されたきっかけは、おそらく東京都の外形標準課税をめぐる税務訴訟だと思うが、それが事実なら、銀行が訴訟で争ったからこそ、こうした改善が見られたわけだ。裁判にならないと反省しないというのも、なんだか情けない限りだが…
ともあれ、今回の事前説明義務付け方針は、課税に対する説明責任を果たすという点での小さな一歩として、高く評価したい。

『クボタ』が 2 億 3000 万円所得隠し…大阪国税局」(讀賣新聞, 2003/11/1)
この件に限らず、最近「損金計上していた○○を交際費と認定」というパターンのリークが増えているようだ。これなど、まさに「解釈でどうにでもなる」パターンの典型例で、本当に交際費としての性質を帯びていて更正処分が妥当なのか、それとも強引に交際費に仕立て上げたのか、微妙なケースも含まれるのではないか。要注意。

米社オランダ法人に 19 億円追徴 国税局、税逃れと判断」(asahi.com, 2003/10/10)
例によって例のごとく「『契約上は匿名組合だが、実態は違う』と、認定した」のだそうだ。正直なところ、「認定」という単語が含まれている申告漏れや脱税の報道は、すべて疑ってかかるべきではないかと考える
事の真偽、課税の是非については司法の判断を待つとして、ここでは措いておく。ただし指摘しておかなければならないのは、税逃れが発生していたのだとしても、その根本原因が日本とオランダ間の租税条約にある、という点だろう。もし、この手法が合法的という判断が下された場合、当然、国税としては納得がいかないだろうが、そこでなすべきことはオランダとの間で締結している租税条約の改定であって、目の前の案件を都合のいいように「認定」することでもなければ、各税務署に通達を出すことでもない。そこのところを勘違いしてはいけない。
つまり、本件における国税の対応は、人間が棒を振り回して威嚇した犬が、大元の人間ではなく、棒の方に吠え掛かっているようなものだ。棒に吠え掛かっても問題は解決しない。
同じことは、「海外子会社への利益移転と認定した」とされるスズキの事例についてもいえる。認定だけならサルでもできる。万物の霊長なら、万物の霊長らしく対応しなければならない。

トヨタ自動車 50 億円申告漏れ、20 億円追徴課税」(NIKKEI NET, 2003/10/8)
asahi.com によると、トヨタ側は「裁判しても仕方ない」として追徴に応じたとのことだが、面白いのは、修正申告ではなく更正処分になっていること。NIKKEI NET の記事によると

「トヨタ自動車が TMAP に支払った委託料が実際の業務内容と比べて多く、経費を水増しし自社の利益を圧縮したと判断。子会社への資金支援のための『利益移転』にあたると認定したもようだ」

と、毎度恒例の「認定」なる文句が出てきているので、「どの程度の比率なら "実際の業務内容と比べて多い" と "認定" されるのかというところで不満があり、単純に修正申告に応じる訳には行かなかったのではないかと推察される。それとも、トヨタにも「修正申告に応じて国税の人間の勤務評定アップに寄与するのは潔しとしない」人がいたとか :-)
この「実際の業務内容と比べて多い」もそうだし、お得意の「社会通念上」という文句もそうなのだが、白黒の境界が極めて曖昧で、国税の人間の裁量ひとつでスライドしてしまうところに、日本の税務行政に関する根本的問題がある。何事も「これだけなら OK、これ以上は駄目」と明確に定量的な基準を示し、それを広く公表した上で、かつコロコロ変えないことが、信頼醸成のためには重要なのだが、国税の人達は頭が良過ぎて、そんな基礎的なことも理解できないらしい。

NTT ドコモ・グループが提訴 (NHK ニュース/岩手日報, 2003/10/2)
PHS 網を NTT パーソナルから買い取った際に、個々の基地局ごとに必要になる 73,000 円の権利金 (注 : PHS のバックボーンは ISDN なので、ISDN 回線用の施設設置負担金と思われる) を、個別の回線ごとだと 10 万円を切っていることから経費として損金計上したのに対し、国税は「全部の回線を一括して扱うべきで、まとめると資産扱いになるから経費ではない」と「認定」して、20 年の減価償却期間のうち最初の 1 年分だけを減価償却したものとみなして更正処分。その取消を求めて、グループ各社が一斉提訴したとの由。
つまり、個々の回線単位で扱うか、全体をまとめて扱うかという話になる。しかし、システム全体で一括して資産扱いすべきだというなら、クライアント サーバ システムを構成しているケースでは、サーバ、クライアント、LAN/WAN 一式をまとめて、資産として減価償却しなければならないことになる。基地局なんてものは個別に増えたり減ったりするのだから、全体を一括して資産扱いするには無理があるし、そもそも、今の PHS 設備を 20 年も使い続けることはあり得ない。毎度恒例の「恣意的な裁量行政」といわれて当然だ。
それに、この件をマスコミにリークしていないところを見ると、国税も論法に無理があると自覚していたのではないか ? 相手が超有名企業で、しかも百億単位の巨額案件だから、自信があれば自らリークしていたはず。ストックオプションのときみたいにウソをついてまでリークしなかった事情や、審判所がどんな裁決書をでっち上げて当局の味方をしたのかが、なかなか興味深い。
ちなみに。20 年かけて減価償却するか、初年度に一括損金計上するかで初年度の所得には大差がつくが、後者では 2 年目以降は損金計上が発生しないので、逆に利益が増える。つまり、20 年間のトータルでみると税収に大差は生じないようにも思えるのだが、現場の国税職員としては目先の追徴を獲得するのが先決 (その理由はいうまでもあるまい) だから、こういう行動に出たのだろう。帝国海軍式にいうと、アフター フィールド マウンテン (後は野となれ山となれ) というわけだ。

日本電池、4 億円申告漏れ…出張費を損金算入」(讀賣新聞, 2003/9/29)
なぬ、出張費って経費で落とせないのか !? と気色ばんだが、よくよく読んでみたら、子会社への出張なのに親会社が出張の費用を支出したのは「寄付に当たる」と「認定」したのだそうだ。つまりなにか。海外子会社への出張は子会社 (つまり日本の税務当局は関係ない) に負担させて、親会社の所得を増やせというのが国税の言い分か。
しかし、日本企業が相手ならこの論法で税収は増えるが、海外企業の国内子会社 (例 : MSKK) が相手になった場合、今度は本社から出張してくる人の出張費を日本の子会社が持たなければいけなくなって、日本法人の所得が減る。当然、それも認めるんだろうな ? 親会社が費用を負担したら「子会社への寄付に当たる」んだから。(でも実際には、日本法人が親会社からの出張費用を負担したら、また「寄付に当たる」と認定するだろう。それが国税だ)
だいたい、ストックオプションのときでも「親会社と子会社は事実上ワンセットだから親会社からの権利付与でも給与として云々」みたいなことをいっていたくせに、こういう都合のいいときだけ親会社と子会社を別枠で扱うのだから、いい気なものだ。もっとも、例によって例のごとく「立法趣旨が異なるので云々」といい出すのだろうが。

「社民党関連企業、所得隠し」(朝日新聞, 2003/9/25)
果たして、これが与党の関連企業とか与党の大物政治家の関連企業だったら、リークされて新聞ネタになったかどうか。汚職でも何でも、野党の方がえてして多く捕まるもので、現に、秘書給与疑惑の件でも「辻本逮捕」に対して田中真紀子は無罪放免状態。自民の方が "悪事慣れ" していて抜け穴をくぐるのがうまいのか、それとも政治的圧力でもかかるのか。
ところで。もし国税の指摘が真実だとすれば、社民党が外注先に支払った資金の一部を還流させて裏金を作っていたことになるが、裏金を作るにしても、いささか手口がせこくないか。

都心・3K= 家賃月 9800円…これが国家公務員宿舎」(讀賣新聞, 2003/9/9)
個々の建物で課税標準額を出さずに「全国平均」にすり替えることで、「官舎の家賃は使用料の半額を超えているから非課税」ということにしてしまう。こうやって、身内が相手のときには税金をかけない名目をひねり出し、一方で、外資が相手のときは税金をもぎ取る名目をでっち上げている訳だ。いいお仕事だこと。
これだから、国税が大好きな「課税の公平負担」という言葉はエクスキューズに過ぎないと思われる。だいたい、これはレッキとした「(公務員という) 地位に起因して利益を得ているケース」ではないか。あん ?

ドコモ関西が 6 億 9 千万円申告漏れ」(讀賣新聞, 2003/9/4)
「国税局は『まだ商品価値のある機種の廃棄費用は、損金とは認められない』と指摘」したのだそうだ。携帯電話の商品サイクルが異常に短い昨今、どのシリーズが「損金とは認められない」廃棄対象になったのか知りたいものですな。正直な話、一つ前のシリーズでも、現行製品と比べるとはるかに売れない不良在庫だと思うけど。
ということは、この調査に入った国税の人は、当然、大昔の 201 シリーズか何かを今も大切に使ってるんだよね ? (ぉ

住友製薬が 10 億申告漏れ、3 億 7 千万円追徴課税」(讀賣新聞, 2003/9/3)
広告宣伝費として計上した分について、一部が「交際費として認定された」のだそうだ。この件は、架空経費を計上して接待費にしたという報道もあるのだが、どっちにしても「国税がそういっている」というレベルの話である点は、念頭に置く必要がある。
株価低迷と立て続けの敗訴で、期待していた (?) ストックオプションの解釈変更は不発に終わりそうな雰囲気だし、個人所得税をチョコチョコと追徴しても額が小さい割に手間がかかる。そこで、一攫千金の税収アップを狙って企業相手の税務調査が強化され、結果として企業の申告漏れリークが多発しているのではなかろうか。

札幌国税局、税務相談官を懲戒免職 職務上の情報で利益」(asahi.com, 2003/9/2)
滞納処分で差し押さえられた土地が近く買収されると知り、自分がその土地を買い取った後で転売して、1,180 万円儲けたのだそうだ。しかも、自分の名前を伏せて取引し、隠蔽工作を講じるというおまけつき。もっとも、札幌国税局といえば、「あの人」が局長をしていた局だから :-)

大阪ガスが 23 億円申告漏れ、7 億円余追徴」(NIKKEI NET, 2003/9/1)
「悪質な所得隠しと認定」して重加算税を賦課しているくせに、「申告漏れ」としてリークしているのが怪しい。経験則からいって、「申告漏れ」という言葉が使われるのは解釈でもめたときが大半で、「○○と認定した」とかなんとか、明快な根拠がないときに国税側の言い分を押し通したときに使われる言葉だ。確実なエビデンスがある、あるいは明確に所得隠しだと断定できる場合は「脱税」といいきるし、いきなり刑事告発する場合すらある。なんか怪しい。
それにしても最近、「申告漏れ」のリークが多い。国税も吊るし上げに必死ですな。

旧商工ファンド社長ら 130 億申告漏れ、海外投信装う」(讀賣新聞, 2003/8/25)
「所得隠し」ではなく「申告漏れ」という言葉が使われているから、解釈の相違でモメた可能性が高いと考えられる、よくあるパターン。この件が実際にどういう結論に至るかどうかはともかく、「解釈」ひとつでどうとでも課税できると国税が考えている、いいかえれば、国税が自分のことを神だと思っていることこそが、この種の騒ぎが後を絶たない根本原因であるわけだ。
それに対して納税者が取れる方法はただひとつ。「おかしい」と思ったら、断固として修正申告には応じず、法廷に持ち込んで徹底的に争い、「勝手なことばかりしていても、唯々諾々とは従わないぞ」という姿勢を通すしかない。もちろん、時間もカネもかかるが、日本が法治国家である以上、法的手続きに則って争わなければ、租税法律主義を屁とも思っていない国税と同じ次元に堕してしまう。
ところで。この一件、「世間から批判を浴びた商工ファンドの関係者なら、申告漏れで挙げても批判されないんじゃないか」と計算したのではないか ? 「MS 申告漏れリーク」だって、独禁法の件で判決が出た後だったし。

省庁の情報公開度、外務省は『失格』」(NIKKEI NET, 2003/8/22)
回答がなくて「失格」にされた外務省を別格とすると、情報公開が最も進んでいないとされたのは財務省で、200 点満点で 117 点とのこと。そりゃまあ、日ごろの国税の行いを見ていれば、この役所が「お前らは黙って我々のいうことを聞いてればいいんだ」という体質なのは明らか。情報公開度が低いのも、むべなるかな。
ちなみに、ワースト 2 位は防衛庁だそうだけれど、仕事が仕事だけに、仕方ない部分もあると思う。もっとも、防衛庁にも妙に秘密主義なところが感じられなくもないけれど、昔よりはマシになったのでは ?

倫理法違反で国家公務員処分 62 人、7 割未公表」(讀賣新聞, 2003/8/18)
国家公務員倫理法では所管する業界関係者との飲食などが禁止されているが、もっとも違反が多かったのは国税庁だそうだ。また、国家公務員法に基づく懲戒処分がもっとも多かったのも国税庁だそうだ (経産、法務、農水、国交との同率首位)。
「さもありなん」という感じの結果ではある。なにしろ、ここには OB 税理士なんていう「癒着の温床」があるのだから。もっとも、OB 税理士を雇う側にも「調査でお目こぼしを」と期待する部分があるわけで、期待する、あるいはさせられるような実情が存在する税務行政現場の裁量行政体質こそが、OB 税理士や組織的な顧問先の斡旋と並ぶ、国税の重大問題なのは確か。

財務省、税収予測の精度向上へ 『連敗』で批判浴び 」(asahi.com, 2003/8/17)
税収予測が外れた原因は、法人税収が予想を下回ったからだそうだ。最近、企業がらみの「申告漏れリーク」が相次いでいるのは、その企業をターゲットにして国税の尻を叩いているせいだろうか ?
ひょっとすると、わざと過大な予測を立てておいて、それを達成するように (勤務評定につけられる修正申告の実績を道具にして) 国税の現場を叱咤するのが財務省の手口なのではないか、と疑ってみる。

戦略的経営法務 『先手を打つ』」(NIKKEI NET BizPlus, 2003/7/30)
最近、とみにその頻度を増している「申告漏れリーク」の対策という点で、この記事は当を得たもの。さすが鳥飼先生。本当に脱税なら知ったことじゃないけれども、実際には「解釈の相違でもめた」結果として「見せしめとしてリークで悪者扱いされる」という現実がある。その場合、たいていは「申告漏れ」という、当局にとってはまことに都合のいい言葉が使われる。
こういう現状を改善しようとするならば、納税者の側も「見解の相違があったが、指導に従って云々」なんていう軟弱なコメントを出すのではなく、自らが正しいと信じることには忠実に行動するべき。SEMPER FIDELIS。

東京上野税務署、生きた税務を体験学習」(NIKKEI NET, 2003/7/28)
国税の広報だから国税に都合の悪い話は出てこないにしても、これは悪くない企画だと思う。なぜかといえば、税金の申告や納税の仕組みを、広く知ってもらえる効果が見込めるから。
現状では、サラリーマン生活をしていると確定申告とは無縁の生活をしてしまうことになるので、税金の申告の仕組み、あるいは税務行政の現場がどういう風に動いていて、どういう問題があるのかを理解してもらうのが難しい。この手のイベントは、それに対する、ひとつの回答になるかもしれない。

国税の滞納 40 億円免除 営業停止で徴収不能に」(asahi.com, 2003/7/25)
stock option のときには、株価下落で損を抱え込んだ人に借金させてまで徴税したくせに、その一方ではこういうこともするわけだ。もっとも、税金のために借金した上に、さらに弁護士費用を借金してまで提訴した勇者もいらっしゃるわけで、それに比べれば自分の場合はぬるま湯。それもこれも、自分は運がよかったから。

東京海上の 40 億円所得隠し指摘 新型地震再保険で」(asahi.com, 2003/7/23)
「『返還の可能性がある以上、保険料を経費にするのは不適切』と認定された」
出た ! 「認定された」。「認定」とか「申告漏れ」という言葉が出てくるのは、たいてい、明確な所得隠しがあったのではなくて解釈の相違でモメたケース。自信があれば「所得隠し」という言葉を使うことが多い。
「該当保険の有効期間中に地震は起きません」と国税が保障するなら経費として認定しない理由も立つが、そんなことは実現不可能で (いや、しかし国税は自分のことを神だと思ってるみたいだしな…)、実際に地震が起きて地震保険が必要になったら、当局はどう弁解するつもりなんだろう。多分、知らん顔をするに違いない。
筋論からいえば、生命保険の一時金なんかが所得として扱われている (一時所得に分類される) のと同じ理屈で、保険料が返還された際に収入に計上させる方が合理的ではなかろうか。審査請求したそうなので、こちらも訴訟になって祭り決定♪

新幹線通勤で無料乗車券…JR 西日本、5 千万追徴」(讀賣新聞, 2003/7/18)
また JR 西日本か。この間もやられてたばかりなのに…
聞くところによると、JR の経理関係にはお役人 (やはり財務省か国税庁あたりか ?) の OB が天下っているという噂もあるのだけれど、それが事実だとしたら、ちゃんと仕事をしているのだろうか ? それとも、後輩のために、わざと税務調査を呼び込んでいるんだろうか :-p

簡保加入者協会、約 18 億円の申告漏れ」(NIKKEI NET, 2003/7/17)
記事の内容を見る限り、本当に「所得隠し」があったように見える。ただし問題は、これが国税のリークだということ。以前からいっていることだけれども、本当に「悪質な所得隠し」であれば、リークなどというセコイ真似をせずに、記者会見を開いて断罪し、国税庁の Web サイトに「悪質な所得隠しの事案」コーナーでも作って掲載すればいい。
それをしないで、裏口からコソコソとリークする事例が多いのは、後で物言いがついたり、訴訟された挙句に負けたりしたときの保身を考えているのではないかと疑ってしまう。現に、「脱税」ではなくて「申告漏れ」という言葉が使われているではないか。これはたいてい、解釈でモメたときに出てくる文言だ。

オランダとの租税条約改定へ 外資系企業の税逃れ対策」(asahi.com, 2003/7/17)
これは分かる。税法や租税条約の不備が原因で租税回避措置の温床になっているのが不満なら、問題になっている法律や条約を改正するのが筋というもので、それでこそ「租税法律主義」が成立する。問題は、圧倒的に多くの部分で「事実上○○である」「○○と認定される」「○○と解される」という類の、場当たり的な "解釈" に依存した裁量行政が横行していることなのだから。

妻への報酬も「必要経費」、課税ミスと判決」(NIKKEI NET, 2003/7/16)
配偶者が弁護士・税理士といった仕事をしている場合、そこへの支払を隠れ蓑にした架空経費計上というのは考えられるが、それは個別のケースごとに判断すべきで、実際に支払った金額相当の仕事をしているのに「租税回避措置」とみなすのではたまらない。そんなことになったら、「配偶者じゃなければいいのか」ということで偽装離婚するケースすら出てくるかもしれない。
というわけで、これは妥当な判決では。

米投資会社、400 億円申告漏れ ローンスターグループ」(asahi.com, 2003/7/16)
米租税条約などによって、海外の企業は日本国内に支店や事業所などの「恒久的施設」がなければ課税されないが、ローンスターの場合は実際の作業に当たっている関係会社や債権回収会社が「事実上、恒久的施設」にあたる、と認定しての課税。
この「事実上」という言葉が曲者。頭に「事実上」という言葉をつければ、なんぼでも拡大解釈ができてしまう。本当に脱税の意図があったかどうかはともかく、「事実上」とか「○○と認定される」「○○と解される」という類の言葉が出てきたら要注意。

株式関連報酬を巡る所得課税上の諸問題」(税大論叢, 2002/7/2)
これは、税務大学校論叢 (税大論叢) の 36 号に掲載されている文書。この中で、stock option については「給与所得としての妥当性」を声高に主張しているが、Microsoft Corporation が導入を決めた restricted stock については、「給与所得課税できる」とは断言しておらず、「現行法制での給与所得課税は不可能」であり「立法措置が必要」としている。
ところが、さすがに国税当局も抜け目がなく、「税大論叢」の検索ページには、以下のような断り書きが用意されている。

税大論叢掲載論文の内容については、すべて執筆者の個人的見解であり、国税庁あるいは税務大学校の公式見解を示すものではありません。(太字筆者)

もし、課税実務に関してモメ事が発生した際に、税大論叢を持ち出して反論されるようなことがあると困るということで、予防線を張っているわけだ。しかしである。
税務大学校の関係者がまとめた論文が「個人的見解に過ぎない」といっても、その内容を敷衍して税務大学校における教育活動に利用しているのであれば、個人的見解に基づいて税務に従事する人材の育成をやっているということになり、指揮統制もヘッタクレもあったものではない。そんなことでは税務行政そのものの信頼性が問われる。逆に、税務大学校における教育に使わない研究レポートをシコシコと書き続けているのであれば、そんなものは税金の無駄遣いに過ぎない。
どっちにしても、突っ込みどころ満載の断り書きといえる。

stock option の件で狙い撃ちにされた Microsoft Corporation が restricted stock を導入したことで、国税当局が restricted stock に対して給与所得課税を行うといい出すのは、もはや時間の問題と考えられる。この件、注意してウォッチする必要がありそうだ。

Contents
HOME
Works
Diary
PC Diary
Defence News
Opinion
Special
Hobby
Ski
About
Old contents

| 記事一覧に戻る |