井上孝司の国税ウォッチ 2005
 

航空機リース追徴課税訴訟、国が上告断念・50 億円返還へ」(NIKKEI NET, 2005/11/11)
何が驚いたって、国側が上告を断念したこと。よほど「勝算がない」という自覚がなければ、こんなことにはならない。これぐらいデカい金額の事案なら、なんとしても勝訴を勝ち取ろうとするのが当然の行動で、それすらできないような処分をやらかした名古屋国税局の大チョンボといえる。国税から裁判所に出向している調査官は、戻ってきたら左遷かな ?

デンソーが 25 億円申告漏れ・国税局指摘 9 億円追徴」(NIKKEI NET, 2005/10/17)
この手のニュースで、いつも不思議に思うこと。子会社への支払を水増ししたという話が本当なら、なるほど親会社の所得は減るだろう。でも、その分だけ子会社の所得は増えているはず。そっちについてはどう処理してるんだろうね。
子会社への "支払水増し" を否認すれば、その分だけ子会社の所得が減るのが筋。となると、そっちが「否認前の所得で納税したまま」というのは変じゃないの ? それとも、否認したからといって子会社に支払った分は元に戻さない ? だとすると、税金の二重取りになってないか ? 子会社が更正を要求しなければ取ったもん勝ちなのか ?

東京国税局のパソコン盗難・納税者情報 47 万人分残る ?」(NIKKEI NET, 2005/9/16)
平素から「高額納税者番付」だの「申告漏れリーク」だのとプライバシーの垂れ流しをやってる役所だから、個人情報の取り扱いについても注意が足りなかったのではないか、と思ってしまった。そもそも、国有財産をそんな簡単に盗ませるなといっておきたい。

「国税庁、ネット番組で税金を解説」(NIKKEI NET BizPlus, 2005/8/17)
広報熱心なのはいいけれど、問題は、番組で解説した通りに現場が運用されているかどうかなんだがな。

上沼恵美子さん 1500 万円の申告漏れ」(讀賣新聞, 2005/8/4)
やってるやってる、有名人を見せしめにするという得意の手段… 経費の解釈なんて、最高にもめそうなネタではある。

国税局職員がベンチでごろ寝、227 社の内部資料紛失」(讀賣新聞, 2005/7/27)
いくら、この役所が無責任官庁だからといっても、これはひどい。
(菅直人風に) いま必要なのは職員全員の交代ではないか。

電子納税の利用低調・煩雑な手続きなど壁に」(日本経済新聞, 2005/7/17)
ETC みたいに経済的なベネフィットを用意しないと、利用が広がらないのでは。
…というのは、いくらなんでも公平な課税を妨げるから冗談だとしても。電子申告や電子納税を使うことで明白なメリットがあり、かつ、それを納税者に訴求できなければ、利用が広がらないのは当然のこと。何でもかんでも調子に乗って、後先のことを考えずに「電子政府」という掛け声に便乗するから、こういう無様なことになる。それとも、電子政府という掛け声に乗って、予算を獲りたかっただけとか。

節税できると 7 千万円詐取、元参院議員後援会長ら逮捕」(讀賣新聞, 2005/7/14)
根本的には、「議員の後援会長をしている。国税庁に知り合いがいるので、相続税が減税できる」なんていう言い草を信じる方が悪い。ただ、こういう詐欺を持ちかける人、それを信じて乗っかる人がいるということは、政治家による圧力が税務行政の現場に影響を及ぼしていることの傍証だ、と解される可能性もあるのではないかと。

『点検商法』モイスコジャパン、1 億 6 千万の申告漏れ」(讀賣新聞, 2005/7/14)
法則を順調に発動してますな。あくどい商売をやるような輩なら、脱税に手を染めていてもおかしくないという見方もできるけれど、それをリークするかどうかは国税関係者の恣意によるわけで。

固定資産評価額取消、実勢価格上回る部分のみ・最高裁初判断」(日本経済新聞, 2005/7/11)
国税ではなくて地方税の話題だけれど、これは妥当なところでは。全額を取り消した場合、改めて評価をやり直して税額を確定するのに時間がかかり、その間に地価が激しく変動すれば、またややこしいことになってしまう。課税の時点で現状との乖離を是正するということなら、差額だけ修正すればいいわけで。

妻への報酬『経費でない』最高裁、弁護士敗訴確定」(産経新聞, 2005/7/5)
直接、妻に報酬を支払うからもめるので、トンネルを入れたらどうなるんだろ。たとえば、無関係の税理士事務所に業務を依頼して報酬を支払い、その税理士事務所が "生計を一にする妻" に仕事をアウトソースするとか。しかし、国税庁は直接原因より間接原因の方が好きだからな。トンネルを何段階かましても、延々と追いかける可能性も考えられるが。
つーか、世帯を単位にして考えれば、亭主の所得が減った分だけ妻の報酬が増えてるんだから、amount は同じだろうに。前にも同じことを書いた気がするけれど。(もっとも、妻の稼ぎが極端に少なければ、税率が下がる可能性はあるけれど)

日興子会社の追徴課税 99 億円取り消し…不服審判所」(讀賣新聞, 2005/7/1)
あれ、今日ってエイプリルフールだっけ ?
というのは冗談として。"あの" 審判所で負けるぐらいだから、増差欲しさに、よほど無理がある処分をやったんだろうなあ。審査請求の段階で処分が取り消されるって、よほどのことがないとあり得ないと思うが。しかも、この金額で。
なにしろ、審査請求で処分が取り消される確率ときたら、いろいろいわれている楽天イーグルスの勝率どころの騒ぎじゃないぐらい低いのだ (イーグルスファンの皆さん、すまぬ)。データは、審判所の Web を見ると載っている。

TDK 申告漏れ 213 億円・東京国税局」(日本経済新聞, 2005/6/30)
とかいってたら、今度は TDK。ここのところの案件は、軒並み、移転価格税制がらみだ。今回に限らず、国税が何かやるときっていうのは、たいてい「テーマ」が決まっていて、特定のネタで集中的に叩くことが多い。そして、その「テーマ」に関する国税の意思を押し通すための世論操作として、大企業などの名前を出してマスコミにリークするというわけ。陰険だね。
でもでもでも。その意思とやらが、数年後にコロッとひっくり返されないという保証はない。あの役所の辞書に consistency という言葉はないから。今、たとえば移転価格税制に絡んで「これなら OK」といっていたものが、数年後に税務調査のネタにされて、延滞税と過少申告加算税と本税の 3 連コンボでやってくる可能性がないとは、誰も保障できない。この国は、そういう国だから。
そして、TDK も闘うつもりらしい。行け行けドンドン。

ソニー、214 億申告漏れ 国税指摘に異議申し立てへ」(産経新聞, 2005/6/29)
昨日の 165 億円には至らないものの、今度は 45 億円だそうだ。こちらも異議申立するとの由。ホンダ・ドコモ・船井に続いて、徹底的にやってやれ〜 ドンドンドン♪ パフパフパフ♪
結果がどうなるかはさておき、納得いかないのに修正申告に応じることはないわけで、おかしいと思ったことはおかしいと主張する。これこそ、税務行政の健全化に向けた第一歩。黙ってたら、当局は調子に乗ってエスカレートするだけだ。

船井電機、393 億円の申告漏れで 165 億円追徴・大阪国税局」(日本経済新聞, 2005/6/28)
なんか、どでかい案件が来た。この増差を取った担当者は、上司の覚えめでたく栄転ってことになるんだろう。
ひとことでいえば「解釈の相違」って奴。つまり、当局が「○○と認定した」とひとこといえば追徴されるパターン。異議申立するそうだけれど、その次の審査請求も含めて 100% の確率で却下されるだろうし、最高裁まで行くだろうなあ、これは。なんだったら、最高裁まで行くかどうか賭けようか ?

伊藤ハム、2 億数千万申告漏れ」(讀賣新聞, 2005/6/28)
リークされた内容を見る限り、言い訳のしようがない話に見える。とすると謎なのは、修正申告しないで更正処分になっているところ。公判を維持できるぐらいブラックな話なら、とっとと告発していてもおかしくない。少なくとも、修正申告に応じても不自然さはないところ。それをわざわざ更正させているところを見ると、何か、公表されていない裏の話があるんじゃないの ? という気もする。勘繰りすぎかいな。

政府税調の石会長『給与所得控除は過大』と改めて強調」(讀賣新聞, 2005/6/26)
ていうか、給与所得者も全員、確定申告させればいい。その方が税の仕組みに対する理解が深まるし、当局も「知らなかったというのは理由にならない」といいやすくなる (失笑)。第一、確定申告する人が増えた方が、調査部門の「めしのたね」が増えて嬉しいんじゃないの ? 給与所得の源泉徴収じゃ、増差の取りようがないんだから。けっけっけっ。

『満員電車内で手が当たり…』国税調査官を痴漢で逮捕」(讀賣新聞, 2005/6/13)
「満員電車内で手が当たり、欲情してしまった」という台詞がイケている。いろいろ、応用できるんじゃないかな。「たまたまこの人の申告書に手が当たり、増差が欲しくなったので修正申告を迫ってしまった」とか。

点検商法で 18 億申告漏れ 名古屋国税、1 人を告発」(産経新聞, 2005/6/12)
相変わらず、"法則" を全開で発動中 ! 絶対に、リークするときに相手を選んでいると思われ。

9 億 5000 万円申告漏れ JR 西、大阪国税局が指摘」(産経新聞, 2005/6/1)
またぞろ、「世間に叩かれている会社は、申告漏れリークのターゲットになる」という法則が発動された模様。実に分かりやすい。

『NTT ドコモ』課税取り消し判決、国税当局が控訴」(讀賣新聞, 2005/5/27)
キタキタキター ! 高裁の秋山裁判長、もしこの件が係属すれば、また国税を勝たせるチャンスですぞ (ぉ

「個人所得課税の 10 区分、抜本見直しへ 政府税調」(朝日新聞, 2005/5/17)
基本的には「増税のための見直し」であるらしいのだが、所得の態様が多様化している現状下で、強引に何らかの所得区分に当てはめなければならないということになると、またストックオプションみたいな騒ぎを繰り返すのではないか。そう考えると、完全に廃止するのは無理としても、極力、単純化の方向に持っていくのも一案。ついでだから、納税者意識の高揚と税に対する理解の促進を図るため、給与所得者にも確定申告を義務付けるよろし。
この記事では、ギャンブルで当てると「一時所得」になるのを「雑所得」にする見直し案があると書かれているけれど、実は、ストックオプション税務訴訟の一件で「一時所得」が当局にとっての鬼門、いや、嫌われ者となりつつあるとか :-p

短期雇用者への退職金課税を強化・政府税調会長」(日本経済新聞, 2005/5/13)
退職所得の本来の趣旨からいえば、勤務年数が増すのに合わせて控除の比率を急速に引き上げるのが筋だろう、とは思う。いいかえれば、短期の勤務では、それほど優遇する必要はないだろう、ということ。
ただ、相手が会社員に限定されていることを考えると、「取りやすいところから取る」という色彩は否めませんな。それに、これをやったところで、どれだけの税収増になるのやら…

ドコモの課税 100 億取り消し 回線利用権取得めぐり地裁」(産経新聞, 2005/5/13)
菅野博之裁判長 ? 自分のときには国税を勝たせた裁判長じゃないか。おい。
しかし、108 億円の大規模案件になると、国税も引っ込んでいられないだろうし、当然ながら最高裁まで行くんだろう。
高裁で秋山裁判長の担当になり、口先では「話を聞きます」といっておいて、実際にはまともに審理しないでドコモを負かしたら笑っちゃうんだけど。

企業防衛の『新株予約権』発行時は非課税・国税庁」(NIKKEI NET, 2005/4/22)
何かと「対応がとろい」といわれることの多い財務省や国税庁だけれど、今回は対応が早かった。常にこうならいいのだけれど、単に「話題になっている案件」だから動きが早いだけだったのかも知れない。さて、どちらが真相か。

自治体職員厚遇、大阪国税局が京都市の税務調査に着手」(讀賣新聞, 2005/4/11)
この件で問題になっているのは、厚遇によって課税されない金品の支給が行われていることもさることながら、それが給与所得だとすれば源泉徴収をサボっていること、でもあるらしい。
そこで問題が出てくる。所得税法の規定からしても、給与所得と源泉徴収は不可分のワンセットと解される (笑) のだが、給与所得だと主張しているのに源泉徴収については口をつぐんでいる案件があるわけで、これについてはどう説明するんでしょうね > そのへん

「架空の税金督促状 新手の振り込め詐欺か」(asahi.com, 2005/1/25)
国税不服審判所の名を騙る痴れ者が、税金を架空請求する「支払督促状」を送りつけるという、新手の振り込み詐欺を始めたそうだ。笑っちゃうのは、督促に対する異議申し立てなどの窓口として、国税不服審判所を記しているところ。日頃、確定申告をしてない人が多いと、こういうのに簡単に引っかかる。サラリーマンも含めて全員に確定申告させれば解決する問題だけれど、その可能性は低いから、「税務訴訟」を読んで、国税不服審判所の何たるかについて勉強しよう (笑)
日頃の行いが悪いから、悪い奴らに利用されるのだよ > 審判所

「大阪市を税務調査・職員の年金掛け金負担」(NIKKEI NET, 2005/1/24)
大阪市が、職員の年金保険の掛け金などを負担している件で、国税が調査に入ったそうだ。そんなもん、"職員としての立場" に基づいて給付を受けているんだから、例の理屈でいえば給与所得にしないと筋が通らない。もしも無罪放免したら、国税庁の舌は 256 枚どころか 65,536 枚あると認定する (w

追記 (2005/4/14)
結局この件、スーツ支給の一件も含めて「給与」と認定され、追徴を喰らう羽目になった。当然だ。「職員としての地位に立脚して」得た経済的利益なのだから、これで追徴しなかったらぶんなぐる (って、誰を ?)

国税庁の "福利厚生"

上の URL は、国税庁の Web サイトに掲載されている「福利厚生」の話。ポイントは、

4 その他
勤務内容によって異なりますが 10 年間から 15 年間勤務すると、税理士試験科目のうち、税法に属する科目が免除されます。また、一定の条件を満たし 23 年間勤務した者は、会計学に属する科目も免除になり、税理士となる資格を取得することができます。
というくだり。といっても、「おいおい、"税理士試験免除" が福利厚生の一環なのかよ !」という話じゃなくて。

これには、大事な話がひとつ抜けていやしませんか。そう。「署長・局長などの一部指定官職については、退官後に税理士を開業する際に、顧問先を組織的に斡旋します」という記述が。強力な釣り文句になるだろうに、なぜ、こんな美味しい話を書かないの ?

組織的斡旋になんら後ろめたいものがないのであれば、福利厚生策の一環として、堂々と書けばいい。それを書かないのは、何か不都合があるのか、国会で突っ込まれるのが嫌なのか、はたまた組織的斡旋に後ろ暗いものを感じているのか。さあ、どおれ ?

追記
そもそもこれは、"国税庁職員としての地位" に立脚して試験を免除されることで、結果として税理士試験の受験そのもの、あるいは受験のために必要な勉強にかかる負担を免れているということになる。だから、税理士の資格を免除によって手にした時点で、税理士資格の取得に必要な費用に相当する分を給与所得として課税すべきだと思うよ。なにしろ、"地位に立脚して労働の対価としての経済的利益を享受している" んだから。それって給与所得なんでしょ ? え ?

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