税務訴訟 [Round.7 : ある読者投稿 2]
 

先日、ある読者の方から投稿をいただいた。ストックオプションとは関係ないが、税務署の体質が如実に出ている一例ということで、話の概要を紹介しよう。
なお、問題になった税務署は、大○の某税務署だそうである。(投稿者の立場に配慮し、税務署名は伏せさせていただいた点を御了承願いたい)

この読者の方の場合、問題になったのは土地の収用で得られた補償金に対する控除規定と、住宅ローン減税の絡みだ。
なんでも、収用された土地の補償金に対する控除と、その土地の代替に購入した自宅の住宅ローン減税を、税務署員の指導に従い、両方とも適用して確定申告したとのことだ。

ところが、後から税務署から通知があり、この両者の控除は同時に使用できないので、追加納税を行うように、と知らされたのだそうだ。それだけなら、税務署員が誤指導したというだけの話である。この両者を併用できるかどうかを規定した条文、ないしは通達があるかどうかという問題だから、納得の行く根拠があれば、納税者としては差額を納めざるを得ない。

問題は、追加納税しただけでなく、延滞税と加算税まで課せられたという点にある。
ストックオプションの件では、課税庁側は (一時所得で申告するように、という) "誤指導" があったという見解のもと、今年に入ってから、過去に執行した延滞税と過少申告加算税の処分を、一部の納税者に対して取り消している。ところが、投稿があった案件では、課税庁側のミステークであるにもかかわらず、延滞税と過少申告加算税を課したというのである。

いうまでもなく、民間で商売している企業や個人が、自分のミステークで顧客から余分な代金を頂戴する羽目になったときに、相手にペナルティを要求するなんてことはあり得ない。むしろ、本来頂戴するはずの金額をまけておく、ということも少なくないだろう。
ところが、これが国税庁になると、自分のミステークのツケを納税者側に回し、延滞税と加算税をふんだくることができるというのだ。まったくもってとんでもない話である。

延滞税というのは、本来納めるべき税金を払わなかったときのペナルティと考えられる。また、過少申告加算税というのは、意図的に所得を少なく申告した場合のペナルティと考えられる。
ところが、今回の案件では、税額を (結果として) 少なくなるように指導したのは税務署員である。ところが、その尻拭いをさせられたのは、税務署員ではなくて納税者だというではないか。言語道断である。

この一件は、いかに国税庁が驕りきった体質の持ち主かということを証明している、といえないだろうか。ストックオプションの一件もそうだが、国税庁というのはまさに「天上天下唯我独尊」で、自分のいうことなすことすべて正しく、納税者はそれがどんな内容であれ、黙って従うべきだと思っているらしい。

こういう体質があればこそ、国税庁は過去の指導内容を簡単に反故にしてしまい、それだけでなく、いったんは「過去に一時所得として指導していいたことはない」として、マスコミ相手に世論操作用の大本営発表をやらかしてしまうのだろう。そして、後で真相が明らかになると、コソコソとペナルティの取り消しをやったりしているわけだ。

たまたまストックオプションの一件で "国税庁体質" の一端に触れることになったが、どうも、もっと深層の部分に "病理" といえるものがあるように思えてならない。国税庁にも断固たる構造改革が必要ではないだろうか。


追記 (2001/10/17)

上記の記事をライブした後で、別の読者の方から御指摘をいただいた。それによると、一昨年の総務庁 (当時) 勧告により、今年になって下記の法令解釈通達が出されたとのことだ。

人為による異常な災害又は事故による延滞税の免除について

これは、税務署員が誤指導したことによって税額が少なくなるような申告がなされた場合、それに対して延滞税を免除する、という内容である。当然といえば当然のことで、今まで明文化されなかったのが不思議だ。
しかし、まがりなりにも明文化した点については良いと思う。少なくとも、誤指導でもペナルティを課してよい、という体質に多少の変化が見られたということだから、その点については私の元記事に事実誤認があったわけだ。

ただ、通達の本文に「(納税者が信頼したものに限る。)」という但し書き (はっきりいえば逃げ口上) がある点や、誤指導があったこと、かつその誤指導の内容を納税者が信頼していたことを立証しなければ通達内容が適用されないのではないか、という点を考え合わせると、実質的には有名無実ではないかという気もする。

たいていの人は、税務署に相談、あるいは申告に赴く際に、そのときのやり取りをいちいち録音したりしていないだろうから、当局が「かような誤指導を行った事実はない」といってしまえば、もはやそれまでではないか。現に、ストックオプションの件でも税務署はそれをやっている。
さて、この通達に関する実際の運用はどうなっているのだろう。

ストックオプションの件にしても、何も訴訟の原告に限らず、過去に更正、あるいは修正申告を行った多くの人が、課税庁がいうところの "誤指導" の対象になったハズだ。もし、誤指導だったとして処分を取り消しているにしても、かかる申告を行った関係者全員が対象になっているかどうかを確認する必要があろう。
また、この通達で対象になっているのは延滞税だけで、過少申告加算税については言及されていない。これについても、追加調査の必要がありそうだ。


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